DX担当にも休息を!キャンプで考えるデジタルデトックスという週末の贅沢

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この記事のタイトルを見て、ページを開いてくださったあなたは、休みの朝でありながら仕事のメールやチャットを確認したあとで、ふと画面をスクロールしている。そんな経験を一度はお持ちではないでしょうか。

「休んでいるはずなのに頭のどこかが仕事から離れない」

「スマートフォンを手にした瞬間、また月曜日に引き戻される」

この記事では、そんな感覚を抱えたまま、この夏こそ休み方を見直したいと感じているビジネスパーソンや経営者の方に、今朝はDXportal®編集長である私が密かに趣味にしている「キャンプ」という題材を借りて、デジタルとの距離を考える話をお届けします。

30年前のキャンプ場と、衛星通信で圏外がなくなりつつある現在を対比しながら、スマートフォンの電波が届かない場所を探すのではなく、電波が届いても見ない意志を持つことの意味を掘り下げます。読み終えた頃には、次の週末に何を試すか、あなたの休息設計にとって小さな輪郭が見えているはずです。

【本記事の要点】

  • 現代のデジタルデトックスは「圏外に逃げる」ではなく「つながれる状態で見ないと決める」意志的な選択である
  • キャンプは焚き火や待つ時間を通じ、経営者が失いがちな「何もしない時間」を取り戻す装置になる
  • 完全遮断は不安と無責任さを生むため、安全用の通信は残し通知だけを切る設計が現実解となる
  • DXは常時接続を推し進めるだけでなく、接続と切断を組織として設計し休める仕組みをつくる思想でもある

30年前、携帯と時計を車にしまってビールを開けた話

30年前、携帯と時計を車にしまってビールを開けた話
編集部による撮影

30年ほど前、当時20代だった私は、仲間数人と山あいのキャンプ場に着くと、決まってこう声をかけていました。

「携帯と時計を、車にしまおう。そして、明日の朝まで時間と仕事を忘れよう」

携帯と時計が手元にある状態では、無意識に時刻を確認してしまい、いつまで経っても仕事を忘れることなどできないからです。

みんなで協力してテントを立て、時間の感覚が消えた状態で、キンキンに冷えたビールの最初の一口を飲むと、心から日常から切り離される感覚があったものです。仕事の続きが頭を離れ、手足の先からスーッと何かが抜けていく、あの解放感を今もはっきり覚えています。

当時の携帯電話は通話が中心で、そもそも持たないと決めてしまえば、それだけで連絡が来ない環境に身を置くことができました。時計をしまうのも同じで、時刻を意識しなければ、日が落ちてから焚き火を囲む時間の長さも、朝の冷えた空気の中で湯が沸くまでの時間も、自然と体の感覚に委ねられていきました。効率とは無縁の時間の使い方に、休息の芯があったように思います。

加えて、当時のキャンプ場は山あいや谷筋にあることが多く、そもそも携帯電話の電波が届きにくい地域も少なくありませんでした。自分の意志で「しまう」と決めなくても、山に入ること自体が、結果的に仕事から切り離される状況を作っていたのです。

今振り返ると、あの頃のキャンプは、意志と環境の両方の理由で、仕事とつながらない場所へ行くという意味をほぼ自動的に伴っていました。ところが2026年の現在、この環境側の前提が変わりつつあります。この違いを起点にして、現代のデジタルデトックスを定義し直す必要があります。

2026年、キャンプ場でも「圏外」がなくなりつつある

議論の前提として押さえておきたいのが、通信環境の変化です。国内キャリアからは、対象のスマートフォンで衛星と直接通信し、携帯電話網のエリア外でもメッセージ送受信などが可能になるサービスが順次案内されています。山間部の谷筋、海沿いの陰、林道の奥といった、これまでの携帯電話網では圏外だった場所でも、条件が合えば連絡が届く時代に入りつつあります。

これは災害時の連絡手段や、単独行動時の安全確保としては歓迎すべき進化です。ソロキャンプや家族連れのアウトドアで、位置情報を家族に伝えられる、救助要請ができるという意味は小さくありません。しかし裏を返せば、山奥に行けば自動的に仕事から離れられるという前提が、少しずつ崩れているということでもあります。

つまり、これからのデジタルデトックスは、電波の届かない場所を探すことではなく、電波が届く場所で、あえてスマートフォンの画面を見ないと決めることに移行しているのです。物理的な圏外はもう贅沢ではなく、意志的な圏外こそが、現代の休息の贅沢になりつつあるといってよいでしょう。この主語の切り替えが、本稿の出発点です。

常時接続に疲れているのは、あなただけではない

常時接続に疲れているのは、あなただけではない

休日なのにスマートフォンを見てしまうという感覚は、個人の意志の弱さではなく、構造の問題として整理できます。総務省情報通信政策研究所が2025年6月に公表した『令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』を見ると、平日・休日を問わずインターネットの平均利用時間はテレビ視聴を上回る水準で推移しており、スマートフォンを中心とした常時接続がすでに生活の標準になっていることがわかります。

さらに、日本能率協会総合研究所が2025年に公表した『健康ニーズ基本調査2025(番外編)』では、デジタル機器利用による不調を自覚している人がおよそ8割にのぼり、眼精疲労や姿勢の悪化、集中力の低下などが広く共有されている実態が示されています。

中小企業の経営者や管理職に至っては、業務連絡・意思決定・情報収集のすべてが手元の端末に集約されており、休日でも通知が入り続けます。経営者が見ておかないと現場が止まるという感覚があるからこそ、休みでも指が画面に伸びるのは自然な反応です。

とはいえ、常時接続が判断の質を上げているかというと、答えはそう明快ではありません。連絡を確認するたびに脳は文脈を切り替え、そのつど集中力が消費されます。一週間続いた思考の疲労を、週末の数十分の通知確認で回復から遠ざけているのだとしたら、経営者にとって最大の資源である判断力を静かにすり減らしていることになります。

出典・参照:

キャンプが週末のリセット装置になる理由

キャンプが週末のリセット装置になる理由
編集部による撮影

ここで話をキャンプに戻します。キャンプが現代のリセット装置として機能しやすいのは、そこにある時間の質が、都市生活と真逆だからです。日本オートキャンプ協会の『オートキャンプ白書2024』によれば、キャンプはコロナ禍のブーム後も減少に転じておらず、参加者1人あたりの年間キャンプ回数は5.5回で過去最多水準となり、レジャーとして日常のなかに定着してきました。キャンプは、娯楽の一時的な流行ではなく、生活のなかに戻る休息の場になりつつあるのでしょう。

キャンプ場では、湯が沸くまで待つ時間、火が育つまで見守る時間、日が落ちて暗くなるまで何もしない時間が、当たり前のように流れます。この「待つ」「ぼんやりする」「何もしない」という三つの時間は、効率化を最上位に置く平日の職場では真っ先に削られる要素です。経営者や管理職が失いがちなのは、まさにこの空白の時間で、そこにこそ次の判断力を回復する余白があります。

  • パチパチと音を立てる焚き火の炎
  • 圧倒的な夜の暗さ
  • 川のせせらぎ音
  • 風の音
  • 虫の声
  • 朝の冷えた空気

これらはどれも通知音とは無縁の情報です。何かを解決するための刺激ではなく、何もしなくていいことを許してくれる背景となってくれるでしょう。ここで頭を切り替える体験を1泊でも積むと、翌週の月曜朝の入り方が明らかに変わってきます。

キャンプでなくてもよい、ただし条件がある

念のため補足すれば、休日のリセットはキャンプでなくても構いません。近所の川辺で半日過ごすでも、朝5時に散歩に出るでも、公園のベンチでコーヒーを飲むだけでも、目的や成果は同じです。

ただし条件があります。それは、その時間帯には仕事の通知を見ないと決めることです。場所を変えても通知を確認し続けるなら、頭は職場から離れません。ここが本記事でもっとも伝えたい点です。

出典・参照:

町田 英伸

執筆者

DXportal編集長

町田 英伸

自営での店舗運営を含め26年間の飲食業界にてマネージャー職を歴任後、Webライターとして独立。現在はIT系を中心に各種メディアで執筆の傍ら、飲食店のDX導入に関してのアドバイザーとしても活動中。『DXportal®』では、編集長としてすべての記事の企画、及び執筆管理を担当。特に店舗型ビジネスのデジタル変革に関しての取り組みを得意とする。「50s.YOKOHAMA」所属。