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マイナンバーカードは、役所の手続きで使うカードだと思っていませんか。街のたばこの自動販売機で、そのカードで年齢を確認する装置を見つけました。
住民票や戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)をコンビニで取れるのと同じように、カードは役所の窓口の外でも使えます。
本記事では、自販機とコンビニ交付の2カ所を手がかりに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の仕組みとして広がるカードの行き先と、用途ごとに確かめる情報の違いを解説します。
【本記事の要点】
- 成人識別ICカード「taspo」の終了後、街のたばこ自販機では、マイナンバーカードや運転免許証で年齢を確認する方式が中心になる
- 写真の機種について、メーカーは年齢の判定に生年月日だけを使い、判定後すぐに削除すると説明している
- コンビニ交付は、カード内の本人確認用の電子証明書と4桁の暗証番号で本人を確認し、職員が応対しなくても証明書を受け取れる
- たばこの自販機とコンビニ交付の2つで、カードの行き先が広がったのは、受け入れる側が、必要な確認だけを成立させる接点を作ったからだ
たばこの自販機に、マイナンバーカードで年齢を確認する装置があった
写真1は、街で見つけたたばこの自動販売機です。上部には、運転免許証とマイナンバーカードで買えると書かれた表示があり、その下に、カードの挿入口と「年齢確認装置」の文字が見えます。
写真2は、同じ自販機の側面と正面で、縁にも同じ内容の赤い表示が貼られていました。では、「免許証・マイナンバーカードで買えます」とは、どういう仕組みなのでしょうか。
財務省は、たばこの自販機に、20歳未満が購入できない措置として、年齢を識別する装置を備えることを求めています。カードで買えるのは、この方式に対応した装置を備えた自販機です。
写真の機種について、メーカーは、運転免許証またはマイナンバーカードから年齢の判定に必要な生年月日だけを読み取り、判定後すぐに削除すると説明しています。あわせて、カードの有効期限と、ICチップが正常かどうかも確認するとのことです。
年齢確認は、これまで成人識別ICカードの「taspo(タスポ)」が担ってきました。そのtaspoは、2026年3月末でサービスを終了しています。財務省は以前から、終了後は運転免許証・マイナンバーカードの方式が中心になると見込んでいました。
以前は、飲食店の多くで喫煙ができ、店側が来店客のためにたばこを買い置きしていることも少なくありませんでした。しかし最近は、禁煙条例の広がりのためか、私の知り合いの喫煙可能な飲食店でも、たばこを買い置きせず、欲しい人には近所のコンビニや自販機を案内しています。近所に自販機しかない場所では、カードや免許証がないと買えません。そのため、急にたばこが切れて困っている人をたまに見かけます。私の友人も、その1人です。
私はもう何年も前にたばこをやめてしまったので、カードでたばこを買った経験はありませんし、taspoが終わったことも知りませんでした。
ここで注目したいのは、年齢確認のために新しい専用のカードを作り直すのではなく、すでにある公的なカードを使っていることです。taspoの事例は、自社で本人確認や年齢確認が必要な場面でも、新しい専用カードや確認手段を作る前に、法令や契約、機器の条件を確かめたうえで、既存の身分証で成り立たないかを考える手がかりになるのではないでしょうか。
出典・参照:
同じカードで、住民票も戸籍もコンビニで取れた
写真3は、横浜駅の地下通路で見かけた、行政サービスコーナーへの案内サインです。写真4は、その近くにあった立て看板で、ここでは証明書の発行を扱い、届出や申請は区役所へと案内しています。
従来は役所の窓口でしかできなかった手続きですが、証明書の発行に関しては、駅の中の窓口でも、コンビニでも受けられる形になっています。
ただし、この2つは仕組みが違います。駅の窓口は、役所の窓口を駅にも設けたもので、職員が応対することは変わりません。一方、コンビニ交付は、カードとマルチコピー機だけで受け取れるので、職員が応対する必要がありません。人が応対しなくても成り立つ手続きは、場所を増やしやすく、DXを考えるうえで大きなヒントになりそうです。
コンビニ交付は、マイナンバーカードを使い、コンビニのマルチコピー機などで、市区町村が発行する証明書を受け取る仕組みです。コンビニ交付を運営する地方公共団体情報システム機構(J-LIS)によると、サービスを提供する市区町村は、2026年10月24日現在で1,387ですが、取れる証明書の種類や手数料、利用できる時間は、自治体ごとに違います。
住民票は、住所地の自治体が対応していれば取れます。戸籍は、本籍地の自治体が対応していることが条件です。住所地と本籍地が違う自治体のときは、原則として、先に本籍地の自治体への利用登録が必要です。
私もずいぶん前に戸籍謄本が必要になったときは、本籍地まで出向かなければなりませんでした。しかし、今はコンビニでも取ることができるので、本当に便利だと感じています。
横浜市の場合は、市内に住民登録があるか、本籍がある人で、利用者証明用電子証明書(カードのICチップに入った、本人であることを電子的に示す証明書)を搭載したカードを持つ本人が使えます。取れる証明書には、次のようなものがあります。
- 住民票の写し
- 印鑑登録証明書
- 市内に本籍がある人の戸籍全部事項証明書
なお、コンビニ交付が窓口へ行きにくい人の手続きを生活圏の中に増やした点は、「使える人だけ」で進めないDX|デジタルデバイドに橋を架けた3つの現場【編集部考察】でも取り上げています。
出典・参照:
1枚のカードでも、用途ごとに確かめる情報が違う
カードを機械に入れると、どんな情報が使われるのでしょうか。自販機とコンビニ交付で、確かめる情報を並べると次のとおりです。
| 場面 | 確かめる情報 | 仕組み |
|---|---|---|
| たばこの自販機(写真の機種) | 20歳以上かどうか。有効期限と、ICチップが正常かも確認 | メーカーの説明では、年齢の判定に必要な生年月日だけを読み取り、判定後すぐに削除する |
| コンビニ交付 | カードを持つ本人が操作していること | 利用者証明用電子証明書と、4桁の暗証番号を使う |
つまり、自販機が確かめているのは「20歳以上かどうか」で、コンビニ交付が確かめているのは「本人かどうか」です。
この違いを知っておくと、「カードを入れると、全部の情報を渡すことになるのか」という疑問に、場面ごとに答えられます。
自販機もコンビニ交付も、カードの情報をすべて使っているわけではありません。その場で確かめたいことを決め、それに必要な情報だけを使っています。この考え方は、自社が本人確認や年齢確認の場面を設計するときにも使えます。
たとえば、年齢の条件がある商品の購入で確かめたいのが「20歳以上かどうか」だけなら、住所や氏名まで預からなくても成り立つ場合があります。本人だけに渡したい書類の受け取りなら、確かめたいのは「本人が操作していること」で、そのための手段を選びます。
確かめたいことを先に言葉にして、それに必要な情報だけを預かる設計にすると、利用者も「何のために情報を渡すのか」を理解しやすくなるのです。ただし、法令などで求められる確認がある場合は、それに従ったうえで考えるとよいでしょう。
なお、カードの役割は街の端末だけでなく、オンラインの本人確認にも広がっています。企業側の視点は、本人確認工程での離脱はマイナンバー連携で解決!「勝てるDX」の条件で整理しています。
出典・参照:
まとめ:カードの行き先は、受け入れる側が作った
たばこの自販機とコンビニ交付の2つで、マイナンバーカードの行き先が役所の窓口の外へ広がっていたのは、受け入れる側が、必要な確認だけを成立させる接点を作っていたからでした。
カードが万能になったのではなく、自治体やコンビニ、自販機メーカーが、場面ごとの確認に合わせた入口を作ったのです。
貴社に置き換えるなら、来店や来社でしか受けられない手続きを1つ選び、そこで確かめたいことを言葉にして、それに必要な最小限の情報だけを書き出してみると言い換えることができるでしょう。それが、自社サービスの本人確認や年齢確認を見直す最初の一歩です。
次にコンビニの端末や、街の自販機の「カードで買えます」という表示を見かけたら、その場所がカードで何を確かめているのかを、思い浮かべてみてはいかがでしょうか。
執筆者
DXportal編集長
町田 英伸
自営での店舗運営を含め26年間の飲食業界にてマネージャー職を歴任後、Webライターとして独立。現在はIT系を中心に各種メディアで執筆の傍ら、飲食店のDX導入に関してのアドバイザーとしても活動中。『DXportal®』では、編集長としてすべての記事の企画、及び執筆管理を担当。特に店舗型ビジネスのデジタル変革に関しての取り組みを得意とする。「50s.YOKOHAMA」所属。




