【経営者の休日】「何もしない」も「詰め込みすぎ」も、一流の休み方ではない

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「せっかくの休日なのに、月曜の朝にはむしろ疲れが残っている気がする」

「家族の予定、雑務、趣味と詰め込んだのに、なぜか達成感がない」

中小企業の経営者や管理職の方から、そんな声を聞く機会が増えました。逆に何も予定を入れずに過ごしたら過ごしたで、「時間を無駄にしたのではないか」と後ろめたさが残る、というお話も伺います。忙しく情報に溢れた現代、休日の使い方に迷う経営者は多いはずです。

本記事では、越川慎司氏の著書『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング、2024年11月刊)を手がかりに、両極端の休日がなぜ平日の判断力を鈍らせるのか、そして意図的な休日設計がなぜ経営判断そのものと言えるのかを整理します。読み終える頃には、次の休日に何から手を付けるかを1つだけ決められる状態を目指します。

【本記事の要点】

  • 「詰め込み型」と「何もしない型」は正反対に見えて、休日に何へエネルギーを使うかを選べていないという同じ構造を持つ
  • 越川慎司氏の書籍では、エグゼクティブが休日を「休養」と「教養」に意図的に配分している共通点が示されている
  • カレンダーアプリは予定で埋める道具ではなく、意図的に余白を確保する道具として使う視点が経営判断力に効く
  • 休日の過ごし方は「休むか休まないか」の二択ではなく、経営判断そのものとして設計する対象である

休日の予定表がびっしり埋まっている経営者ほど、実は休めていない

家族の予定や雑務で埋まった休日の予定表を前に、判断疲労を抱える経営者の様子

平日はもとより、土日も朝から夜までスケジュール帳が埋まっている経営者は、常に忙しさの中に身を置き、心身ともに休まるときを知りません。

  • 家族サービス
  • 住宅ローンや保険の見直し
  • 子どもの学校行事
  • 経営者仲間とのゴルフ
  • SNSの発信作業

休日を有効活用しているはずが、月曜の朝に「先週も休めなかった」という感覚が残ると感じる経営者は、決して少なくないでしょう。本章では、この「詰め込み型」の休日が抱えるリスクを整理します。

予定を埋めることが「休んだ証拠」になっている

平日と同じ密度で休日を埋めることは、一見すると時間の有効活用に思えます。しかし冷静に振り返ると、休日に入れている予定の多くは「やらなければならない」タスクと、「やらないと落ち着かない」自主課題で構成されていることが少なくないのではないでしょうか。

予定表を埋めた本人は「休んだ」と感じていますが、実際に消費されているのは平日と同じ意思決定のエネルギーです。休日を予定で埋める行為そのものが、「休んだ気がする」という自己申告の材料になってはいないでしょうか。

意思決定の連続が脳の疲労を積み上げる

1日にできる意思決定の質と量には限りがあると、脳科学の分野では以前から指摘されています。独立行政法人労働者健康安全機構の過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の研究によると、認知的な疲労が蓄積している状況では、前頭領域が代償的に働いて機能低下を補うことが示されています。

裏を返すと、代償が続くほど判断精度は落ちていくということです。休日に「どのレストランに行こう」「次はどの用事を片付けよう」といった小さな判断を積み重ねているうちに、月曜朝の意思決定に回すエネルギーが枯渇していくわけです。

出典・参照:

「何もしない」だけでも、一流にはなれない

通知を受け続ける受け身の休日と、スマートフォンを置いて意図的に休む状態の比較

詰め込み型の反対側にいるのが、休日をまったくのオフにするタイプです。予定を入れず、ソファでゴロゴロし、気付けばスマートフォンを1日中眺めている。「平日は忙しいのだから、休日ぐらいは何もしないのが正解」という考え方もあります。しかし、越川慎司氏の書籍が示唆するのは、「何もしない」だけでは一流の休み方にはならないという視点です。本章では、この「何もしない型」の限界を掘り下げます。

受動的な時間だけが積み上がる休日の課題

  • ベッドでダラダラ動画を見る
  • テレビを流し見る
  • スマートフォン通知への反応
  • ソーシャルメディアのタイムライン閲覧

これらはいずれも「休んでいる」と感じやすい行為ですが、実際には情報を受け取り続けている時間です。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)やITに関わる経営者・管理職にとって、通知の連なりを追い続ける時間は、平日と同じ情報処理を継続している状態に近いと言えます。身体を動かしていなくても、決して脳は休まっていません。

「ぼんやり」自体は悪くない、意図があるかどうか

一方で、何もせずぼんやりする時間には合理的な意味があるという意見もあります。外部の課題に取り組んでいない安静時に活性化する脳内ネットワークは、デフォルトモードネットワーク(DMN)と呼ばれ、記憶の整理や創造的な発想に関わるとされています。つまり「ぼんやり」自体は否定されるものではないのです。

ただし、意図せず1日中受け身で流れる状態が続くと、反芻思考の傾向が強まる可能性も指摘されています。同書が問うているのは、休息の質そのものではなく、「その休息を自分で選んで取っているか」という一点です。ただしこのことは、医療的な断定ではなく、あくまで同書が伝える視点として捉えてください。

出典・参照:

世界の一流は、休日を「休養」と「教養」に意図的に配分している

休日を心身を回復する休養と、読書などの知的な教養へ意図的に配分する構成

詰め込みでも放置でもない過ごし方とはどのようなものなのでしょうか。手がかりになるのが、越川慎司氏の著書で示されている、休日を意図的に設計するという考え方です。同書の紹介文や書評で公開されている範囲を要約する形で、その骨子を整理します。

書籍が提示する「休養」と「教養」の2軸

同書で紹介されている概念として、休日は大きく2つの軸に配分するという考え方があります。1つは「休養(エネルギーチャージ)」、もう1つは「教養(知的なインプット)」です。

休養は回復のための時間、教養は次の平日以降に使える引き出しを増やす時間、と読み替えることもできますが、両者を意識的に配分している点が、同書で紹介されているエグゼクティブの共通点として挙げられています。

土曜と日曜に役割を持たせる設計例

同書の紹介文では、土曜日を新しいことに挑戦する「チャレンジデー」、日曜日を心身を整える「リフレッシュデー」として位置付ける例なども取り上げられています。曜日ごとに役割を分けることで、「今日は何のための時間か」を本人が明確に持てるという構図です。これは「休日を予定で埋めているか」ではなく「休日の意図を設計しているか」を問うているのではないでしょうか。

ちなみに著者の越川慎司氏は、マイクロソフト米国本社で執行役員を務めた経歴を持ち、現在は株式会社クロスリバー代表として、行動データに基づく働き方改革の支援を行っている人物として紹介されています。エグゼクティブの行動観察に基づく整理として、示唆に富む一冊です。

両極端に共通するのは「意図の欠如」という一点

予定を詰め込む休日と何もしない休日が、どちらも意図の欠如へつながる関係図

詰め込み型と何もしない型は、行動としては真逆に見えます。しかし両者を並べて考えると、共通する構造が浮かび上がってきます。それは「休日に何へエネルギーを使うかを、自分で選べていない」という一点です。ここは編集部の独自考察としてお読みください。

予定を埋めることは「選ぶこと」とは違う

  • 家族の要望
  • 取引先や友人のお誘い
  • 雑務のリマインダー

休日に入っている予定の多くは、実は「外部から入ってきた依頼」を受動的に埋めた結果であることがあります。カレンダーの空白が消えていく速さと、自分の意図で入れた予定の割合は、必ずしも一致しません。詰め込み型の経営者ほど、「自分がこの休日を何のために使うのか」を先に決めていないケースが少なくないのです。

「何もしない」も選ばずに流れているだけかもしれない

一方の「何もしない型」も、意図して静養を選んでいるのであれ、越川氏の言う「休養」に相当します。疲れているから何も決められない、決められないから流されるまま1日が終わる、という状態は「選択の放棄」に近いものです。

厚生労働省が2023年に改正した『労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト』は、労働者本人が自らの疲労状態を客観的に把握するためのツールとして案内されており、経営者・管理職も自分の状態把握に活用できます。このチェックリストを活用して、判断力の低下を自覚するために休日の入り口で自分の疲労レベルを確認してみてはいかがでしょう。

また、令和6年就労条件総合調査(令和5年〈2023年〉1年間の実績)では、年次有給休暇の取得率は65.3%と過去最高を更新しましたが、依然として3割超が未消化のままです。休みが取れないことも課題ですが、取れた休みの質を選べていないこともまた、経営判断力への隠れた投資機会の損失と考えることはできないでしょうか。

出典・参照:

カレンダーアプリは「埋める道具」か「余白を作る道具」か

予定で埋める運用と、休養・教養の余白を先に確保するカレンダー運用の比較

ここまでの話は、実はDXportal読者にとって身近なテーマにつながります。それは、「DXとデジタルツール」の関係に近いものです。

日々使っているカレンダーアプリやタスク管理ツールを、経営者・管理職はどう使っているでしょうか。編集部の考察として、この道具の使い方そのものが休日の設計、そして平日の判断力に影響していると見ています。

予定で埋まっていることが「時間管理できている証拠」という錯覚

  • 紙の手帳
  • スマートフォンのカレンダーアプリ
  • Googleカレンダー
  • Outlook
  • Notion
  • 各種スケジュール共有ツール

中小企業の経営者や管理職も、複数のカレンダーを使い分けている場合が多いはずです。空白のマスが少ないほど「稼働している」「動けている」ように見えるため、無意識に予定を入れて埋めたくなります。しかし、埋まっていることと選べていることは別物です。カレンダーアプリは「他人からの予定依頼」を可視化する道具でもあり、放っておくと外部の要求で埋まっていってしまいます。

「余白」を先に確保するという逆算の使い方

編集部としておすすめしたい考え方は、休日のカレンダーに「休養ブロック」「教養ブロック」を先に置いてから、他の予定を入れるという逆算の運用です。たとえば、日曜午前を「散歩と読書」の余白として先にブロックしてしまえば、後から入る用事はその外側に配置されます。

このとき、ツール自体を新しく用意する必要はありません。今使っているカレンダーの使い方を変えるだけで、「意図的な余白」は確保できます。DXの議論はツール導入で語られがちですが、ここで問われているのは道具の性能ではなく、道具の使い方を経営者本人が設計しているかどうかです。

以下は、休日設計の視点を整理した比較表です。カレンダーアプリの運用を見直す際の判断軸としてお使いください。

観点予定で埋める運用余白を確保する運用
予定を入れる順番依頼・タスクから順に埋める休養・教養ブロックを先に置く
空白マスの意味「未活用」「もったいない」「意図して確保した時間」
判断疲労の傾向休日も選択の連続で疲弊選択回数が減り月曜に余力が残る
経営判断への影響疲労蓄積で精度低下の懸念回復と学習の両立で精度を維持

この表は絶対的な正解を示すものではありません。表の右側が全員に当てはまるわけではありませんが、少なくとも自分の運用が「予定で埋める運用」側に寄っている自覚があれば、「余白を確保する運用」側に寄せる余地はあります。まずは手元のカレンダーを開き、次の週末を表の左右どちらの運用で組んでいるかを確認してみてください。

次の休日から使える3つの自己点検ステップ

休養と教養の配分決定、余白の確保、判断精度の振り返りを順に示す3段階の図解

理屈を並べても、月曜からの判断力は変わりません。ここからは、次の休日から実行できる自己点検の手順を3つに絞って整理します。すべてを一度にやる必要はなく、1つだけでも試すという姿勢で構いません。

ステップ1:金曜の夜に「休養」と「教養」の配分を決める

休日が始まる前、金曜の夜のうちに、翌日と翌々日の大枠を「休養」と「教養」のどちらに寄せるかを決めます。両方半々でも構いませんし、土曜を教養、日曜を休養に分ける形でも構いません。所要時間は5分で足ります。決めた内容はカレンダーに一言メモを添える程度で十分です。

ステップ2:予定を入れる前に、余白ブロックを先に置く

家族や仕事関連の予定を入れる前に、休養と教養のブロックを先にカレンダーへ置きます。順番を入れ替えるだけで、「気付いたら余白がなかった」という事態を避けられます。外部からの依頼は、余白の外側に自然と配置されます。

ステップ3:日曜夜に、今週の判断精度を振り返る

日曜の夜、翌週の月曜に控えている主要な意思決定を1つ思い浮かべ、「今の自分は、この判断を良い状態でできそうか」を10点満点で自己採点します。点数の高低より、点数を付ける習慣が効いてきます。厚生労働省の疲労蓄積度自己診断チェックリストと組み合わせれば、より客観的に自分の状態を把握できるでしょう。

なお、成人は6時間以上の睡眠時間を目安とし、朝起きたときに休まったと感じる「睡眠休養感」を高めることが望ましいとされています(厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド2023』)。休日の過ごし方の設計と併せて、睡眠時間の確保も判断力維持の前提条件です。

出典・参照:

まとめ:休日の過ごし方は、経営判断そのものである

本記事では、休日の「詰め込み型」と「何もしない型」の両極端が、実は同じ失敗構造を持つという視点から、意図的な休日設計の考え方を整理してきました。要点を改めて整理します。

  • 「詰め込み型」と「何もしない型」は行動としては正反対だが、休日に何へエネルギーを使うかを選べていない点で共通している
  • 越川慎司氏の書籍が示すエグゼクティブの共通点は、休日を「休養」と「教養」に意図的に配分している点にある
  • カレンダーアプリは、埋めることではなく余白を意図的に確保することに使うと、経営判断力の維持につながる
  • 休日設計は生活の話ではなく、経営判断そのものである

最後に、あなたの次の休日について1つだけ問いを残します。

「次の土日、休養と教養のどちらに時間を使いますか?」

これを、金曜の夜のうちに1つだけ決めてみてください。そして、土曜午前の1時間を散歩にあて、日曜午後の30分を読書にあてる。そのレベルで構いません。決めた1つを実行できたかどうかが、来週の月曜朝の判断力に確実に影響してくるのです。

休日の使い方を変えることは、経営判断の質を変えることと地続きです。この週末は、ぜひともあなたの時間の使い方を考え直すきっかけの時間としてみてはいかがでしょうか。

町田 英伸

執筆者

DXportal編集長

町田 英伸

自営での店舗運営を含め26年間の飲食業界にてマネージャー職を歴任後、Webライターとして独立。現在はIT系を中心に各種メディアで執筆の傍ら、飲食店のDX導入に関してのアドバイザーとしても活動中。『DXportal®』では、編集長としてすべての記事の企画、及び執筆管理を担当。特に店舗型ビジネスのデジタル変革に関しての取り組みを得意とする。「50s.YOKOHAMA」所属。