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2025年現在、中小企業においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が不可欠になっています。
経済産業省は2018年9月に最初の「DXレポート」を発表し、日本企業がDXを推進しなければ、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らしていました。
その「2025年の崖」と呼ばれるターニングポイントを迎えた今の状況を見てみると、大企業を中心に日本企業のDXは大幅な進化をみせています。
一方で、中小企業や小規模事業者においては、まだまだ「自社には関係ない」「半端なデジタル化はかえって現場が混乱する」という考えが根強くあり、DXが進む中でも傍観を続けている場合も少なくありません。
しかし、DX推進は、企業規模に関わらず、あらゆる企業にとって生産性向上やコスト削減、競争力強化に繋がる重要な取り組みです。中小企業にとっても無関係でないどころか、今後の持続可能なビジネスを考える上では避けては通れないものなのです。
とはいえ、DX推進は決して簡単な道のりではありません。闇雲に取り組んでしまうと確かに「現場が混乱する」という事態に陥ってしまう可能性があります。DXの成功の鍵を握るのは、 現場社員の積極的な参加と、彼らとの強固な協働体制の構築です。
この記事では、DX推進成功への鍵を握る現場社員の役割と、その協働体制の構築方法について解説します。未だDXに取り組まれていない企業様は、特にご注目ください。
DX推進における現場社員の役割

DX推進は、企業の成長と変革を促す上で不可欠な取り組みです。
DX成功のためには、まずは経営層が強力なリーダーシップを発揮する必要があります。経営層は、DXのビジョンや目標を明確に示すこと、必要な資源を投入することを決定する役割があります。
また、現場社員がDXに積極的に参加できるような環境を整えることも、経営層の重要な役割です。
一方で、DXの成功は決してトップダウンだけで達成できるものではありません。経営層がどれだけ強固な意思でDXを進めようと頑張っても、現場社員の積極的な参加と貢献がなければ、DX成功は不可能です。
以下に、DX推進における現場社員の役割について詳しく解説します。
業務知識の提供
現場社員は、日々の業務の中で、経営層が気が付いていない様々な課題や改善点を発見しています。彼らの持つ業務知識は、DX推進において最適な解決策を見出す上で不可欠なものでしょう。
例えば、ある製造業の現場では、製品の品質管理に時間がかかるという課題がありました。しかし、いくら経営層がデータや業務フローを眺めていても、その原因を特定することはできませんでした。
そんな中、ある現場社員が、その原因がデータの収集方法にあることを突き止め、 新しいデータ収集システムを提案したのです。この提案に基づいてシステムを導入した結果、品質管理の時間が大幅に短縮されたという事例があります。
このように、現場社員は業務に精通しているからこそ、 課題の本質を見抜き、具体的な解決策を提案することができるのです。
現場の課題発見と改善提案
DX推進の成功には、現場の課題を深く理解し、その解決策を具体的に提案できる社員の存在が不可欠です。経営層は企業の全体像を把握していますが、日々の業務における非効率性や、顧客が抱える具体的な不満は、現場で直接業務に携わる社員の方がより深く認識しているでしょう。
例えば、店舗とオンラインストアの両方で商品を販売するアパレルメーカーの事例です。このメーカーでは、従来、各店舗が個別に在庫管理を行っていたため、店舗間の在庫偏りやオンラインストアでの欠品が頻発し、販売機会の損失につながっていました。経営層が売上低下の原因を漠然としか捉えられない中で、この課題を最初に認識したのは、日々の業務で不便さを感じていた現場の販売員たちです。
彼らは単に課題を指摘するだけでなく、その解決策として「在庫管理システム」の導入を提案しました。これは、各商品のバーコードを読み取ることで、在庫情報をリアルタイムで一元管理できるシステムです。この提案が採用された結果、店舗間の在庫移動がスムーズになり、販売機会の拡大や顧客満足度の向上に繋がりました。
また、物流業界の倉庫におけるピッキング作業の事例も同様です。作業時間の非効率性が課題となっていた際、現場社員は「最適なピッキングルートを提示するシステム」を提案しました。この改善提案により、作業時間が大幅に短縮され、業務効率化が実現できたのです。
現場社員は課題の発見者であると同時に、その解決策を生み出すアイデアマンでもあるのです。彼らの声に耳を傾け、積極的に改善提案を促すことが、DX推進の鍵を握ると言えるでしょう。
変革への抵抗の軽減
DX推進は、最終的には現場社員を含めて、企業全体に裨益するものです。一方で、その取り組みの中では業務プロセスや働き方など、今まで慣れ親しんできたものを変える必要がある場面も出てきます。そのため、現場社員から抵抗を受けることも少なくありません。
しかし、現場社員がDX推進の目的やメリットを理解して、主体的に参加する環境を作ることができれば、 抵抗を軽減し、スムーズな導入を促進することができます。
そのためには、DX推進の初期段階から現場社員を積極的に巻き込み、 彼らの意見を聞き、共に考えることが重要です。
また、DX推進のメリットや成功事例を共有することも大切です。
現場社員との協働体制構築の5ステップ

DX推進を成功させるためには、現場社員との強固な協働体制が不可欠です。前章で述べたように、現場社員が協働的であれば、様々な有用な改革が行えます。
一方で、DX推進に関して現場社員の理解が得られていない場合は、今のシステムややり方を変えることを恐れて改善に消極的なことも少なくありません。
では、どうすれば現場社員と一緒にDXに取り組む環境を作ることできるでしょうか。ここでは、現場社員との強固な協働体制を構築するための具体的な5ステップとそのポイントについて解説します。
ステップ1:目的の共有
経営層がDX推進の目的と目標を明確にし、現場社員に共有することが最初のステップです。現場社員がDX推進の必要性やメリットを理解することで、主体的な参加を促すことができます。
- 経営層のコミットメント:DX推進は経営戦略の一環であることを明確に示す
- 分かりやすい言葉で説明:専門用語を避け、現場社員に理解できる言葉で説明する
- 対話型の説明会:一方的な説明ではなく、質疑応答や意見交換の時間を設ける
- 個別の説明:チームや部署ごとにDX推進の目的や目標を具体的に説明する
ステップ2:チームの編成
現場社員を中心としたチームを作ります。そして、チームメンバーの役割分担を明確にし、責任感を持たせることで、効率的な活動を促進することができます。
- 多様な人材:特定の部署の社員だけでなく、様々な部門の現場社員、IT部門や企画部門など多様な立場のメンバーを集める
- 役割分担の明確化:各メンバーの役割と責任範囲を明確にする
- リーダーシップ:チームをまとめるリーダーを任命する
- 権限移譲:チームに一定の権限を与え、自律的な活動を促す
ステップ3:コミュニケーションの促進
定期的な会議やワークショップを開催し、現場社員とのコミュニケーションを密にすることが重要です。また、意見交換や情報共有のためのツールを導入することも有効です。
- オープンなコミュニケーション:誰でも意見やアイデアを自由に発言できる雰囲気を作る
- 多様なコミュニケーション手段:会議、メール、チャット、社内SNSなど様々な手段を活用する
- 定期的な情報共有:DX推進の進捗状況や課題を定期的に共有する
- フィードバックの収集:現場社員からのフィードバックを積極的に収集し、改善に繋げる
ステップ4:現場への権限移譲
現場社員に改善提案や意思決定の権限を与えることで、現場の状況に合わせた柔軟な対応が可能になります。また、現場社員の主体性を高め、モチベーション向上に繋がります。
- 段階的な権限移譲:現場社員の習熟度に合わせて、徐々に権限を移譲する
- サポート体制:現場社員が安心して意思決定できるようなサポート体制を構築する
- 失敗からの学習:失敗を許容する文化を作り、そこから学ぶことを奨励する
- 評価制度:現場社員の貢献を適切に評価する制度を設ける
ステップ5:成功事例の共有
DX推進の成功事例を共有することで、現場社員のモチベーションを高めることができます。また、成功体験を積み重ねることで、さらなる改善に繋がるでしょう。
- 社内外の事例:自社だけでなく、他社の成功事例も紹介する
- 具体的な成果:成功事例だけでなく、具体的な成果や効果を示す
- 共有会の開催:成功事例を共有する機会を設ける
- 表彰制度:DX推進に貢献した社員を表彰する制度を設ける
これらのステップを踏むことで、現場社員との協働体制を構築し、DX推進を成功に導くことができるでしょう。
まとめ:現場社員との協働体制構築こそがDX推進成功の鍵
DX推進を成功させるためには、現場社員の積極的な参加と、彼らとの強固な協働体制の構築が不可欠です。本記事では、そのための具体的なステップとポイントについて解説しました。
まず、DX推進の目的と目標を明確にし、現場社員に共有することが重要です。現場社員がDX推進の必要性やメリットを理解することで、主体的な参加を促すことができるでしょう。
次に、現場社員を中心としたチームを作り、各メンバーの役割分担を明確にすることで、効率的な活動を促進することができます。また、定期的な会議やワークショップを通じて、現場社員とのコミュニケーションを密にすることも必要です。
さらに、現場社員に改善提案や意思決定の権限を与えることで、現場の状況に合わせた柔軟な対応が可能になります。現場社員の主体性を高め、モチベーション向上にも繋げましょう。
最後に、DX推進の成功事例を共有することで、現場社員のモチベーションを高めることができます。成功体験を積み重ねることが、さらなる改善に繋がるのです。
本記事で紹介したステップを参考に、ぜひ貴社においても現場社員との協働体制を構築し、DX推進を成功に導いてください。

執筆者
株式会社MU 代表取締役社長
山田 元樹
社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援をエンジニア + 経営視点で行う。
最近の趣味は音楽観賞と、ビジネスモデルの研究。
2021年1月より経営診断軍師システムをローンチ