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請求書の金額と期日を確かめて、振込を承認する。とはいえ、支払いの前に確かめているのは請求書に書かれた内容までで、受け取る口座の名義や相手の実在までは見ていない。そう気づいたことはないでしょうか。
小さな会社の支払いにもある確認の抜けを、巨額の支払いを続ける米国の連邦政府は、仕組みとして埋めようとしています。
2026年10月6日、米財務省と財政サービス局は、不正・不適切な支払いを防ぐ「Do Not Pay」(支払いの前に、払ってよい相手かを調べる仕組み)の、2026会計年度(FY2026)の成果を公表しました。Do Not Payを使える連邦プログラム(連邦政府の各制度)は、前年度末の約4%から約99%に広がっています。
本記事では、財務省が公表した数値と、支払いの前に受取人や口座をデータで照合する仕組みを整理し、支払いのやり方がどう変わったのかを解説します。
【本記事の要点】
- 米財務省と財政サービス局は2026年10月6日、Do Not Payのデータを使える連邦プログラムが、前年度末の約4%から約99%になったと発表した
- 照合したデータは6.41億件から23億件超に増え、11億件超・約3.7兆ドルの連邦の支払いが審査された
- 死亡者宛てになるはずだった約13,500件・1.75億ドルの支払いを見つけ、返還している
- 口座の名義と納税者番号(TIN)の確認は2026年9月30日に本格稼働し、支払いの前に止める方式への転換が掲げられている
米国:Do Not Payを使える連邦プログラムが約4%から約99%に拡大
米財務省と財政サービス局(Bureau of the Fiscal Service)は、このFY2026の成果の発表を、2025年3月25日に出された大統領令14249『Protecting America’s Bank Account Against Fraud, Waste, and Abuse』(国のお金を不正や無駄づかいから守ることを求めたもの)の主要な要件を満たす内容と位置づけています。
中心は、Do Not Payを使える範囲の広がりです。連邦プログラムの約99%が、法律で使うことが認められたすべてのデータ(データソース)を使える状態になりました。FY2025末は約4%で、残りもほとんどが、FY2027の初めに導入を終える見込みです。
使われた量も増えました。照合したデータの件数(レコード)は、FY2025の6.41億件から、FY2026は23億件超へとほぼ4倍に増えています。
| 項目 | FY2025 | FY2026 |
|---|---|---|
| Do Not Payのデータを使える連邦プログラムの割合 | 約4%(年度末) | 約99% |
| 照合したデータの件数(レコード) | 6.41億件 | 23億件超 |
出典・参照:
Do Not Payの仕組み:支払いの前に、受取人を複数のデータと突き合わせる
Do Not Payは、連邦政府の機関や、連邦のお金で州が運営する制度が、お金を受け取る人の本人確認と、受け取る資格があるかの確認に使う、データとサービスです。財政サービス局は、給付の決定や支払いの前に使うものと位置づけ、支払いの前の審査は法律で求められているとしています。
調べる先:データが9件増えた
FY2026に、調べる先となるデータが9件加わりました。発表が例に挙げたのは、次の3つです。
| 追加されたデータ | 内容 |
|---|---|
| OpenCorporates | 企業の登録情報 |
| Numident(社会保障局のデータ) | 受取人の情報が合っているかの確認(一部) |
| Federal Audit Clearinghouse | 助成金を受け取った組織への、監査の結果 |
お金を受け取る人について、支払いの前に調べられる材料が増えたことになります。
出典・参照:
新しい確認:口座の名義とTINの確認が2026年9月30日に本格稼働
財務省はFY2026のあいだ、2つの確認を試験運用しました。1つは、支払い先の口座の名義が受取人のものかどうかの確認です。もう1つは、支払いに納税者番号(TIN。税金の手続きで個人や企業を見分ける番号)が付いているか、その形式が正しいかの確認です。
この2つは2026年9月30日に本格稼働しました。発表は、条件を満たさない支払いを、お金が出る前に見つけて返還できると説明しています。
出典・参照:
数字の読み方:確かめた量、見つかった成果、実績と見込みの区別
発表の数字は、「どれだけ確かめたか」と「何が見つかったか」に分けて読むと、意味がはっきりします。さらに、すでに起きた実績と、これからの見込みも分けて読みます。
確かめた量と見つかった成果
FY2026に財務省が審査した連邦の支払いは、11億件超、総額約3.7兆ドルです。このうち、死亡者に支払われるはずだった約13,500件、総額1.75億ドルを特定し、返還しました。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 審査した連邦の支払い | 11億件超 |
| 審査した支払いの総額 | 約3.7兆ドル |
| 死亡者宛てとして特定し、返還した支払い | 約13,500件 |
| 同上の総額 | 1.75億ドル |
見つかった1.75億ドルは、審査した総額の約0.005%、つまり2万分の1ほどという計算が成り立ちます。ごくわずかな問題を見つけるために、すべての支払いを同じ手順で調べる。これが、支払い前の確認のやり方です。払ってから問題のあるものを探して取り戻す方式とは、確認するタイミングが違います。
米財務長官は発表の中で、「払ってから追いかける(pay and chase)」やり方を超えて、事前に防ぐことを連邦政府の最初の守りにすると述べています。
実績と見込みの区別
発表の数字には、実績と見込みが並んでいます。
| 区分 | 内容 | 時点 |
|---|---|---|
| 実績 | Do Not Payのデータを使える連邦プログラムが約99% | 2026年10月6日の発表時点 |
| 実績 | 照合23億件超、審査11億件超・約3.7兆ドル | FY2026 |
| 実績 | 口座名義とTINの確認が本格稼働 | 2026年9月30日 |
| 見込み | 残るプログラムの導入が完了 | FY2027の初め |
99%は、データを使える状態になったプログラムの割合を示す数字です。口座名義とTINの確認は、試験運用を経て、年度の最終日に本格稼働した段階にあります。
出典・参照:
自社への視点:支払い前の確認は、突き合わせる先のデータで決まる
Do Not Payは、米国の連邦政府の機関などが使う仕組みで、日本の企業がそのまま使えるものではありません。ここから持ち帰れるのは、仕組みの名前ではなく、考え方です。支払いの前に、請求書の内容とは別に、お金を受け取る相手と口座を確かめる手順を置く、という考え方です。
Do Not Payの確認は、受取人と口座に関するものです。請求書の内容を確かめる作業とは、別の作業にあたります。
| 確認の種類 | 照らす先 | 発表での記載 |
|---|---|---|
| 受取人の情報 | 社会保障局のNumident、企業の登録情報、助成金受領者の監査結果など | 追加された9件のデータセットの例 |
| 口座が受取人のものか | 口座名義 | 2026年9月30日に本格稼働 |
| 番号が付いていて形式が正しいか | TIN | 2026年9月30日に本格稼働 |
米国は、政府が持つデータと突き合わせて、受取人と口座を確かめています。自社で同じことをするなら、突き合わせる相手は、取引先の口座名義や登録番号といった、自社が保有するデータです。このデータは、誰がいつ登録した値なのか。登録内容が変わったとき、その変更は次の支払いの前に反映されるのか。支払い前の確認の精度は、ここで決まります。
確認を人の目と記憶に任せるのか、データとの突き合わせに任せるのか。米国の連邦政府は、後者をすべての支払いに当てる方向へ動いています。
まとめ:払う前にすべての支払いをデータと突き合わせる、という組み替え
米財務省と財政サービス局は、Do Not Payを使える連邦プログラムを約4%から約99%に広げ、11億件超・約3.7兆ドルの支払いを審査しました。死亡者宛ての約13,500件・1.75億ドルの支払いを見つけて返還し、口座名義とTINの確認は2026年9月30日に本格稼働しています。
数字が示すのは、見つけた金額の大きさよりも、確認するタイミングが変わったことです。払った後に追いかける方式から、すべての支払いを複数のデータと突き合わせてから払う方式へ、支払いの流れそのものが組み替えられています。
貴社の支払いでは、請求書の内容の確認と受取人や口座の確認は、別々に設計されているでしょうか。支払いの前に、どのデータと照らしているのか。その答え次第で、払ってから追う側にいるのか、払う前に確かめる側にいるのかが決まります。
執筆者
DXportal®運営チーム
DXportal®編集部
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