ダークホース|中国ロボティクス勢と日本のロボット企業
正式ノミネート外では、中国勢と日本勢の2つを、ダークホースとして取り上げます。一方は量産力で人型ロボットの出荷台数の大半を押さえる中国勢、もう一方は産業用ロボットの制御技術と製造ノウハウを持つ日本勢です。
中国ロボティクス勢|量産力という競争力
中国勢は、世界最大級の製造業基盤、巨大な産業用ロボット市場、強いサプライチェーン、大量生産能力、巨大な国内需要を背景に、2026年は人型ロボットの量産元年になりつつあります。
市場調査会社TrendForceによると、中国の人型ロボット出荷台数は2026年に前年比94%増加する見通しで、UnitreeとAgiBotの2社だけで出荷の8割近くを占めるとされています。2026年上半期だけで中国の出荷台数は4万台を超え、これは世界全体の97%に相当します。中国の年間出荷台数は10万台を超える見通しとする報道もあります。
Unitreeは、2026年の出荷を最大2万台と見込んでいます。これは、およそ5500台であった2025年の実績から考えても大幅な引き上げです。上海証券取引所STARマーケットへの上場も承認され、2026年8月の新規株式公開では約9億ドルを調達したと報じられました。UBTECHは、産業用ヒューマノイドの生産能力を2026年に年間5000台、2027年に1万台へ引き上げる計画を示しています。
フィジカルAIの覇権では、AIモデル性能以上に「大量に安く作れること」が強さになるかもしれない。そう考えると、中国企業を「欧米技術の模倣」と片づけることはできないのではないでしょうか。
出典・参照:
- China’s Humanoid Robot Output to Surge 94% in 2026; Unitree and AgiBot to Capture Nearly 80% Market Share/TrendForce
- China Humanoid Makers Hold 97% of Global Shipments, Report Says/Bloomberg
- China’s Unitree Aims to Ship 20,000 Humanoid Robots in 2026/eWeek
- Unitree & UBTECH: 2026 Breakthroughs of Chinese Humanoid Robots in Real-World Commercialization/36Kr
日本のロボット企業|FANUC・安川電機
産業用ロボットの世界最大級の設置台数を持つFANUCは、ヒューマノイド製品を発表していません。信頼性・平均故障間隔・総保有コストを重視する姿勢を貫き、固定アーム型の大量生産用ロボットに強みを持ちながら、ヒューマノイドの動向を注視する立場を取っています。
一方、安川電機は、AI活用型の産業用ロボット「MOTOMAN NEXT」を展開。NVIDIA製GPUを標準搭載し、ランダムなばら積みからのピッキングや、多品種少量の柔軟な物体操作といった、従来は人手に頼らざるを得なかった作業への対応を進めています。
さらに、2026年には富士通が、FANUC・安川電機・川崎重工業と共同で、NVIDIAのオープンなフィジカルAI技術を組み込んだ協調制御プラットフォームの検討を始めたことも発表されました。
産業用ロボットで世界をリードしてきた日本は、AIロボティクス時代でも覇権候補になれるのでしょうか。「日本はロボット大国だから強い」という過去のイメージだけで結論づけるのは早計です。むしろ、従来の制御技術・製造ノウハウへAIをどこまで融合できるかが、今後の評価を分けることになります。
出典・参照:
まとめ:現実世界の覇権を分ける、商用実績・量産力・開発基盤
子どもの頃に夢見たロボット社会は、もう一部が現実になっています。ロボタクシーは週40万〜50万回規模の商用サービスとして走り、配送ドローンは累計200万件を超える荷物を運ぶ。ヒューマノイドは自動車工場で3万台規模の生産を支えました。それでは、この現実世界の覇権を握るのは誰なのでしょう。本記事では、その問いに向けて候補を整理してきました。
正式ノミネート6社は、それぞれ異なる強みで覇権に近づいています。一方でダークホースの中国勢は、量産力そのものを武器に、2026年上半期の人型ロボット出荷で世界の97%を占めました。同じくダークホースの日本勢には、完成品としてのヒューマノイドではなく、従来の制御技術・製造ノウハウという足場から評価すべき勝ち筋が残されています。
フィジカルAIの実用化は、人間の仕事の未来とも無縁ではありません。DXportal®では以前、tsam Inc.代表の池森裕毅氏を取材し、リアルの仕事は10年でヒューマノイドに置き換わる可能性について語っていただきました。当時の予測がどこまで現実味を帯びてきたのか、あらためて読み返してみてください。
人類が子どもの頃に夢見た「ロボットが働く未来」は、もう目の前にあります。AIが身体を持った時代、その現実世界の覇権を握るのはどこなのでしょうか。
次回、シリーズ第8回では、ロボタクシーやデータセンター、ヒューマノイドの工場を動かす電力そのものに目を向け、エネルギー・電力インフラ部門を取り上げます。AI時代の電力を握る企業はどこなのかを考察します。
フィジカルAI部門 ノミネート一覧
| 企業・組織 | 区分 | ひとこと |
|---|---|---|
| Tesla | 正式ノミネート | Cybercabの生産開始とOptimusの量産準備、自動車データを人型ロボットへ横展開できるかが焦点 |
| Waymo | 正式ノミネート | 週40万〜50万回規模の商用ロボタクシーを運行、「運転」という仕事の完全自動化を先行実現 |
| Figure AI | 正式ノミネート | BMW工場でFigure 02が3万台超の生産を支援、後継Figure 03が2026年に稼働開始 |
| Boston Dynamics | 正式ノミネート | 新型AtlasをHyundai・Google DeepMindへ出荷開始、ブランド力を商用実績へ転換できるかが課題 |
| Agility Robotics | 正式ノミネート | GXOでDigitが10万トート搬送を達成、人間そっくりでない設計思想が特徴 |
| NVIDIA | 正式ノミネート | Isaac GR00Tでオープンなヒューマノイド参考設計を提供、フィジカルAI開発基盤を狙う |
| Unitree/UBTECH(中国勢) | ダークホース | 2026年上半期の中国出荷が世界の97%を占め、量産力そのものが競争力に |
| FANUC/安川電機(日本勢) | ダークホース | ヒューマノイドでなく従来の制御技術・製造ノウハウへのAI融合で勝ち筋を探る |
執筆者
DXportal®運営チーム
DXportal®編集部
DXportal®の企画・運営を担当。デジタルトランスフォーメーション(DX)について企業経営者・DX推進担当の方々が読みたくなるような記事を日々更新中です。掲載希望の方は遠慮なくお問い合わせください。掲載希望・その他お問い合わせも随時受付中。
