目次
【DXにおけるアジャイル開発・前編の記事】では、基本的な情報と、今求められている理由を解説いたしました。
後編では、アジャイル開発のメリットとデメリット、また、成功させるためには、何に気を付けなければいけないのか。
アジャイル開発に踏み切ろうとしている方に向けて、具体的にお伝えします。
システム開発に携わる企業の担当者は、内容を熟読していただき、DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させる足がかりとしてください。
>>【DXにおけるアジャイル開発・前編】今求められている理由とは?
アジャイル開発のメリット

前半の記事でも少し触れましたが、本章では、アジャイル開発の3つのメリットを深堀していきます。
- 顧客の希望に柔軟に対応できる
- リリース後に改善ができる
- 投資金額が少なく、短期で成果を出しやすい
ユーザーの要望に柔軟に対応できる
ウォーターフォール開発では、途中の段階で、ユーザーがシステムの動きを見ることはほとんどありません。
対して、アジャイル開発では、顧客の要望に柔軟に対応できて、完成したシステムに対する顧客満足度を高められます。
たとえば、とあるゲームアプリ開発を行う企業では、機能を仕上げる前に、開発メンバーと外部担当者のチェックを入れて、反応を見ながら開発を行い、リリース後も、ユーザーから要望が上がれば即座に作り直しをしたそうです。
ユーザーからのフィードバックを受ける回数を増やしたことで、当初は要件になかった機能を追加する必要性があるとわかり、短期間で大幅な機能開発が可能となりました。
結果として、今のユーザーに求められる機能を取り入れられ、高い評価を得たサービスのリリースにつながっています。
プロジェクトと並行しつつ、フィードバックをもらうことが、認識を合わせるきっかけとなり、双方にメリットをもたらした例の一つです。
リリース後に改善ができる

従来のシステム開発は、ユーザーが数多くの追加要望を出した際に、ベンダー側が対応しきれず、大幅な納期遅延につながり、訴訟問題に発展したケースも存在します。
アジャイル開発なら、機能を分割して開発を進めるため、リリース後の改善がしやすく、機能の改善や追加があっても、工数はそこまで膨大なものになりません。
アジャイル開発を起用した、国内大手のセキュリティ会社では、機能や要望ごとに少人数のチームを作り、ユーザーからの要望に即座に応えられる体制を構築しています。
少数精鋭で取り組むことにより、関連部門の対応を待つ時間がなくなり、問題をスピーディーに解決できるようになったそうです。
その結果、従来はサービスのバージョンアップに、1年ほどかかっていたのが、1か月に1度のサイクルで可能となりました。
このように、アジャイル開発は、リリース後でもすぐに改善が可能で、サービスの質の向上も期待できることがわかります。
投資金額が少なく、短期で成果を出しやすい
アジャイル開発は、必要以上に金額が大きくなることを防ぎ、短期で成果を出しやすいのもメリットです。
仮に手戻りがあったとしても、機能ごとの見積になるため、少ない投資で済みますから、クライアントと開発側が揉めるケースは少ないはずです。
さらに、テストから検証までのスプリントは2週間程度の期間が大半なので、スピーディーな開発が可能で、スムーズにいけば即時売上に直結します。
アジャイル開発は、リスクを最低限に抑えられるため、DX(デジタルトランスフォーメーション)の第一歩としても導入しやすい手法だといえます。
アジャイル開発のデメリット

システム開発に関わる問題を解消しやすいアジャイル開発ですが、進めるうえでのデメリットがいくつかあります。
取り組む前に把握しておくべき点は、以下の2つです。
- 開発の全体像が見えにくい
- 慣れていないと段取りを組むのに苦労する
開発の全体像が見えにくい
アジャイル開発は機能単位で開発が進むので、各スプリントをまとめた全体的なスケジュールの管理が困難です。
どのようにプロジェクトを遂行するか、着手しながら詳細を固めることが多く、長いスパンで見た場合の進捗状況が見えづらいため、木の1本1本は見えても、森の全体像を把握できない、といったイメージです。
1回のスプリントはスムーズに進んだとしても、全体で見たときにコストと工数が予想以上に増えないよう、注意しなくてはいけません。
慣れていないと段取りを組むのに苦労する
アジャイル開発は、最初の段階では詳しい方向性が決まっていないことが多く、慣れないと段取りを組むのに苦労します。
概念的なことしか決まっていないまま進めてしまうと、開発の方向性がブレてしまい、結果として顧客のニーズを満たせない可能性が出てくるのです。
アジャイル開発の経験がないエンジニアだと、最初のうちは感覚がつかめず苦労することが懸念されます。
何度か繰り返すうちに慣れてくる部分ではありますが、メンバーに経験者などを入れておくと、より円滑なプロジェクト遂行が可能になるはずです。
アジャイル開発を成功させる鍵

アジャイル開発はスケジュール管理がしにくいことや、最初のうちはペースを掴みづらいと思いますが、以下の点を押さえることによって、失敗を防ぐことが可能です。
- 十分なコミュニケーションを取れる体制
- アジャイル開発に最適なプロジェクト選定
- 厳選された開発メンバー
十分なコミュニケーションを取れる体制
アジャイル開発を成功させて、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するには、綿密なコミュニケーションが取れる体制づくりが欠かせません。
プロジェクトに社外のメンバーが関わる場合は、Slackなどのビジネスチャットツールを活用して、いつでも連絡を取れる体制を築いておいてください。
また、コミュニケーションをより円滑にするために、
- 質問をしやすい雰囲気を作る
- メンバー同士のフィードバックを定期的に設ける
- 間違えることを許容し、チャレンジする姿勢を推奨する
このような点に重きを置けば、アジャイル開発を活用した、DX(デジタルトランスフォーメーション)の環境構築という面でも、役に立つはずです。
アジャイル開発に最適なプロジェクト選定
失敗しないためには、スピード感のあるアジャイル開発に合ったプロジェクトを選ぶことも重要です。
- 求められるレベルが高いソフトウェアサービスの開発
- 全社的なシステムの統合など、間違いが許されない開発
このようなプロジェクトなどは、時間をかけて一つのものを確実に生み出す、ウォーターフォール開発の方が適しています。
アジャイル開発は、試行錯誤しながらサービスを作るため、AI(Artificial Intelligence=人工知能)を使った単機能など、導入の障壁が低いシステムに適しています。
目的や求められる質に応じて、開発手法を切り替えられることが、プロジェクト成功の鍵になるのです。
厳選された開発メンバー

アジャイル開発はようやくその言葉や概念が知られるようになり、ここ数年で使われるようになった手法です。
そのため現時点では、アジャイル開発に慣れている人材が少なく、効率よく進めるためには、開発メンバーを厳選する必要があります。
- DX領域に精通したエンジニア
- チーム全体の舵を取るプロダクトオーナー
- アジャイル開発を経験済みのマネージャー
こうした人材が開発メンバーにいると、トラブルが起きた際も課題をスムーズに解決しやすくなります。
該当するメンバーが社内スタッフにいない場合は、外部のベンダーやITコンサルタントなどを取り入れて、うまくチームメンバーを構成してください。
まとめ
DX(デジタルトランスフォーメーション)におけるアジャイル開発について、後半の記事では、メリット・デメリットと、成功させるためのポイントを解説しました。
アジャイル開発は、まだ台頭してきたばかりですが、従来の課題をうまく克服した、時代に合ったシステム開発手法です。
全体的なスケジュールの把握などデメリットもありますが、数を重ねることで、ある程度の問題は解決できるはずです。
デジタル化の壁を超えるために、システム開発の際は、積極的にアジャイル開発を取り入れて、世の中に影響を与えられる企業へ成長していってください。