【ホテル・旅館のDX事例】宿泊業界にDXが望まれる理由と推進事例

【ホテル・旅館のDX事例】宿泊業界にDXが望まれる理由と推進事例

新型コロナウイルス感染拡大を受けて、多くの人々は働き方の変化を余儀なくされました。

これは、インバウンド需要激減などで経営状態に大打撃を受けたホテル・旅館業界も同様です。

以前、本DXportal®でも、リゾート業界のDX推進について解説しましたが、今回は更に深堀りし、ホテル・旅館業界を変えるDX推進に特化して解説します。

大手チェーンのホテルだけでなく、街中のビジネスホテルなど中小のホテル・旅館等でも参考になる宿泊業界のDX推進を取り上げておりますので、ぜひとも積極的に学んでみてください。

ホテル・旅館業界にDXが求められる理由

ホテル・旅館業界にDXが求められる理由

一向に終息が見えない新型コロナウイルスの感染症。

人々の移動が極端に制限・自粛される世の中となり、国内の旅行客・ビジネス利用客の減少に加えて、近年、地方の格安ホテルを支えていた外国人旅行客によるインバウンド需要の激減などもあり、宿泊業界全体が大きな経営打撃を受けています。

利用客の減少に伴って、スタッフを休業させたり、出勤日数や時間を減らしたりする必要に迫られた結果、安定収入を求めて多くの従業員が他業種へ転職しました。

コロナ収束後を見据えれば人手の確保は重要ですが、先の見えないコロナ禍において、従業員をむやみに増やすわけにもいきません。

そのため、ホテル・旅館業においてはコロナ以前よりも少ない従業員で経営を続けざるを得ず、その結果として従業員の過重労働などの問題が起きています。

人手不足は、コロナ以前より日本の多くの業種が直面している問題で、少子高齢化によって労働人口が減少し続ける中で人材を確保するためには、労働環境の改善は不可欠です。

しかし、宿泊業はその性質上、夜勤労働や長時間労働など過酷な勤務体系が常態化しており、その影響もあって全産業でもトップクラスの離職率となっています。

つまり、仮に新型コロナが収束して、ホテル・旅館の需要が増えたとしても、宿泊業界が抱える人手不足の構造的な問題は解決しません。

このままでは人手不足によって、多くのホテル・旅館業者がビジネスを継続できなくなる危機に陥る懸念があります。

この危機を乗り越えるためには、人手不足を補いながらこれまで以上に効率の良い運営を行っていくことが必要になるでしょう。

また、デジタル技術を駆使して業務を効率化するだけでなく、同時に顧客体験を向上させることも重要です。

ホテル・旅館業が抱える根本的な問題の解決と顧客体験の向上。

DXは、この二つを同時に実現出来る唯一の手段といっても過言ではありません。だからこそ、今まさにホテル・旅館業でDXが求められているのです。

ホテル・旅館を変えるDX推進の一例

ホテル・旅館を変えるDX推進の一例

コロナ禍や少子高齢化、利用客の減少や労働者の過重労働問題などを受け、業務の変革が急務であるホテル・旅館業界。

業界に変化をもたらす可能性のあるDX推進策の一例を、次のとおり解説します。

IoTテクノロジーによる先取り顧客サービス

人手不足を補いながらも、利用客へのホスピタリティを発揮したサービスの提供を実現するためには、IoTテクノロジーの導入は欠かせない要素です。

例えば、利用客が駐車場に停めた車のナンバーを認識し、過去の宿泊履歴と照合することで、利用客に合わせたサービスを提供する方法があります。

駐車場に停めた車のナンバーからリピーター客か否かを瞬時に判別し、顧客情報にアクセス出来ることで、リピーター客である場合には直接対面したことが無いスタッフが応対する場合でも、来館時から顧客を名前で呼ぶことが可能です。

顧客を名前で呼ぶことのメリットは接客業界では広く認識されていますが、日々多くの宿泊客と接するホテル・旅館の従業員にとって、顧客の顔と名前を記憶するのは並大抵のことではありません。

しかし、この技術を導入するだけでその悩みは一気に解消され、顧客に対して最高のおもてなしをすることが出来るようになるのです。

また、施設入口に人感センサーを設置して利用客を迎える前に顧客情報を確認することが出来れば、ナンバープレートで車を認識するよりもさらに進んだサービスを提供出来るようになります。

また、来館した利用客の顧客情報を自動で共有する仕組みにしておけば、フロントがその都度連絡しなくとも、全館で利用客に合わせた対応も可能です。

一例を挙げれば、以前の宿泊情報や予約システムと連動した顧客情報が共有出来れば、利用客の食の好みなどを把握したスムーズな対応を実現出来ます。

必要な顧客情報が自動で全従業員に適切に共有されていることは現場の負担を減らすだけでなく、利用客に満足度の高いサービスを提供することも出来るでしょう。

人感センサーはこれ以外でも様々な場面で活躍する技術です。

例えば、大浴場の入口などに設置して使用人数が一定人数に達するとスタッフに通知されるシステムを導入すれば、清掃のタイミングを自動的に図れるなど、顧客が常に快適に利用出来る体制を整えるだけでなく、スタッフの労働効率を上げる効果も生み出します。

『これでもか』のユーザー目線導入

『これでもか』のユーザー目線導入

ホテル・旅館業界のDX推進策においては、ユーザー目線を意識したサービスの向上も欠かせないポイントです。

例えば、実在する画像や映像とバーチャルな視覚情報を組み合わせたAR(拡張現実:Augmented Riality/以下:AR)技術の活用が挙げられます。

AR技術を取り入れたスマートフォンアプリを利用すれば、現在地の画像情報をもとにホテルまでの順路を表示させることも可能です。

そのアプリの利用を予約確認メールで促せば、利用客がホテルまで迷うことなく到着出来るようにサポートすることが出来ます。

更には、アプリ上に館内の立体的な3D地図を表示出来るようにすれば、平面図が苦手な顧客でも、現在地の把握が容易となります。

また、前章で紹介した大浴場の入口に人感センサーで混雑状況を把握する仕組みを使えば、施設の混雑状況を感知し各部屋へ通知。

利用客は部屋にいながらにしてその状況を把握出来、混雑を避けた利用を促す事も出来ます。

その他、多言語対応のチャットボットを導入すれば、利用客の質問に24時間体制で瞬時に回答出来るなど、スタッフの直接対応の手間を削減しながら、利用客の利便性向上が実現出来るのです。

こうした、AI技術で労働効率性を確保しながらも、『いかにお客様が便利になるか』というユーザー目線で改善策を考えることが、DX推進には求められます。

デジタル化で人件費問題を解消

デジタル化で人件費問題を解消

ホテルスタッフというと華々しいイメージがありますが、その仕事は身体的なきつさを伴うモノも少なくありません。

コロナ禍による人材流出など深刻な人材不足に悩まされるホテル・旅館業では、こうした身体的きつさを伴う作業をデジタルの力でいかに効率化するかも、大きな課題です。

例えば、ホテルや旅館では欠かせない清掃業務にロボットを導入し、清掃スタッフとロボットを併用すれば大幅な労力削減に繋がるだけでなく、深刻な人手不足解消の対策としても期待出来ます。

また、人手不足を乗り越えるためには、予約とフロント業務を一元管理する方法も効果的です。

例えば、自社サイトで直接宿泊予約を受け、その情報を過去の宿泊履歴などを記録する「顧客情報」と、客室全体の利用状況を管理する「施設管理情報」へと連携させれば、いちいち人手による入力という手間を省くことが出来ます。

それだけでなく、予約受付のダブルブッキングや手入力による入力ミスといったトラブル回避も可能です。

更にこうしたシステムを「スマートチェックイン」機能と連動させれば、より積極的な労働コストの削減策を取ることが出来ます。

フロントに設置された端末で利用客自身がチェックインを行なう「スマートチェックイン」は、スマートフォンなどを利用して簡単に自動チェックイン。そのままスマートフォンを客室の鍵として利用出来ます。

こうしたシステムを導入すれば、フロントにチェックイン対応要員を配置する必要が無くなるだけでなく、多言語対応が可能なためインバウンド集客にも効果的です。

その上、非対面・非接触でチェックインが可能となるため、感染症対策として人との接触を避けたい利用客に対する新たな価値提供にも繋がります。

このように、一部業務をデジタル化する施策により、スタッフの人件費を抑えながら人材不足を補うことが可能となるのです。

より積極的なホテルマーケティング

ホテルや旅館業が継続していくためには、リピーター客を増やすことも大切なポイントです。

そのためには、お客様ファーストを意識しつつ、より積極的な利用客ごとにパーソナライゼーションされたサービス提供が求められます。

利用客の宿泊履歴や嗜好等の情報が蓄積されている顧客情報を活用し、利用後も誕生月に合わせた特典情報をメール配信するなど、ホスピタリティを意識した取り組みが、利用客にとってホテル・旅館への愛着に繋がるのです。

そのため、ホテルや旅館などの宿泊施設においては、単に利用客をもてなすだけでなく、新規利用客やリピーター客を増やしていくための、より積極的なマーケティングを意識したDX推進策が必要となります。

>>次ページ/国内外の宿泊業界DX事例

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DXportal®編集部

DXportal®の企画・運営を担当。デジタルトランスフォーメーション(DX)について企業経営者・DX推進担当の方々が読みたくなるような記事を日々更新中です。掲載希望の方は遠慮なくお問い合わせください。掲載希望・その他お問い合わせも随時受付中。

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