【アパレルDX最前線/前編】サステナブルな4つの課題と加速するDX推進施策

【アパレルDX最前線/前編】サステナブルな4つの課題と加速するDX推進施策

新型コロナウイルス感染症と物流コストの増加を受けて、現在、アパレル産業は厳しい状況におかれています。

それに加えて、業界が抱えるサステナブルに関する課題があり事態は深刻です。

その一方で、DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)によるサプライチェーンの変革などにより、アパレル産業も徐々に変わり始めています。

今回は前後編に分けて、現在のアパレル産業を取り巻くサステナブルな4つの課題(前編)と、それに立ち向かう最新のDX推進施策(後編)をご紹介します。

直面するサステナブルに関する課題に対して、DX推進がどのような解決策をもたらすのかに注目してみてください。

アパレル産業が抱えるサステナブルに関する4つの課題

アパレル産業が抱えるサステナブルに関する4つの課題

アパレル産業が抱える課題は、具体的に以下4つが挙げられます。

  1. 大量生産・廃棄による環境問題
  2. 低価格生産による人権問題
  3. 物流コストの増加問題
  4. 店舗スタッフの働く環境の問題

大量生産・廃棄による環境問題

2021年4月に環境省が発表した資料(上記)によると、増減はあるものの全体の傾向として、1990年代から2019年にかけて国内アパレルにおける衣服1枚あたりの価格が下がった一方で、供給量は増加しています。

この衣料品価格の下落と供給量の増加は、世界的に大量生産・販売することにより、トレンドを取り入れた衣類を低価格で販売するファストファッションが台頭し、価格競争の激化と過剰供給を引き起こした結果だと考えられます。

質も良く、トレンドを取り入れたアイテムが気軽に買える価格で販売されていれば、つい実際に必要な分以上に購入してしまう人が増えるのは当然のことでしょう。

ファストファッションの台頭により、次々と発売され続ける新商品が消費者の購買意欲をあおり、極端に短い消費サイクルを生み出しました

そして、結果的に、「着用しない服が増える」など多くのムダの発生に繋がってしまったのです。

実際に先述の環境省の資料では、衣服を手放す枚数よりも購入枚数のほうが多く、年間1人あたり25枚もの「着用されない服」があることが明らかになっています。

アパレル産業のビジネスモデルは、生産、輸送、廃棄に至るまで少なからず環境に影響を与えます。

必然的に、大量生産・大量廃棄が行われれば、その分環境に与える負荷も大きくなるでしょう。

環境への負荷を考えれば、必要な量を大幅に上回る衣料品を消費する、現在の衣服消費・利用状況は看過できないものだと言えます。

サステナブルなアパレル産業になるためには、ムダな消費を前提としたファストファッションを主流とするビジネスモデルから脱却し、また環境に配慮したサプライチェーンを構築することが重要なのです。

低価格生産による人権問題

低価格生産による人権問題

先進国のアパレル業界を中心に、衣服の生産に関わる人件費を削減するためいわゆる開発途上国に工場を建設し、大量生産を行ってきました。

しかし、近年ではこの開発途上国の工場などで生産に携わる人々が極端に安い人件費で酷使されている事例がいくつも明らかになり、世界的に大きな問題となっています。

この問題は、一義的には工場がある国の労働問題ですが、グローバルに活躍する企業が劣悪な労働条件でその国の人を雇用している実態が明らかになり、国際的な人権問題へと発展しました。

もちろん、これらはSDGsの観点から考えても大きな問題であり、注目を集めています。

中でも、最も大きな注目を集めているのが、新疆ウイグル自治区における強制労働問題です。

世界各国の名だたるアパレル企業が低価格で大量生産をするために、中国に衣料品の生産を委託してきたことで、中国国内での生産供給が追いつかなくなったことが影響しています。

日本を含め、先進国で暮らす多くの人々は、中国で大量生産される安価な商品の恩恵を享受してきました。

しかし、中国が低価格で衣料品の生産できた背景には、ウイグル自治区での「強制労働」があるのではないかとの疑いが報じられると、多くの国が声を上げ始めただけでなく、問題の解決のために具体的な施策を打ち出す国も現れました。

工場で生産された衣類だけでなく、綿などの原材料の生産においても人権を無視した強制労働が行われているのではないかという疑惑を受けて、例えば、米国では2021年末にウイグル産品の輸出を原則禁止する「ウイグル強制労働防止法案」が成立し、国連でも議論されるなど世界的な人権問題へと発展したということがありました。

企業がサステナブルに成長するためには、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業管理)の観点が不可欠です。

単に環境やガバナンスに配慮するだけではなく、人権や社会性も重要なポイントであることは間違いありません。

製品の生産過程における人権問題が表面化した場合、仮に国家規模の輸出入禁止の措置が取られなかったとしても、人権問題に関心のある顧客離れを引き起こす可能性もあります。

アパレル産業は人道的にも、またビジネスの観点からも、人権問題は必ず向き合わなければならないテーマだと言えるでしょう。

物流コストの増加問題

物流コストの増加の原因としては、新型コロナウイルスの影響の他にも、以下のような問題が挙げられます。

  • ウクライナ情勢による原油価格高騰
  • スエズ運河でのコンテナ座礁事故によるコンテナ不足
  • 実店舗からECへの販路拡大によるEC物流の増大

特に、ロシアのウクライナ侵攻に代表されるような、アパレル産業に留まらず世界的に大きな影響を及ぼす出来事が、想定を大幅に超える輸送費のコスト高騰を引き起こしています。

そもそもコロナ禍の影響も含め多くの企業がECサイトへと販路を広げたことにより、EC物流が急激に増加しましたが、需要の増加に物流業界のリソースが追いついていないのです。

ただでさえ衣料品の物流、とりわけ高級ブランドの衣服などは、商品の特性上、シワや型崩れが起こらないようにする必要があり、商品サイズよりもかなり大きな梱包が必要です。

そのため、段ボールに詰め込めずに積層率が悪くなったり、サイズやカラーの多品目展開の影響で保管量がかさんだりと、重量と比較してかなりかさばるという商品の性質が原因で、物流コストの影響を大きく受けてしまいます。

更には、いわゆる「2024年問題(2024年4月以降、時間外労働の上限規制がトラックドライバーにも適用)」が物流コストに追い打ちをかける可能性があります。

これ自体は働き方改革の一環として歓迎すべきことですが、ドライバーの人件費が増加すると予想されるため、更に物流コストは増加するでしょう。

その一方で、消費者の趣向が多様化する現代においては、それぞれのニーズに合わせた多品目の提供が求められています。

しかし、多様な商品をサステナブルに提供していくことを前提とすると、物流コストの増大は今後もアパレル産業の課題として大きくのしかかるはずです。

店舗スタッフの働く環境の問題

店舗スタッフの働く環境の問題

人材派遣や紹介を中心に総合人材サービスを展開するアデコ株式会社が、2019年8月にアパレル販売員として働く日本全国の20代・30代の男女400人を対象にした調査THE ADECCO GROUP/アパレル販売員を対象にした意識調査)によると、実店舗で働くアパレル販売員の多くは「ファッションと接客が好き」という理由で仕事をしており、仕事にやりがいを見出している割合が他業種と比較しても多いことがわかります。

その一方で、「給与が安い」「立ち仕事が多い/時間が長い」「有給が取りにくい」といった悩みを抱えている実態が見えてきます。

また、働き方自体には満足しているものの、人間関係やキャリアの将来性に不満を持っているという現状もあるようです。

更に、新型コロナウイルスの影響により、元々抱えていたアパレル業界の労働環境の課題に加えて、新たな問題が生じています。

  • 消費者マインド低下による売上ダウン
  • 小まめな消毒などのオペレーション対応
  • 店舗在庫からEC在庫への移動対応

近年では、前述のようにECサイト需要が急速に増加するなど、消費者の動向が大きく変化したことで実店舗の売上は大きく減少しています。

それにもかかわらず、新型コロナウイルスの影響で、現場の業務負荷は増大する一方であり、アパレル販売員の業務環境は過酷さを増しています。

先のアデコ株式会社での調査でも、回答したアパレル販売員の75.5%が「今後もアパレル販売員を続けたい」と答えていながらも、「続けたい」と回答した内の約8割が、これからもアパレル販売員を続けていくためには、給与や休日を含めたいくつかの条件が整うことが必要だと考えています。

つまり、現在の労働環境のまま仕事を続けていくことは困難であると感じているのです。

アパレル業界が今後もサステナブルな産業として成立していくためには、まず足元にある店舗スタッフの労働環境改善など、多くの課題を解決していく必要があるでしょう。

まとめ

今回は、アパレル産業が抱えるサステナブルな4つの課題を解説しました。

次回は、それらの課題を解決する可能性のあるDX推進施策について、実際に取り組む企業事例とともにご紹介します。

アパレル業界に限らず、サステナブルな課題に取り組む業種の方々はどうぞご期待下さい。

>>後編へつづく

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DXportal®編集部

DXportal®の企画・運営を担当。デジタルトランスフォーメーション(DX)について企業経営者・DX推進担当の方々が読みたくなるような記事を日々更新中です。掲載希望の方は遠慮なくお問い合わせください。掲載希望・その他お問い合わせも随時受付中。

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