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ジェフ・ベゾス氏が退任を発表したことで最近世間を騒がせた米アマゾン・ドット・コム(以下:Amazon社)。
その後任に指名されたアンディ・ジャシー氏が現在率いているのがAWS(Amazon Web Services=アマゾン・ウェブ・サービス)です。
Amazon社の売り上げの半数以上を占めるAWSとはどのようなサービスなのか。
今回はAWSが持つサービスの特徴を通して、クラウドサービスが変える未来について解説してまいります。
クラウドを代表するASWの在り方や将来の展望を踏まえて、DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)を推進する際の参考としてください。
Amazon社の売上の半数を占めるAWS
AWSとはAmazon社が提供するクラウドサービスの名称で、正式名称はAmazon Web Service(アマゾン・ウェブ・サービス)といいます。
米国やシンガポールに拠点を置き、ITサービスの提供やコンサルティングを請け負っているCanalysの調査によると、AWSは2019年の世界におけるクラウドサービスのシェア1位を獲得したと発表されました。
AWSが占める割合は全体の32.3%で、2位のMicrosoft Azureの16.9%と比べても約2倍のシェアを誇っています。
日本でもクラウドサービスとして認知度が高いAWSですが、提供しているサービスの数は多岐に渡り、仮想サーバーやデータベース、ストレージの提供なども行っています。
AWSの特筆すべき3つの特徴

クラウドサービスの中でもトップシェアを誇るAWSの特徴はどんな点なのか。
3つのポイントに分けて紹介いたします。
- 繰り返される値下げ
- 豊富なサービスラインナップ
- イノベーションし続ける事業戦略
繰り返される値下げ

AWSの特筆すべき点は、過去10年の間に85回以上値下げをしていることです。
同じようにクラウドサービスを提供しているGoogleやMicrosoftもたびたび値下げをしていますが、AmazonのAWSの値下げの回数はその比ではありません。
なぜこのような対応ができるのかというと、Amazon自体は明確に公表していませんがAWSのデータセンターが利用しているハードウェアのコストが下がっているのを、的確にユーザー還元のために反映させていることが原因と考えられます。
ニューノーマルによりクラウドが普及し、データセンターのハードウェアも需要を増して価格が下がっていることと、圧倒的なビジネススケールの大きさが相まって度重なる値下げを可能にしたのでしょう。
価格を下げることにより、AWSは他社と比べてひときわ目立つコストパフォーマンスの良さを誇り、クラウド業界のトップシェアを維持し続けているのです。
豊富なサービスラインナップ

AWSのもう一つの特徴は、サービスのラインナップが豊富であり100以上の商品を提供していることです。
サーバーやクラウドストレージなど知名度の高いサービスから、量子コンピューティングやブロックチェーンまで、デジタル領域における最先端のサービスを展開しています。
豊富なサービスラインナップを持つことで、企業が抱える個々の課題を適切な形で解決でき、全世界で大きなシェアを獲得するに至ったと考えられます。
イノベーションし続ける事業戦略

AWSを提供しているAmazon社の特徴として、イノベーションし続ける事業戦略が挙げられます。
他とは比べものにならないほどの値下げの回数や、豊富なサービスラインナップの提供などは、すべてAmazon社がクライアントの目線に立ってビジネスモデルの変革をした結果です。
80回もの値下げや100以上のサービスなど、他社と比較してそれぞれの数字が大きいことは、それだけDXに必要なスモールステップを重ねてきた証拠といえます。
これは、短いスパンでサービスをリリースしPDCAを素早くまわしていくことが、どれほど企業の売上拡大につながるかがわかる好例といえるのではないでしょうか。
これほどの大企業であってもDX推進の方法論は積み重ねであるという証左は、中小企業のDXを考える上でも重要な指針となるはずです。
クラウドサービスは未来をどう変えるか

アフターコロナの状況も相まって導入が増えているクラウドサービスは、どう未来を変えるのか。
AWSの圧倒的な普及率に見られるように、クラウドを導入することは当たり前となりつつあり、企業にとって欠かせないインフラの1つになると予想できます。
さらにDXを進めるためには企業のレガシーシステムを刷新することが必須であり、まず初めの一歩として行うべきことがシステムのクラウド移行です。
それに合わせて企業はどのように変化していくのか、2つの観点からクラウドがもたらす未来を読み解きます。
- チャレンジングな企業が育つ
- 企業の競争力向上
チャレンジングな企業が育つ

クラウドの導入率が増えることで、リスクを過度に恐れる必要がない環境ができあがりつつあり、チャレンジングな企業が育つと考えられます。
DX推進のためには時間をかけて確実に結果を出すよりも、新しいことを試みて短期でPDCAをまわすスタイルの方が重要とされています。
システム開発の手法として定着しつつある「アジャイル開発」もその考えに基づいたものです。
クラウドサービスの導入や機能の拡張・縮小は、慣れた担当者であればものの数十分で終わる作業であり、新しい機能を試して検証するには最適なツールといえます。
したがって、新しい取り組みに対して保守的なマインドを変えて「失敗を恐れずチャレンジする精神」を助長する手だてとも捉えられるのです。
クラウドサービスは企業が失敗するリスクを最低限に留めてビジネスの変革を実現する、大きな可能性を秘めているツールといえます。
企業の競争力向上

予想されるもう1つの未来は、クラウドの普及によりITコストが削減され企業の競争力が上がることです。
クラウドを活用するとオンプレミスのサーバーを使用するよりも大幅なコスト削減につながるため、導入後はシステムのメンテナンスなどに充てていたIT予算が浮くことになります。
そして浮いた費用を競合他社との差別化になる事業に投資することで、自社だけにしか提供できないサービスを開発するなどして、競争力を高めることが可能になるのです。
各々がそうした取り組みをすることで売上拡大が期待でき、ひいては業界全体の競争力向上につながり、日本経済の衰退を防ぐこともできるかもしれません。
まとめ
Amazon社の主力サービスであるAWSの特徴と、クラウドサービスがもたらす未来について解説いたしました。
AWSは数あるクラウドサービスの1つに過ぎませんが、全ての業界のデジタル発展に寄与するツールであり、各企業がうまく活用することで自社の競争力向上も期待できる有益な手段です。
Amazon社のECサイト事業が拡大したことで、その名をグローバルに馳せることになりました。
しかし、そうした取り組みだけでなく新しい事業に積極的に乗り出し、革新的なサービスを提供し続けたことがAWSが世界的なシェアで優位になった1つの理由でもあります。
今後AWSがどのような動きを見せ社会を変えていくのか、Amazon社の展望に期待したいところです。
各企業では必要に応じてAWSなどの各種サービス導入を検討して、自社に見合ったDX施策を推進してみてはいかがでしょうか。