経産省レポートから読み取る2025年の崖の真相とその先にあるものとは?

経産省レポートから読み取る2025年の崖の真相とその先にあるものとは?

これからDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組もうと思っている企業のIT担当者は「2025年の崖」という言葉をよく耳にしているかもしれません。

しかし、その本質はどれだけ理解していますか?

この記事では、経産省が発出したDXレポート、DXレポート2から読み取る、2025年の崖の真相と、その先にあるものを解説します。

ますます激しくなる情報(デジタル化)社会の競争に負けないよう、2025年の崖について知見を深め、DX(デジタルトランスフォーメーション)への第一歩を踏み出してください。

2025年の崖の原因

2025年の崖の原因

2025年の崖の原因はさまざまですが、大きく分けると3つに分類されます。

  • 煩雑化するレガシーシステム
  • 経営層と社員の考えのギャップ
  • ベンダーに任せきりのシステム開発

自分たちも同じような状況になっていないか、各項目をチェックしながら読み進めてください。

煩雑化するレガシーシステム

煩雑化するレガシーシステム

まず懸念されるのは、既に導入されているシステム(レガシーシステム)の運用管理です。

企業では

  • 基幹システム
  • 会計システム
  • 営業ツール

などのプラットフォームを使い、さまざまなデータを活用しています。

しかし旧態依然としたレガシーシステムでは、これらが部門別に分かれており、横のつながりがありません

また管理方法も部門ごとに違うため、有している膨大なデータを活用できていないのが現状です。

つまり「このデータが欲しい」と思ったときに、即座にアクセスできないなどの弊害が発生しています。

さらに、システムのカスタマイズを何度も重ねることで、誰も内部構造がわからないブラックボックスと化しているのです。

こうしたレガシーシステムを再構築しないことには、新たなDX(デジタルトランスフォーメーション)の波に乗ることは難しいでしょう。

社内スタッフの考えのギャップ

2025年の崖の原因の一つに、社内スタッフの考えにギャップがあることがあげられます。

世間でDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれる中で、担当者はDXを推進したいと考えています。

しかし一方で、一般社員には

  • 「既存の仕事がなくなる」
  • 「わかってはいるが、現状の業務を進めながら取り組むのは難しい」

こういった思いがあるのも事実です。

そのため、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるよう指示を受けても、上辺だけのDXとなっている企業がたくさんあります。

本質的なDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためには、それを進めることで受けられるメリットを知り、各々のマインドを変えなければいけません。

ベンダーに任せきりのシステム開発

経産省のレポートでは、ユーザーとベンダーの関係性も2025年の崖の原因として取り上げられています。

システム改修の際にユーザーが十分な要件定義をせず、ベンダーに任せきりにしてしまうことで、大きなシステム刷新が困難になるからです。

ユーザーはブラックボックスと化したシステムのことを十分に理解しておらず、ベンダーが要件定義を行うケースが多いのです。

結果としてユーザーは出来上がりに満足できず、ベンダーは時代に合ったシステム改修ができない、という負の連鎖に陥っています。

またベンダー側の評価軸は、収益化ではなくシステム開発に置かれているケースが多くあります。

システムの開発や改修をしただけで終わりになってしまうため、本当の意味でのDX(デジタルトランスフォーメーション)とはなり得ないのです。

2025年の崖の先にあるもの

2025年の崖の先にあるもの

2025年の崖の先には、既存システムの崩壊やIT人材の引退といった問題が待ち受けています。

このまま原因を放置しておくとどうなるのか、経産省のレポートをもとに起こることを4つの項目にまとめました。

1.既存システムの維持が困難

複雑化したレガシーシステムといえど、データは蓄積し続けており、現状ではかろうじて使える状態を保っています。

しかし2025年には、ハードウェアやソフトウェアの性能・容量不足により、システム維持が困難になるといわれています。

今は使えるので問題ない、とそのままにしていたシステムに限界が来たときのリスクは計り知れません

さらに、煩雑化したレガシーシステムの運用と保守にかかる金額は膨大で、国内のIT領域に充てられる予算のおよそ8割は運用・保守に使われています。

今後もシステムの利用が増えることを鑑みると、運用保守にかける予算はますます増えていくと予想されているのです。

このようにレガシーシステムを維持しつづけるためには莫大な予算がかかり、かつシステム自体が限界を迎えるとなると、到底新たなビジネスモデルを生み出すことは難しいといわざるを得ません。

2.優秀なIT人材の引退

優秀な IT人材の引退により、スキルや知識が失われていくことも懸念されています。

2025年頃には、現在企業で利用されているシステムを開発した世代のエンジニアの多くが定年を迎えるからです。

システムの運用保守は属人的な部分が大きく、これを読めばわかるというドキュメントが作られていません。

仮にドキュメントがあったとしても、エンジニアがいる間は問題が起こりにくいため、その内容で別の人間が作業できるかどうかチェックする機会はあまりないのです。

有識者が引退する時期とハードウェアが限界を迎える時期が重複すると、残された人材でなんとか運用保守をしなければなりません。

それまでに知見を引継ぎ、DX(デジタルトランスフォーメーション)の波に乗れる準備を今からしておく必要があるのです。

3.サポート終了による大規模改修

3.サポート終了による大規模改修

2025年には、企業で利用しているソフトウェアやハードウェアのサポート終了時期がくることも大きな問題です。

それまで利用できていたシステムの機能自体が維持できなくなるため、蓄積された膨大なデータが失われる可能性があります。

さらにプラットフォームのサポートが終了すると、新しいシステムを再構築せざるを得ません。

複雑化・煩雑化したシステムを大規模改修するには、莫大なコストと時間がかかります

そうなると、当然通常業務に支障をきたすでしょう。

サポート終了と同時にサービスの品質低下や、企業が損失を被ることは容易に予想がつきます。

4.巻き起こる国内規模の経済損失

これまで紹介した3点

  • 既存システムの維持が困難
  • 優秀なIT人材の引退
  • サポート終了による大規模改修

が起こると、2025年から2030年までの間に国内規模で約12兆円の損失が出ると言われています。

システム刷新や人材育成を行わない限り、現在使われているプラットフォームは限界を迎え、いずれシステムダウンするときが来るでしょう。

今は使えるからという理由で、レガシーシステムを放置しておくことは極めて危険ということがよくわかります。

2025年の崖を防ぐために取り組むべきこと

2025年の崖を防ぐために取り組むべきこと

では、2025年の崖を防ぐためには何に取り組めば良いのでしょうか。

現在、経産省は対応策を含むガイドラインを策定しており、DX(デジタルトランスフォーメーション)レポートでその概要が公表されています。

この章では、ガイドラインの大まかな内容と企業が淘汰されないためのポイントをお伝えします。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の目的を明確化

まず必要なことはDX(デジタルトランスフォーメーション)の目的を明確化することです。

  • ベンダーにシステム改修を依頼する
  • プラットフォームを全社的に統一する
  • システム刷新のためのプロジェクトを立ち上げる

上記のような取り組みはあくまで表面上の対応策であり、大きなトラブルを避けるための応急処置でしかありません。

2025年の崖を防ぐことはもちろん大切ですが、それ以上に何を達成したいのか戦略を立てることが先決です。

  • ITの運用保守コスト削減
  • デジタライゼーションによる業務効率化
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)を使った新たなビジネスモデルの立ち上げ

このような成果物の創出を前提にして、会社自体がどうあるべきかを経営戦略に落とし込むのです。

目的を明確化すれば、自ずと2025年の崖を防ぐための行動に移せるはずです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)に対応する組織作り

2025年の崖を防ぐためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させる組織作りが欠かせません。

システムの開発に携わった人材の引退により、ITに長けたエンジニアはニーズが高まると考えられます。

したがってエンジニアなどの人材雇用や、社員のDX(デジタルトランスフォーメーション)教育に力を入れていくことが必要でしょう。

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトには経営層がとことん携わることが理想です。

経営層が関わることで、全社レベルで変革する必要があるという意識や、各事業部門に共通認識を持たせることが可能になるからです。

正しいプロセスに基づくPoCの実施

正しいプロセスに基づくPoCの実施

経産省はDX(デジタルトランスフォーメーション)レポート内で、繰り返しPoC(Proof of Concept=概念実証)の重要性について述べています。

正しいプロセスを理解していながらも、完璧に実施できている企業は多くないでしょう。

ポイントは以下の点です。

  • ユーザーが明確なビジョンをベンダーへ伝えている
  • 要件定義にはユーザーが介入する
  • 仮説→実行→検証→評価の流れをしっかりと打ち立てている
  • 度重なる仮説検証は迅速に行う
  • システム開発でなく、利益や価値の創出が評価軸になる

ベンダーへの任せきりや、時間がかかりすぎるシステム改修はDX(デジタルトランスフォーメーション)の足枷となります。

1つひとつのPoCにおいて、正しいプロセスを踏んでいるかチェックすることが2025年の崖を防ぐ対応策だといえるでしょう。

コロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は急務に

経産省のDX(デジタルトランスフォーメーション)レポートは、2020年12月末に第2版が公表され、コロナ禍でDXの推進が急務だと警鐘を鳴らしました。

この緊急事態の中で、テレワークやデジタライゼーションにすぐに対応できた企業がいる一方、その準備がほとんどできていなかった企業もあります。

これはDX(デジタルトランスフォーメーション)に対する考え方の違いであり、企業文化そのものです。

アフターコロナの中、ますます激化する社会変化に対応するためには、その根本から変えていかない限り、到底追いつけません。

各企業が危機管理意識を持って、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を加速させることは、今や最低条件ともいるのです。

まとめ

「2025年の崖」という言葉について詳しく知りたい人向けに、経産省が発出したDX(デジタルトランスフォーメーション)レポートの内容を解説しました。

まずは日々利用しているシステムや、人材面の課題を洗い出してみてください。

そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)の目的を明確にすることが、2025年の崖のリスクを抑える秘訣です。

2025年の崖はすぐそこまで迫ってきており、短期間で対応できるものではありません。

またコロナ禍により、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を加速させる必要性が明らかとなっています。

ますます競争が激化する、デジタル社会で勝ち抜いていくためにも、早急に問題の改善に着手し、DXの推進プロセスを進行させていってください。

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この記事の執筆者

株式会社MU 代表取締役社長

山田 元樹

社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援をエンジニア + 経営視点で行う。 最近の趣味は音楽観賞と、ビジネスモデルの研究。 2021年1月より経営診断軍師システムをローンチ

株式会社MU 代表取締役社長

山田 元樹

社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援をエンジニア + 経営視点で行う。 最近の趣味は音楽観賞と、ビジネスモデルの研究。 2021年1月より経営診断軍師システムをローンチ

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