株式会社nobilu:藤川氏|「まずは手を動かす」がDXへの第一歩【DX先進企業のキセキ⑦】

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株式会社nobilu 代表取締役 藤川 真至氏

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株式会社nobilu代表取締役 藤川真至氏

「DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めたいが、何から始めればいいのか分からない」。そのような悩みを抱える中小企業は少なくありません。株式会社nobiluは、東京産の生乳を使ったチーズ製造・販売やレストラン運営を手掛ける会社です。同社では創業当初からスプレッドシートによる経営数値の可視化をはじめ、チャットツールや勤怠管理、受発注システムなどを段階的に導入し、業務改善を積み重ねてきました。

一方で、OCR化が思うように進まなかったり、ツール選定を後悔したりと、失敗も数多く経験しています。それでも歩みを止めず、現場の課題に合わせて改善を続けてきたことが、現在の組織運営を支えています。

本記事では、株式会社nobilu代表取締役・藤川真至氏(以下、藤川氏)に、現場起点で進めるDXの考え方や試行錯誤の過程を伺いました。完璧な体制を目指すのではなく、小さな一歩から始めるヒントを、同社の歩みから読み取っていただければと思います。 

【本記事の要点】

  • 株式会社nobiluでは、創業当初のスプレッドシート活用から受発注ツールの導入まで、現場の課題に合わせて段階的にデジタル化を進めてきた
  • 発注・製造の連携による自動化や数値の可視化により、業務効率化や残業時間の削減(月平均10時間未満)を実現した
  • OCR化の一時断念やツール選定の反省など、失敗や課題があっても柔軟に優先順位を見直しながら試行錯誤を重ねている
  • デジタル化定着の鍵は運用ルールの整備にあり、完璧を目指さず「まずは試してみる」小さな行動が重要である

創業時から続けてきた「数字を見える化する経営」の原点

株式会社nobiluがどのような会社なのか、簡単にご紹介いただけますか。

藤川氏

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株式会社nobilu 代表取締役 藤川 真至氏

「2012年に東京の渋谷で『CHEESE STAND(チーズスタンド)』というブランドを掲げ、チーズの製造と飲食店の運営を始めました。創業から10数年を経て、現在は主に飲食店の経営をはじめ、チーズを工房で製造して全国各地の人気レストランや一流ホテルなどに卸したり、一般顧客向けにオンラインショップで販売したりといった事業を行っています。」

渋谷でチーズの製造・販売をスタートされたのですね。おいしいチーズづくりには原料選びも欠かせない要素かと思います。原料となる生乳は、どこから仕入れていらっしゃるのでしょうか。 

藤川氏

「東京都清瀬市にある5軒の酪農家さんから、タンクローリーで毎朝新鮮なミルクを届けてもらっています。東京には約40軒の酪農家さんがいらっしゃいますが、そのうち昔から営まれている集落の5軒から毎日生乳をいただいています。

ただ、近年は少しずつ酪農家さんの軒数も減ってきています。東京も近頃は暑くなっていて、やはり気温が40度近くになってしまうと、牛にとってもかなり大変なようです。」

チーズ製造を始めたきっかけは、イタリアでのチーズとの出会いだったとお伺いしました。

藤川氏

「私はもともと大学でイタリア語を専攻していたため、ある時イタリアへ行く機会がありました。現地では主にピッツェリアで修業をしていたのですが、ナポリ郊外に行くとモッツァレラを作っている工房がたくさんあり、そこで食べた出来たてのモッツァレラがとても美味しかったのです。それを日本でも『いつか出来たてを食べられるお店を作ろう』と思ったのがきっかけです。」

素晴らしい行動力ですね。

藤川氏

「若気の至りですよ(笑)。」

課題を1つずつ解決する中で広がったデジタル活用の幅

続いてDXについてお伺いします。会社として取り組み始めた背景や時期について教えていただけますか。 

藤川氏

「2012年の創業当時からオンラインショップや卸を始めていたのですが、その頃から『Googleスプレッドシート』を使って、いつでも数値を可視化できる日次決算のような会計管理を行っていました。当時、スプレッドシートが得意なスタッフがいたので、データをどう自動反映させるかを一緒に作り上げていったのが最初の一歩です。」

スプレッドシートを扱えるスタッフとともに、数値を可視化する仕組みをゼロから作り上げていったのですね。こうした小さな取り組みの積み重ねが、後の本格的なツール導入にもつながっていったと考えられます。社内の体制が変化する中で、次はどのようなツールを取り入れていったのでしょうか。 

藤川氏

「はい。社内の人数が増えるにつれて勤務時間帯がバラバラになったためチャットツールを導入したり、タイムカードの集計の手間を省くために勤怠管理ソフトを入れたりと、なるべく業務を効率化しようと少しずつ進めていきました。」

課題を意識しながら、業務をスムーズにするために進めてこられたのですね。

藤川氏

「課題をひとつずつ解決していった感覚です。例えば、勤怠管理として初期はガシャンと押すタイムカードも使っていました。けれども、便利なお知らせやツールが出てきたタイミングで展示会などに足を運び、『これは良いな』と思ったものを順次導入していきました。

私自身、デジタルが好きで得意な方だったので、『ツールを使ってもう少し工夫できるのではないか』という問題意識は常に持っていました。」

展示会などで見つけた便利なツールを、課題意識を持ちながら順次取り入れてこられたのですね。現場の課題を起点にツールを選ぶ姿勢は、多くの中小企業にとっても参考になりそうです。現在は具体的にどのようなツールを活用されていますか。 

藤川氏

「社内では『Google Workspace』や『Google Meet』を使っています。予約システムも活用していて、最近『食べログ』に切り替えました。会計管理は『マネーフォワード』を使いつつ税理士さんにもお願いしており、経営数値をもっと見やすくするために『besside-ng』というツールも併用しています。他には、受発注には『TANOMU』というサービスを使っています。卸先の方々が注文するサイトであり、私たちが発注する際にも利用しています。

基本的には、今でもスプレッドシートを用いて力技で管理することも多いのですが、最近はAIを使いながら改良を重ねています。スプレッドシートをより上手に使いこなすためのアドバイスをAIに求めたり、自動化のスクリプトを組んだり、などですね。一部手間がかかる部分は外部の手も借りることもありますが、基本的には自分たちで改良を行っています。」

ツールの選定や切り替えは、藤川社長が主導されているのでしょうか。

藤川氏

「現場のスタッフから不満や要望が出てきたタイミングで、共に話し合いながら選んでいます。『スプレッドシートでの管理もそろそろ限界だよね』となった時に『TANOMU』を導入するなど、その都度、現場の声に合わせて切り替えてきました。デジタルが得意なスタッフの提案を取り入れることもあります。」

業務効率化だけではない。データ活用が経営判断を変えた

nobiluの販売するチーズたち
nobiluの販売するチーズたち(編集部にて撮影)

ツール導入による具体的な効果や成果は出ていますか。

藤川氏

「かなりの効率化になっています。一般的なチーズ工房さんだと、今でもFAXで注文を受けて手計算で翌日の製造数をカウントしているところもあると思いますが、うちは発注システムとスプレッドシートのスクリプトを連携させて、翌日の製造量が自動でわかる仕組みを2015〜2017年頃という早い段階から構築していました。」

デジタル化によって、売上や働き方にはどのような変化がありましたか。

藤川氏

「数字が可視化されることで『何が足りていないか』が明確になり、売上を上げるための適切な施策を打てるようになりました。SNS広告の運用など、数字を見て改善を繰り返すマーケティング手法は売上に寄与していると感じます。

また、人手不足を解消するというよりは『少ない人数でもしっかり業務を回せる体制』が整いました。業務の効率化によって時間短縮が図られ、以前に比べて残業時間を減らすことにもつながっています。現状は、月平均で10時間未満だと思います。

とはいえ、すべての部門で残業が減少しているわけではありません。やはり、業務によりますね。チーズを製造している一部の工房スタッフは、日によってはまだ少し長くなることもあります。」

やはり職人の現場である工房のデジタル化は難しい側面があるのでしょうか。

藤川氏

「なかなか難しいですね。以前、日々の手書きの製造記録をOCR(文字認識技術)で読み込んで管理を自動化・改善しようと試みたことがありました。しかし、手書きの文字が想定以上に読みづらかったり、外国人スタッフも含め多様なメンバーがいる中で綺麗に書いてもらうハードルが高かったりもしましたね。

また、独特な記帳テンプレートをいかに正確に読み込ませるかという設定も骨が折れ、結果的にうまく運用に乗りませんでした。そのため、現在工房のOCR化は一旦保留というか、優先順位を後回しにしています。」

手書きの製造記録のOCR化は、想定以上にハードルが高かったのですね。うまくいかなかった取り組みを無理に続けず、優先順位を見直す判断も経営には必要なのだと感じます。現在、経営の中で優先度を高く置いているのはどのような領域ですか。 

藤川氏

「マーケティングなどの施策ですね。今は、スタッフの稼働時間やリソースもそちらに重点的に割いています。」

DXportal®編集部

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DXportal®編集部

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