【中小企業を変える経理DX①】なぜ経理部門のDXは遅れているのか?3つの課題

【中小企業を変える経理DX①】なぜ経理部門のDXは遅れているのか?3つの課題

「経理」は、DX(デジタルトランスフォーメーション/以下:DX)を推進する上で、思うように改革が進まない部門の代表です。

2022年1月にSansan株式会社が、経理業務に携わるビジネスパーソン1000名を対象に実施した「電子帳簿保存法施行後の実態調査」によると、請求書の電子保存法に対応している企業は全体で約3割、従業員100名以下の企業に絞ると約2割に過ぎないとの結果が明らかになりました。

一見すると、数字などのデータを扱う経理は、「DX推進により業務を効率化できる」という成功イメージが湧きやすく、多くの企業がDX化を進めたい部門のように思われます。それにもかかわらず、「経理部門のDX推進が遅れている」実態は、これ以外にも様々な調査結果から垣間見ることができ、多くの日本企業が抱える課題の1つであることは間違いありません。

言うまでもなく経理部門の役割は、会計情報を迅速に提供する「経営管理」を行うことであり、経営に必要な数値をもとに合理的に次の施策を判断する上で必要不可欠な部門です。

とは言っても、経理部門は直接売上を作り出す部門ではありません。それにもかかわらず、請求書や伝票、証票など膨大なデータの管理や捺印、データ入力などを行うには多くの人手が必要で、社内でも少なくない人的リソースを割かなければならない部門です。

そのため、健全な経営のために不可欠な部門であるにもかかわらず、企業によっては「非生産性なコストセンター」として認識されてしまうなど、なかなか業務の重要性を理解されない部門の代表とも言えます。

競争が激しい現代においては、「非生産的なコストセンターの経理部門」から脱却し、企業にとって「価値のある経理部門」へと変革することが「攻めのDX」の大きな一手となります。

そこで、DXPortal®では、経理部門が抱える課題とソリューション、更には具体的な推進方法までを【中小企業を変える経理DX】として、数回にわたって特集していきます。

第1回目となる今回は、経理業務の意味のない風習やDX推進を妨げる課題について解説します。

「攻めのDX」の一環として経理部門のDX推進を検討している企業経営者、ご担当者の方は、自社の状況と照らし合わせながらご一読ください。

経理部門のDX推進を妨げる3つの課題 

経理部門のDX推進を妨げる3つの課題 

そもそもなぜ経理部門でDXが進まないのでしょうか。当然ながら、DX推進を妨げる課題は企業ごとに異なりますが、多くの企業に共通する課題として、企業内の部署・部門における「既存のルール」がDX推進を邪魔をしているということが挙げられます。

特に専門性が高い経理部門では、詳細に定めたルールに基づいて日々の業務が行われているため、一度決めた「業務フローを変更するには労力が掛かる」などの理由で、なかなかDX推進に着手できないというケースが多いようです。

経理の役割に立ち返って考えれば、業務の無駄を徹底的に無くして、業務の効率化やコスト削減を率先して行うべき部門ですが、実際に対応できている企業は少ないのが現状でしょう。

経理部門のDX推進を妨げる既存のルールのうち、多くの企業が共通して抱えている課題に以下のようなものがあります。

紙文化

紙文化

世の中はデジタル化が進んでおり、2022年1月には改正電子帳簿保存法が施行されているにもかかわらず、未だに証憑のやり取りや保管を紙ベースで行っている企業は多くあります。

freee株式会社が、改正施行1か月前の2021年11月26日~27日に実施した「電子帳簿保存法改正とペーパーレスに関する調査」によると、ペーパーレス化を阻害する一番の要因は「職場の紙文化を変えるのが難しい」でした。

紙文化から脱却するのが難しい主な理由としては、以下の3つが考えられます。

  • 証憑の確認・保管は紙が良いという固定観念
  • 取引先との調整にかかる時間的なコスト
  • 従業員のITリテラシー不足

更に、企業会計のルールとして「継続性の原則」があることも、経理部門の改革が進まない要因の1つです。

企業会計原則(1949年旧大蔵省経済安定本部・企業会計制度対策調査会公表)では「企業会計は、その処理の原則及び手続きを毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない」と定められており、これまでこの原則を遵守してきた経験豊富な経理担当者であればあるほど、改革には後ろ向きになってしまうのです。

そもそも経理部員は職務上、大幅な改革に取り組むことを求められる機会は少なく、それよりもむしろ同じことを正確にやり続けることが最大の責務でした。そのため、原理原則を守ってきた経験豊富なマネジメント層は、会計原則を重んじるばかりに変革に歯止めをかけてしまう傾向があると考えられます。

しかし、頑なに紙文化を続ける企業と、DXを推進してペーパーレス化した企業とでは、コスト面だけを見ても大きな差が生まれています。

  • 印刷に掛かる時間と印刷費用
  • 請求書を封入する時間と輸送コスト
  • ファイリングの時間と倉庫への保管コスト
  • 紙業務に対応するための通勤時間と通勤費

経理部門はその特性上、企業全体のコストカットを最優先に考えなければならない立場です。しかし、直接的に売り上げに貢献するわけではない業務の性質により、他部門からは「コスト削減を主導する立場の経理部門こそが、非生産的なコストセンター」だと認識され、その重要性を理解されないような場合は少なくありません。

こうした部署・部門間のマウントの取り合いは、当然ながら、企業の成長にとって1分の利益もありません。しかし、紙文化にこだわって非効率的な悪しき習慣を続ける経理部門がコストセンター化しているというのは、残念ながら、あながち間違いでもない指摘です。もし経理部門が、最低限のコストカット策にすら貢献できないような状況が続けば、企業の未来を考える上で「お荷物」となってしまう事すら考えられるのです。

ハンコ文化

ハンコ文化

コロナ禍で急激に進んだリモートワーク。それにもかかわらず、ハンコ文化が根強く残っており、今でも押印のためだけに従業員が出社を余儀なくされている企業は多くあります。

ハンコ文化から脱却できない理由は、職務権限に基づく承認者の証しを紙面に印字させることが、経理に必要なガバナンスだという考えに囚われてしまっているからでしょう。

諸外国ではほとんどの場合において印鑑がなくてもビジネスが成り立っているにもかかわらず、日本だけが承認者本人を確認する方法としてハンコを利用している状況です。非合理的な慣習がなかなか変えられないところを見ると、世界に比べて日本企業の生産性が低いのも頷けます。

日本独特のハンコ文化が無くならない限り、以下の問題が発生し続けてしまいます。

  • 押印する時間、待機および根回しの時間の浪費
  • 紙文化の助長・ペーパーレス化の妨げ
  • 紙の紛失・劣化リスク

そもそも日本の法律上でも請求を口頭で行うことが認められており、印鑑の押印がない請求書を使用することも問題ないとされています。

契約書も電子帳簿保存法により、訂正削除ができないシステムのデータ保存であれば押印も収入印紙も必要ありません。つまり、ほとんどの場合において、法的に押印が求められているわけではないのです。

契約書を紙面で交わす場合にも、印刷、製本、封入、郵送、先方のハンコ待ちおよび返送待ちなど多くの時間が掛かってしまい、その都度、人的なリソースもかかります。

ハンコ文化を無くして、それまでのフローをデジタル化すれば金銭面のコストだけではなく、交渉から契約締結までのスピードが上がり、営業面の機会も向上するでしょう。

属人化

属人化

経理は専門的な知識が必要な部門です。更に、会計処理の方法等も企業によって異なる場合が多いことから属人化しやすい傾向があります。

専門性の高い従業員がいることで、短期的にはスムーズな経理処理が可能になるかもしれませんが、属人化しやすいといったリスクが付きまとうのです。

更に属人化すればするほど1人ひとりの従業員に対する負担が大きくなり、いつの間にか従業員ごとの独自のルールが作られて、他の人が代わる事の出来ない状態となってしまう事も少なくありません

属人化によるリスクは次の通りです。

  • 個人作業によるミスの発生、不正を誘発
  • 担当者が急遽欠員になった場合、ノウハウが継承されない
  • 業務のブラックボックス化

よくある事例として、業務の中でExcelを活用していた場合、独特な関数やマクロが組まれていて他者では対応出来ない領域が発生してしまうことがあります。

本来は業務をシェアする形で実施することが望ましいですが、ただでさえ専門性が求められる経理部門の特徴に日本的な文化である年功序列の考え方も入り混じっているため、容易にメスを入れられない状況になっています。

一度属人化してしまうと、業務の引き継ぎやDXを推進する際に余計な労力が掛かってしまい、会社にとって大きなリスクになるでしょう。

属人化を防ぐためには、業務の標準化および見える化の定期的なチェックが必要です。

>>価値ある経理部門になるためのDX推進

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この記事の執筆者

金融系DXライター

志藤たつみ

経理DXライター。経理歴15年。 プライム企業、中小企業、ベンチャー企業など、 様々な業種や規模での経験・知見を活かしたDXコンテンツを展開中。 「経理のキャリアを楽しく」がモットー。 趣味は近所の散歩とパン屋めぐり。

金融系DXライター

志藤たつみ

経理DXライター。経理歴15年。 プライム企業、中小企業、ベンチャー企業など、 様々な業種や規模での経験・知見を活かしたDXコンテンツを展開中。 「経理のキャリアを楽しく」がモットー。 趣味は近所の散歩とパン屋めぐり。

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