【アパレルDX最前線/後編】サステナブルな4つの課題と加速するDX推進施策

【アパレルDX最前線/後編】サステナブルな4つの課題と加速するDX推進施策

新型コロナウイルス感染症による影響と、物量コストの増加などを受け、現在のアパレル産業は非常に厳しい状況におかれています。

それに加えて、業界が抱えるサステナブルに関する課題があり、時が経つごとに自体は深刻となっています。

「アパレルDX最前線/前編」としてお送りした前回の記事では、アパレル産業が抱えるサステナブルな4つの課題について解説しました。

続く本記事では、それらの課題を解決する可能性のある、現在のアパレル産業が取り組むDX推進施策についてご紹介していきます。

>>前編を合わせて読む

加速するアパレル産業のDX

前回の記事で解説したようなサステナブルに関する課題が挙げられる状況の中、アパレル産業でも課題解決に向けたDX推進が加速しています。

今回は、その中でも現在もっとも注目されている以下3つの施策をご紹介します。

  1. マスカスタマイゼーション化
  2. AIチャットボット
  3. 3DCG技術を活かした、サプライチェーンのデジタル化

「脱」大量生産、マスカスタマイゼーション化

「脱」大量生産、マスカスタマイゼーション化

マスカスタマイゼーションとは、「マスプロダクション(大量生産)」と「カスタマイゼーション(受注生産)」を掛け合わせた言葉です。

従来型のアパレル業界で採用されていた同じ商品を一度に大量に生産するマスプロダクションは、1枚当たりの生産コストを抑えられる一方で、大量の在庫を抱えるなど、常にリスクがありました。

一方、職人がオーダーを受けてから生産するカスタマイゼーションは、ロスを最小限に抑えられる反面、1枚当たりにかける時間や手間、生産コストの面などデメリットも多い手法です。

この両者のデメリットを補う仕組みとして生み出されたマスカスタマイゼーションは、顧客の趣向に合わせたオーダーメイドの商品(カスタマイゼーション)を、ITやIoTといったデジタル技術を導入し、大量生産(マスプロダクション)可能にした仕組みです。

消費者は自分の好みや体形に合わせて、パーツごとにサイズや生地を選んで自由にカスタムすることができ、一方で生産者は、パーツごとに顧客の趣向を分析して、組み合わせ可能な「パターン」を生産します。

カスタマイズされる衣服を予測して各パーツを大量生産することで、顧客が組み合わせやサイズを選択できるカスタマイゼーションと、短期間・低価格な生産を実現するマスプロダクションのそれぞれの良さを両立することが可能になります。

マスカスタマイゼーションを成功させるための鍵は、顧客データの活用、つまりビッグデータアナリティクスです。

これまでのアパレル産業でも、当然データの利活用はされていましたが、売れ筋のトレンドの分析など一部に留まっていました。

マスカスタマイゼーションが分析対象とするデータは、季節やトレンドだけでなく、衣類のパーツ単位にまで亘っており、徹底的に顧客の嗜好を分析します。

このデータをもとに、パーツごとに生地やサイズ、デザインなどが異なる「パターン」を作成します。

どのようなパターンをどのくらい作るかは、ビックデータアナリティクスで解析した顧客の嗜好に基づいて決定するため、無駄な原材料の消費、物流、在庫、廃棄などを削減できるサステナブルな手法です。

さらに、自分で組み合わせを選んでカスタムできるため、顧客の満足度は高まり、長期的に使用してもらえることが期待できます。

衣類の消費サイクルという観点から見ても、顧客それぞれの好みに合わせた商品を販売するマスカスタマイゼーションはサステナビリティの高い生産方法だといえます。

衣服のマスカスタマイゼーションを進めている代表的な企業として、株式会社フクルが挙げられます。

株式会社フクルの「フクルマスカスタマイゼーション」

同社は、「『脱』大量生産」をビジョンに掲げており、マスカスタマイゼーションを通じたアパレル産業のDXを推進している企業で、ITとIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を活用した生産を行っています。

「女性のためのフクルオーダー」を展開する同社では、顧客のニーズに合わせて「カスタムオーダー」「パターンオーダー」「フルオーダー」の3パターンを展開。中でも、ネット完全対応で展開している「カスタムオーダー」は、低価格であるにもかかわらず細かな調整が可能なマスカスタマイゼーションの仕組みを取り入れた生産体制です。

例えば、オーダースーツの場合、ボタンの数や襟のデザインやサイズ、基本的な仕様・セットアップアイテムを選んだら、生地(色・柄)や、胸ポケット、袖口、裏地の仕立てなどを自由にカスタム可能となっています(一部有料)。

更にフクルのオーダースーツでは、着丈、肩幅、バストなど10か所のサイズを自分の体形に合わせて細かく変更・調整ができるなど、フクルのオーダースーツであれば自分の体形に合わせた一点物のスーツを低価格で作ることができるのです。

また、別のデザインやファブリックを自分で選んだ上で、より自分の体にフィットしたサイズのスーツを仕立てることが出来るサービスも展開しています。

しかも、すべてがオンラインで完結する仕組みを構築しているため、わざわざ実店舗に出向いて採寸する手間は不要。手持ちの気に入っているジャケットからデータを作成したり、採寸用のサンプルを取り寄せて試着してデータ化するなどの選択肢から自分にあった方法が選べます。

こうした細やかなカスタムオーダーに対応するための仕組みが同社の「フクルマスカスタマイズ生産」で、マスプロダクション方式とは一線を画した受注体制を確立しているのです。

生産方法にしても、従来型のマスプロダクション方式の場合は、生地や糸、ボタンなどすべての素材を1か所に集め、一気に流れ作業で大量生産していました。

しかし、フクルマスカスタマイズ生産の場合は、全国各地の工場や職人と連携し、デザインや生地などの特性ごとに適した工場で生産しています。

また、裁断ロボットやニット3Dプリンターなどの技術も活用して効率化を図りつつ、最終的には人による縫製や仕上げを行うことで、高品質な商品が生産可能になりました。

加えて、複数の生産工場をITネットワーク化してつないでいるだけでなく、それぞれの工場のデータや顧客データを集積し、ビックデータアナリティクスに基づいて、さらに顧客の満足度を高める製品の開発にも取り組んでいます。

全てのサプライチェーンをIT化し取得したデータを販売予測に活かした服の生産を進めることで、必要最低限のパーツ生産で最大限の顧客ニーズに応えるという独自の生産体制を確立。可能な限りの在庫レスや海外との差別化、生産性の向上も実現しているのです。

DX生産体制がサステナブルなアパレル産業のカギ

フクルの例からも分かるように、現在のアパレル産業では多様化する顧客ニーズに応える細分化されたデータ取得と、ITやIoTを活用した生産体制の見直しが求められています。

必要なパーツを必要なだけ生産する「マス✕カスタマイズ=マスカスタマイゼーション」は、大量生産・大量消費が当たり前とされていたアパレル業界の生産体制を一変させ、サステナブルなアパレル産業を実現するDX推進施策として、大きな期待が持たれているのです。

店舗業務をサポートするAIチャットボット

店舗業務をサポートするAIチャットボット

アパレル販売員の負担軽減だけでなく、新たな顧客体験の創出や非対面方式での販売方法の拡充など、多様化する顧客行動に対応する新たなビジネスモデルを確立するためにも期待されている技術が「AIチャットボット」です。

AIチャットボットとは、顧客からの問い合わせなどをロボットに任せて業務を効率化するシステムです。

顧客は探している商品や、疑問などをテキストベースでAIチャットボットのシステムに入力することで、AIが顧客にとって最適な回答を導き出してくれます。

AIチャットボットを活用すれば、オンライン上で1人ひとりの顧客ニーズを半自動的に把握でき、これまでは実店舗でしかできなかった、「顧客側が『買いたい』と思うまでの体験」をECサイトで提供できるでしょう。

また実店舗に来店した顧客がスマートフォンでAIチャットボットを起動すれば、販売員に聞かなくても探し求めている商品を見つけたり、自分では気が付かなかった商品を見つけたりできます。

これは、これまでの過剰接客が苦手だった顧客にも、気軽に買い物を楽しめる環境を与えることができ、顧客満足向上にも繋がるでしょう。

AIチャットボットのみで接客対応が完結できるようになれば、店舗で働く販売員は必要以上の接客をせずに感染症のリスクを和らげることができます。

また今まで費やしていた接客の時間を軽減でき、顧客満足度を上げる店舗業務や様々な施策に活用できます。

3DCG技術を活かした、サプライチェーンのデジタル化

3DCG技術を活かした、サプライチェーンのデジタル化

3DCGとは、コンピューター・グラフィックを活用して、立体的でリアルな衣服を作成する方法です。

これまでのアパレル業界では、新しい商品を開発するたびにサンプルを製作してきました。

そのためには、デザイン案に沿って工場などで原材料を調達し、生産・加工を行い、完成したサンプル品をデザイン部門に送るなどいくつもの工程が必要です。

そのため、サンプル製作に関わる手間とコストは膨大でした。

それだけでなく、当然のことながら完成品ができあがるまでに作成したサンプルはすべてムダとなってしまうため、「サステナブルなアパレル産業を目指す」という観点からも大きな問題であったといえます。

しかし、3DCGを活用すればコンピューターで作成した衣服をオンラインで確認することができますので、原材料のムダや生産・加工などの手間を省くことができます。

更に、オンラインによる3DCGのやり取りの場合は、現物を製造して搬送する工程も必要ありませんので、送料などの費用を抑えられるというメリットもあります。

それ以上に大きなメリットは、サンプル品をリアルタイムに共有することが可能なため、よりスピーディな開発が可能になることかもしれません。

今までのように、サンプル品の現物を制作する場合は、メーカー、デザイナー、製造者など関係するアクターが納得するまで、何度も材料費や制作費、輸送コストを掛けてサンプル品のやり取りをしていましたが、3DCGを活用することでその必要がなくなるのです。

また、製作した3DCGをそのままECサイトの販売ページに掲載することも可能なため、実物の完成品をわざわざ撮影スタジオなどで撮影する手間やコスト削減が期待できます。

まとめ

前後編の2回に分けて、アパレル産業が抱えるサステナブルな4つの課題と、課題解決のためのDX推進施策について解説しました。

生活の三大要素「衣食住」の1つである衣服は、我々人間が豊かに生活していくうえで大切な要素です。

一方で、アパレル産業が抱える、過剰生産、環境破壊、人権侵害はサステナブルな視点で向き合う必要のある、大きな課題となっています。

アパレル産業のDX推進は単にデジタルを活用した資源やコストの効率化だけを考えれば良いわけではありません。

「人々の生活を豊かにするにはどうしたら良いのか?」

これは、メーカー、デザイナー、製造業者、小売店、消費者それぞれがサステナブルな社会の実現に向けて真剣に向き合う課題ではないでしょうか。

人の生活を豊かにする「アパレル産業の未来をサステナブルにする」ためにはどうしたらよいのか、企業として何ができるのか考えてみてください。

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DXportal®編集部

DXportal®の企画・運営を担当。デジタルトランスフォーメーション(DX)について企業経営者・DX推進担当の方々が読みたくなるような記事を日々更新中です。掲載希望の方は遠慮なくお問い合わせください。掲載希望・その他お問い合わせも随時受付中。

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