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- 翌週のカレンダーを開くと、平日はもう会議と打ち合わせでほとんど埋まっている
- 空いた時間で運動でもしよう、読みかけの本を片づけようと思っていたはずなのに、「空いた時間」はいつまで待っても現れない
経営者や、責任ある立場で働く人なら、この感覚に覚えがあるはずです。
Googleカレンダーに限らず、スケジュールやタスクの管理ツールが広まり、自分の1週間が一目で見渡せるようになった今、空白のマスはむしろ「まだ入れられる」という圧力として働きます。DX(デジタルトランスフォーメーション)は私たちの時間の使い方を大きく変えましたが、変えたのは予定を埋める速さであって、何から埋めるかという順序ではありませんでした。
この順序を組み替える手がかりになるのが、元ゴールドマン・サックスの投資家・田中渓氏の時間の使い方です。田中氏は、やりたいことや休息を先にカレンダーへ入れ、仕事はその残りで組み立てます。多くの人とは、予定を埋める順序がちょうど逆になっています。
本記事では、田中氏の時間の使い方をもとに、経営者が自分のカレンダーを「先に取り分ける」側から組むための順序を考えます。
【本記事の要点】
- 予定を仕事で埋めてから空いた時間で休もうとすると、その時間はたいてい残らない
- 田中渓氏は、運動・学習・人との時間を先にカレンダーへ入れ、残った時間で仕事をするという順序で一日を組んでいる
- これは意志の強さの問題ではなく、何を先に確保するかという順序の問題である
- スケジュールを可視化・共有できる今こそ、空白を埋める圧力に抗い、余白を意図して残す発想が必要になる
気づけば、予定は仕事で埋まっている

経営者や管理職のカレンダーは、たいてい仕事の予定から埋まっていきます。
- 会議
- 来客
- 資料の締め切り
こうした「相手がいて期限があるもの」は、自然とカレンダーに入っていきます。日時が決まっていて、書いておかないと回らないからです。
運動や読書は、そうではありません。決まった時刻はなく、やらなくても誰かに催促されるわけでもない。だから「時間が空いたらやろう」と考えるだけにして、カレンダーには書かない。ところが、その空いた時間はいつまでたっても生まれません。なぜなら、多くの場合、忙しいビジネスパーソンは、予定表にすき間ができても、次のスケジュールで埋まってしまうからです。これではいつまでたっても、自由な時間は生まれるわけはないのです。
問題なのは、これがだらしなさの結果ではないことです。締め切りのある仕事が先に場所を取り、締め切りのない予定は後回しになる。仕組みとしてそうなっているだけで、本人の意志が弱いわけではないのです。
けれども、後回しにし続けたものは確実に削れていきます。眠る時間、体を動かす時間、家族と過ごす時間。どれも「今日一日くらい」なら問題は起きませんが、それが常態になると、判断の質も気力も少しずつ落ちていくかもしれません。経営者にとって、これは「小さな問題」で済まないことは明白です。
やりたいことを、先にカレンダーへ置く
この逆さまの順序を提唱しているのが、田中渓氏です。田中氏は、ゴールドマン・サックス証券に17年在籍し、投資部門の日本共同統括を務めた投資家で、現在はビジネス系インフルエンサーとしても活躍しています。著書に『億までの人 億からの人』(徳間書店)があり、私は以前からYouTubeなどで氏の発信を追いかけてきました。
田中氏が様々な媒体で語っているのは、「やりたいことは全部、先に時間を決めてやってしまう。仕事はあくまでそのための手段」という考え方です。カレンダーには、運動、学習、食事や人と過ごす時間をあらかじめ入れておき、残った時間だけで仕事をする。氏はこれを「夏休みの宿題」にたとえます。
夏休み、何十日も期間があるのに、最終日にまとめて片づけようとする子どもがいます(ちなみに、筆者もそうでした)。つまり、時間がたっぷりあると、その分だけ着手が遅くなるという例えです。逆に、使える時間が最初から短く区切られていれば、人はその中で終わらせようとするでしょう。だから、やりたいことを先に入れて仕事に回せる時間を削っても、仕事はその枠のなかで収まる。氏はそう見ているのです。
氏の実践そのものはかなり極端です。毎朝3時45分に起き、25キロを走るか、70キロを自転車で漕ぐか、9000メートルを泳ぐ。心拍や睡眠を含む体の状態はウェアラブル端末で管理しています。そして、運動を生活に組み込んでから、日中3時間かかっていた仕事が1時間で終わるようになった、と述べています。体をしっかり動かすと自己管理がきくようになり、その分だけ仕事の生産性も上がる。それが氏の挙げる理由です。
ここで注目したいのは、氏の運動量そのものではありません。「やりたいことを先に時間で確保し、仕事を残りに収める」という順序の置き方です。
出典・参照:
これは「意志が強い人」の話ではない
田中氏の生活を知ると、多くの人は「よほど意志が強いのだろう」で片づけたくなります。3時45分に起きて長距離を走れる人が、そうそういるとは思えません。ですが、そこで「すごいね」と言って終わらせてしまうと、もっとも学ぶべきポイントを逃してしまいます。
田中氏の行動から学べるのは、スケジューリングの順序です。「譲れないものを先にカレンダーへ入れ、仕事をそのあとのすき間に収める」。この順序だけを取り出せば、走る距離とは関係なく、誰にでも真似できるでしょう。先に置くのが25キロのランニングである必要はなく、7時間の睡眠でも、週2回の30分の散歩でも、毎朝15分の読書時間でも構わないのです。
意志の強さが問われるのは、すき間時間に無理やり運動をねじ込もうとするときです。先に時間を取り分けてしまえば、そこは「すでに埋まっている枠」になります。あとから来た仕事の予定は、その枠を避けて入るしかありません。頑張って抵抗する話ではなく、置く順番を先にするかどうかの話なのです。
可視化した余白を、どう守るか
順序を入れ替えるのに、特別な準備はいりません。
- スケジュールの共有
- 時間を区切って予定を配置するタイムボクシング
- 睡眠や活動量の記録
田中氏の実践も、こうしたデジタルの道具で自分の時間とコンディションを見えるようにすることで成り立っています。時間を可視化して共有できるようにしたのは、DXがもたらした明確な前進です。日程調整のやりとりは減り、誰がいつ動けるかもすぐにわかります。
ただ、可視化された予定表には1つの性質があります。空いているマスは、自分にも周囲にも「まだ入れられる時間」に見えるのです。いまは多くの職場でカレンダーを同僚や部下と共有していますから、その空白には会議の招待が実際に入ってきます。会議設定ツールも、空いているコマを自動で候補に挙げます。何も置かない余白は、放っておけばいずれ誰かに埋められます。
だからこそ、譲れない時間は「予定」として先に置く意味があります。頭のなかの「空いたらやる」は共有カレンダーには存在しないのと同じで、会議の招待はおかまいなしに入ってきます。同じ時間を「予定あり」として登録してあれば、相手のツールにはふさがった時間として表示され、そこは候補から外れます。可視化は、余白を放置すれば埋める圧力になり、意図して先に埋めれば余白を守る壁になる。同じ仕組みを、どちらに使うかという問題です。
翌週のカレンダーを開いたら、まず睡眠の時間と「これだけは譲れない時間」を先に置いてみる。仕事の予定は、そのあとで残りに入れていく。試すのはこの一点だけで十分です。
まとめ:時間は「余ったら使う」ものではない
田中渓氏の時間の使い方から読み取れるのは、特別な自己管理術ではありません。「やらなければいけないこと」と「やりたいこと」のスケジュール設定の順序の入れ替えです。やらなければならない仕事でスケジュールを埋めてから、余りでやりたいことを考えるのではなく、休息・睡眠・運動・人と過ごす時間を先に取り分け、仕事をその残りで設計する。
つまり、締め切りのないものを先に置くというだけのことですが、実際にやってみると、これはかなりの発想の転換です。道具はもう十分にそろっています。足りないのは、その道具に何から入れるかという順序のほうなのです。
カレンダーが仕事から先に埋まっていく状況そのものは、そう簡単には変わらないでしょう。それでも、翌週の予定を組むとき、「空いたら休む」ではなく「休みを先に置いてから仕事を入れる」と意識するだけで、1週間の見え方はきっと変わるはずです。時間は、余ったら使うものではなく、先に取り分けておくものだと考えてみる。次にカレンダーを開くときの、小さな順序の変更として持ち帰っていただければと思います。
執筆者
DXportal編集長
町田 英伸
自営での店舗運営を含め26年間の飲食業界にてマネージャー職を歴任後、Webライターとして独立。現在はIT系を中心に各種メディアで執筆の傍ら、飲食店のDX導入に関してのアドバイザーとしても活動中。『DXportal®』では、編集長としてすべての記事の企画、及び執筆管理を担当。特に店舗型ビジネスのデジタル変革に関しての取り組みを得意とする。「50s.YOKOHAMA」所属。


