「保険EXPO 2026」AIが変える保険ビジネスの顧客価値と業務変革【イベント・レポート②】

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保険EXPO 2026

  • 開催日:2026年7月23日
  • 開催場所:大手町プレイス ホール&カンファレンス
  • 主催者:株式会社セミナーインフォ、株式会社グッドウェイ
「保険EXPO 2026」の会場入口に掲示された案内看板

生成AIをはじめとするAI技術の進化は、業界を問わずビジネスモデルそのものを変えようとしています。これまでDX(デジタルトランスフォーメーション)の目的として語られてきた業務効率化やコスト削減だけでなく、顧客体験(CX)の向上や新たな価値創造へと視点が移り始めているのです。

本レポートでは、その動きが最も鮮明に表れている業界の1つとして、保険業界に注目しました。2026年7月23日[木]、大手町プレイス ホール&カンファレンスで開催された「保険EXPO2026」(主催:株式会社セミナーインフォ、株式会社グッドウェイ)の講演セッションから、保険流通の変革とAI時代の顧客対応という2つのテーマを取り上げるとともに、展示ブースで披露された最新ソリューションにも注目しました。

AIを経営戦略としてどう位置づけ、人とAIの役割をいかに再設計していくのか。保険業界の最前線で示された実践事例は、金融業界に限らずDXを推進するすべての企業にとって、AIと人の役割分担を見直すための具体的なヒントになるはずです。

【本記事の要点】

  • 生成AIの普及で顧客の情報収集は「AI前提」に変化しており、保険会社・代理店には一次情報の発信力と、AIには担えない意思決定支援・共感の提供が求められている
  • MS&ADインシュアランスグループホールディングスは、AI投資の目的を業務効率化ではなく顧客価値創造に置き、AIと人の役割分担を軸にした組織づくり(AI CoE・人材育成)を進めている
  • 展示ブースでは、パーソナライズ動画やレガシーシステムの可視化など、現場の課題解決に直結する実践的なDXソリューションが数多く紹介された
  • 保険EXPO 2026が示したのは、AIを「効率化の道具」から「顧客価値を生む経営基盤」へと捉え直す、保険業界に限らないDXの潮流だ

顧客視点とAIが変える保険流通:「AIに選ばれる企業」への転換

「保険EXPO 2026」のパネルディスカッションに登壇したHokanグループ毎床慶子氏(左)、エヌエヌ生命保険小橋秀司氏(中)、CIEN森田大地氏(右)
毎床氏:左、小橋氏:中、森田氏:右

生成AIの急速な普及により、保険商品を検討する顧客の情報収集行動は大きく変化しています。従来はWEB検索や募集人との対話が起点でしたが、その入口はAIへと移行しつつあります。

本講演では、エヌエヌ生命保険株式会社の小橋秀司氏、株式会社Hokanグループの毎床慶子氏、株式会社CIENの森田大地氏が登壇。国内外の一次データや先進事例を基に、保険会社・代理店が今後取り組むべき戦略を議論しました。

顧客行動は「AI前提」に変化している

毎床氏は、日本財団の調査結果を紹介しました。日本の若者は生成AIへの信頼度が高い一方、利用経験は少なく、「信頼」と「利用」のギャップが存在しています。

小橋氏は中小企業経営者5,673人への調査を紹介。60代経営者の43%が生成AIを日常利用する一方、業務で利用しておらず、導入の検討もしていない経営者が全体の39%を占め、市場の二極化が進んでいると説明しました。

募集現場でも顧客は、YouTubeやSNS、生成AIで十分に情報収集してから相談に訪れることが一般的になっています。しかし、AIやインターネットには誤情報も多く、「AIO(AI Overview:AIによる要約)」の普及によって企業の一次情報が届きにくくなっていることも課題として挙げられました。

一次情報が導く、人にしかできない価値

毎床氏は、現場調査から従来の常識が通用しなくなっていると指摘しました。

同じ年代でも金融リテラシーやニーズは大きく異なり、十分に予習してきた顧客ほど誤った知識を修正する時間が必要になるケースもあります。また、資料を増やせば理解が深まるわけではなく、情報過多が意思決定を妨げることも明らかになっています。

森田氏は、顧客を複数のタイプに分類し、デジタル体験(CX)と対面での人的価値を組み合わせた設計の重要性を説明。小橋氏も、顧客は募集人だけでなく保険会社そのものの信頼性や姿勢まで評価していると述べ、企業として透明性を高める必要性を強調しました。

AIは情報整理や比較を得意としますが、最終的な意思決定を支え、不安に寄り添う役割は人にしか担えません。

小橋氏は、情報量が増えるほど顧客は選択そのものに負担を感じると指摘し、募集人には価値観を踏まえた意思決定支援が求められると語りました。

また、代理店と保険会社がデータを連携し、「なぜ契約に至らなかったのか」「どのタイミングで関心が高まったのか」といったプロセスデータまで共有することが、今後の競争力につながるとの考えが示されました。

海外事例に見る、AIに選ばれる企業への道筋

さらに、森田氏は3つの海外事例も紹介しました。

  • 米国:保険比較サービス「Insurify」がOpenAIと連携し、ChatGPT上で見積もりから契約検討まで完結できる仕組みを提供
  • スペイン:「Tuio」が生成AIを活用し、保険商品の説明責任や顧客理解を支援する実証を実施
  • アジア・欧州:AIエージェントの業務活用やサイバーセキュリティ強化が進み、競争軸は「AIをどう導入するか」から「いかに実装・運用するか」へ移行

一方、小橋氏は日本企業が取り組むべき施策として次の4点を挙げました。

  • AI検索での見え方を継続的に把握する
  • AIが読み取りやすいWebサイトへ改善する
  • 全社で一貫した情報発信を行う
  • 一次情報や専門知見を蓄積し、AIから引用されやすい情報基盤を整える

欧州では募集人個人のレビュー評価やオンライン上の情報もAIの回答に影響し始めており、企業だけでなく個人レベルのデジタルブランディングも重要性を増しています。

顧客視点・データ・AIを統合する組織へ

最後に、毎床氏は本講演のポイントを次の3点に整理しました。

  • 顧客の一次情報を起点に考えること
  • 思い込みではなくデータで判断すること
  • 人とAIの役割を明確に分担すること

一方、小橋氏は「まずは自社や自分自身について生成AIに問いかけ、AIを実際に使うことから始めてほしい」と呼び掛けます。

AI時代に競争力を左右するのは、単なる技術導入ではありません。顧客視点のデータを蓄積し、人とAIが連携して価値を生み出す仕組みを構築できるかどうかです。

本講演は、保険業界に限らず、DX時代に求められる組織づくりの方向性を示す内容となりました。 

DXportal®編集部

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DXportal®編集部

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