高度100メートルの視点|ドローン趣味が教えてくれる経営者の俯瞰力

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日々の数字や現場対応に追われ、気づけば「今日、今週のこと」しか考えられていない。そんな感覚を抱える経営者や部門責任者は、少なくないはずです。目の前の判断に追われるほど、自社を一歩引いて眺める余裕は失われていきます。

だからこそ、忙しい経営者ほど、休日のまとまった時間を思いきって趣味に充てる意味があるのではないでしょうか。仕事から完全に離れた時間が、かえって仕事への向き合い方を変えることがあります。そのなかで、編集部があえて1つ挙げたいのがドローン撮影です。

理由は、ドローン撮影が見せてくれる「地上からは見えない景色」が、経営における「俯瞰」の視点とそのまま重なるからです。本記事では、この趣味を入口に、俯瞰の視点をどう意識的に持てるのかを考えます。読み終える頃には、日常業務からあえて距離を置く小さな習慣を、自分のなかに取り入れたくなっているはずです。

【本記事の要点】

  • ドローン撮影は、地上からは見えない構造や配置を一望できる「俯瞰」の体験を、技術の進化によって誰でも手にしやすくしている
  • 心理学でいう「メタ認知」は、自分の思考や判断を一段上から客観的に見つめる力であり、経営における俯瞰と重なる部分が大きい
  • 経営者の判断は、日々の業務との距離が近いため                                   に地上目線に偏りやすい
  • 俯瞰は生まれつきの才能ではなく、趣味や道具を通じて後天的に鍛えられる視点である

地上からは見えない景色:ドローンが見せてくれるもの

地上から見た街並みと、ドローンで上空から見た道路や建物のつながりの対比

テレビの空撮シーンや、ネットで流れてくるドローン映像を見て、はっとした経験はないでしょうか。見慣れたはずの街並みが、上空からとらえるとまったく違う表情を見せている。道路がどうつながっているか、建物同士がどう配置されているか。地上を歩いているだけでは気づけなかった構造が、一枚の映像としてくっきり立ち上がってくるあの感覚。自分で操縦する人はもちろん、映像を眺めるだけでも味わえる感覚です。

この「俯瞰」の体験は、かつては一部の専門家や特別な設備を持つ人だけのものでした。しかし近年、コンシューマー向けドローンは4K・8K撮影に対応し、AIによる自動追尾機能や障害物回避センサーの搭載が進み、初心者でも高精度な空撮がしやすくなっています

操縦の難しさという参入障壁が下がったことで、「地上からは見えない景色」を手にする体験そのものが、以前よりずっと身近になりました。技術の進化が、俯瞰という体験へのアクセスしやすさを底上げしている、というのがDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈でこの趣味をとらえたときの面白さです。

出典・参照:

「俯瞰」という視点は、心理学でいう何にあたるのか

ドローンで景色を俯瞰することと、自分の思考を客観視するメタ認知の対応関係

物事を俯瞰してみる、つまり「一歩引いて全体を見る」という感覚は、心理学の世界では「メタ認知」と呼ばれる力に近いものです。メタ認知とは、自分自身の思考や感情、理解度といった認知活動そのものを、一段上から客観的に把握し、調整する力を指します。教育心理学の分野では1970年代半ば以降、研究が積み重ねられてきた概念です。

メタ認知は、「今、自分が何を考え、なぜその判断をしようとしているのか」を、自分自身から少し距離を置いて眺める視点と言い換えることもできます。ドローンが地上の風景を一望させてくれるように、メタ認知は自分の思考の風景を一望させてくれる力だと考えると、両者の感覚には重なる部分があるのではないでしょうか。

出典・参照:

経営判断は、なぜ地上目線に偏りやすいのか

目の前の数字、顧客、トラブルに囲まれ、全体を見る視点を失う経営者の様子

経営者や部門責任者の日常は、この「一歩引く」視点を持ちにくい環境にあります。

  • 目の前の数字
  • 目の前の顧客
  • 目の前のトラブル

判断すべき対象が常に近くにあるほど、視点はどうしても地上目線に寄っていきます。

管理職や経営層がメタ認知を働かせることで、「今の自分の判断は、過去の経験や思い込みに縛られていないか」と自問し、感情に流されず状況を冷静に分析しやすくなります。逆にいえば、俯瞰する視点を意識的に持たない限り、判断は無意識のうちに近視眼的になっていきやすいということです。

これは能力や経験の不足というより、日々の業務との距離が近すぎることから生まれる、構造的な偏りととらえたほうが正確かもしれません。

では、構造的な偏りだと分かったうえで、どうするか。原因が「距離の近さ」にあるのなら、打ち手は1つしかありません。放っておけば近視眼的になる、という前提に立って、意識的に距離を取り戻す習慣を自分の側に用意しておくことです。俯瞰力は、あれば便利な素質ではなく、この構造に抗うために意図的に鍛える対象だ、と考えたほうがいいのかもしれません。

とはいえ、「これからは俯瞰しよう」と決意するだけでは、翌朝には目の前の数字に引き戻されます。この状態を抜け出すには、もっと具体的で、生活のなかに居場所を持つ仕掛けが必要です。その答えの1つの案として編集部がおすすめしたいのが、ドローン撮影を趣味にすることです。それがなぜ俯瞰力の訓練になるのか、次章で理由を挙げていきます。

出典・参照:

ドローン撮影が「俯瞰力」の訓練になる2つの理由

ドローン撮影で物理的に距離を置き、街や業務の全体を見る感覚を養う様子

前章で触れたとおり、俯瞰は意志だけでは続きません。頼るべきは、自分を俯瞰の側へ引き戻してくれる仕掛けのほうです。ドローン撮影がなぜその仕掛けになりうるのかを、2つの理由から見ていきます。あわせて、始めるためのハードルと、ほかの趣味ではなくドローンを挙げる理由にも触れます。

理由1:操縦している間は、仕事のことを考えられない

ドローンを飛ばしているあいだ、風向きを読み、機体の姿勢を保ち、構図を決めることに意識を向けていると、来週の資金繰りや停滞中の案件は頭から締め出されます。この「業務から完全に頭を引き剥がす時間」を定期的に持つこと自体が、地上目線から一歩離れる練習になるのです。仕事に戻ったとき、少し離れていた分だけ、同じ課題が違って見えることもあるでしょう。

理由2:「視点を変えればこう見える」という感覚が体に残る

撮れた一枚を見返すたびに、「見慣れた場所も、視点を変えればこう見える」という感覚が体に残っていきます。抽象的な心構えとしての「俯瞰」は忘れても、景色を上空からとらえたときの具体的な驚きは覚えているでしょう。この記憶が、経営判断で行き詰まったとき、「あのとき上空から風景を見たように、この件も一度引いて眺めてみよう」と、意識的に呼び出せる手がかりになります。ドローンの価値は、俯瞰という曖昧な言葉を、思い出せる体験に変えてくれるところにあります。

ドローンを始めるハードルは、以前より下がっている

ドローンをめぐる制度は近年大きく動き、2022年12月の航空法改正で、市街地の上空を補助者なしで目視外飛行させる「レベル4飛行」が制度上可能になりました。本格的にそこを目指すなら一等無人航空機操縦士の資格や機体認証、国土交通大臣の許可・承認が必要になりますが、趣味として楽しむだけなら、100グラム未満の機体を飛ばすなど、条件によっては国家資格がいらないケースもあります。まずは手の届く範囲から始められるようになったことも、ドローンという趣味を編集部がおすすめする理由の1つです。

それでも、ほかの趣味ではなくドローンを挙げる理由

同じような効果は、登山でも天体観測でも、高いところや遠くに身を置く趣味であれば得られるかもしれません。それでも編集部がドローン撮影を挙げるのは、「俯瞰」というこの記事のテーマを、道具そのものが体現しているからです。そして、自分の手で高度を上げ、自分の目線が地上を離れていく感覚を味わうからこそ、その体験は記憶に残りやすいのだと思います。

出典・参照:

まとめ:俯瞰は特別な才能ではなく、道具と習慣で鍛えられる視点である

ドローンが見せてくれる地上からは見えない景色と、メタ認知が見せてくれる自分の思考の全体像。どちらも、日常のなかにいるだけでは決して手に入らない視点です。そしてどちらも、才能ではなく、道具や習慣によって後天的に近づける視点だという点で共通しています。

経営判断が地上目線に偏りやすいのは、能力の欠如ではなく、日々の業務との距離が近すぎることの裏返しです。だとすれば、意識的に距離を置く小さな仕掛けを、生活のどこかに持っておく価値はあるはずです。今見慣れているはずの景色や業務を、いつもと違う高さ、いつもと違う距離から一度眺め直してみることは、これから先の貴社の業務になんらかのプラスを生み出すかもしれません。

その第一歩は、大げさなものでなくてかまいません。たとえば今度の週末、家電量販店のドローン売り場に立ち寄って、実機を手に取ってみる。それだけでも、「高いところから世界を見る」という感覚が、ぐっと具体的になるはずです。

町田 英伸

執筆者

DXportal編集長

町田 英伸

自営での店舗運営を含め26年間の飲食業界にてマネージャー職を歴任後、Webライターとして独立。現在はIT系を中心に各種メディアで執筆の傍ら、飲食店のDX導入に関してのアドバイザーとしても活動中。『DXportal®』では、編集長としてすべての記事の企画、及び執筆管理を担当。特に店舗型ビジネスのデジタル変革に関しての取り組みを得意とする。「50s.YOKOHAMA」所属。