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衣替えは、毎年6月1日と10月1日。この日付は、誰に聞いても同じ答えが返ってきます。では、クールビズの終わりの日はどうでしょうか。今年、あなたの会社ではいつ終わり、それを決めるのは誰なのでしょうか。
実は、クールビズには、かつて政府が全国一律の期間を示していた時代があります。2020年度には「5月1日から9月30日まで」でした。しかし、2021年度には政府が全国一律の期間を示すことをやめ、終わりの日を決める役目は、それぞれの組織に移っています。
本記事では、毎年同じ日に切り替わる衣替えと、政府が全国一律の期間を示さなくなったクールビズを並べて、終わりの日を決めることの意味を考えます。読み終えたときには、自社の夏の運用がいつ、誰の判断で終わるのかを振り返るための視点が手に入るはずです。
【本記事の要点】
- 衣替えは、6月1日・10月1日という暦の基準があるため、決める人がいなくても多くの人が同じ日に切り替えられる
- クールビズにも、2020年度まで政府が示す「5月1日から9月30日まで」の全国一律の期間があった。2021年度に廃止され、終わりの日は各組織が決めるものになった
- 決める人と基準がなければ、運用の終わりは「なんとなく」の空気に委ねられる
- 続けるか戻すかそのものより、それが意識的に選ばれた結果かどうかが重要である
6月1日と10月1日|誰にとっても同じ衣替えの日
衣替えの日付は、誰かが毎年決めているわけではありません。6月1日と10月1日という2つの日が、社会の共通の基準として長く使われてきました。その成り立ちと、近年の変化を順に見ていきます。
明治から続く、共通の基準日
衣替えの起源は、平安時代の宮中行事にさかのぼります。当時は旧暦の4月1日と10月1日に、夏服と冬服を着替えていました。今の暦に置き換えると、おおむね5月と11月ごろにあたります。
そこから時代は流れ、太陽暦が採用された1873年(明治6年)には、官公庁の制服について、夏服は6月1日から9月30日まで、冬服は10月1日から翌年の5月31日までと定められています。
この日付は、学校の制服から一般の人へ、そして企業へと広がり、6月1日と10月1日に衣替えをする習慣として定着したのです。真夏日が続いても、梅雨寒が残っても、誰かが今年の日付を決め直す必要はありません。「今日から衣替えだから」という一言で足りるのは、カレンダーという、誰にとっても共通の基準があるからです。
出典・参照:
基準日が揺らいでも、基準は残る
もっとも、この基準日も、近年は少しずつ柔軟になっています。2023年9月の中日新聞の報道では、岐阜県教委の担当者が「昔は2週間ほどだった移行期間を1カ月前後にしている学校もある」と伝えていました。
6月1日・10月1日を原則とする規定を「時期は設定しない」に改めた高校の例も、あわせて伝えられています。暑さが長引くなかで、日付どおりに切り替えることが難しくなっているのです。
それでも、基準日の意味がなくなったわけではありません。「6月1日から2週間は、夏服でも冬服でもよい」と決められるのは、6月1日という基準日があるからです。基準があれば、ずらすときにも「基準日からどれだけ」という形で話ができます。何もない状態から決めるのとは、まったく違います。
出典・参照:
- 暑さに対応、着たいものを着る・・・ いまどきの「制服衣替え」事情を探る/中日新聞Web(2023年9月24日掲載)
クールビズの終わりの日:全国一律の期間がなくなり、各社が決める時代
クールビズにも、かつては衣替えのように、政府が示す共通の期間がありました。それが2021年度になくなり、終わりの日は、それぞれの組織が自分で決めるものになっています。その経緯と、いまの状況を見ていきましょう。
政府が示していた「5月1日から9月30日まで」
クールビズは、2005年度に始まった、室温を適正に保ち、軽装で働く取り組みです。環境省は2020年度、「5月1日から9月30日まで」を実施期間とし、全国で統一していました。10月以降も暑い日には、各自の判断による軽装を呼びかけていたのです。
衣替えの6月1日・10月1日と同じように、政府が示す日付は、組織にとって、終わりの日をあらためて議論しなくても済む目安でした。
出典・参照:
2021年度に消えた全国一律の期間
ところが、2021年度に環境省は、政府が全国一律の実施期間を設定することはしない、と発表しました。背景として挙げたのは、次の3点です。
- コロナ禍での働き方の多様化
- 気候変動の影響とも考えられる季節外れの暑い日の増加
- 地域による気候の違い
この方針は、2026年現在も変わっていません。環境省本省は5月1日から9月30日まで集中的に実施しますが、これは本省の期間です。全国に向けては、この期間に限らず、それぞれの判断による軽装の取り組みを求めています。
出典・参照:
終わりの日を決める役目が、各社に移った
政府が全国一律の期間を示さなくなった結果、終わりの日は、組織ごとに違うものになりました。環境省本省のように9月30日で区切る組織もあれば、期間の設定そのものをやめ、年間を通じて職員が各自で判断する形に改めた県もあるようです(2022年4月から)。
企業にも、判断の跡が見えます。2025年には、9月30日までの予定だったクールビズを10月17日までにするとして、10月1日付のお知らせを出した会社がありました。これらはどれも、誰かが日付を決めた例です。逆にいえば、決める人がいなければ、その日付は誰からも示されないということでもあるでしょう。
出典・参照:
「なんとなく」で始まり、「なんとなく」で終わる組織のクセ
衣替えは、暦が終わりの日を教えてくれます。全国一律の期間がなくなったクールビズは、社内に決める人がいなければ、終わりの日を教えてくれる存在がありません。ここに、組織のクセが顔を出します。
決める人と基準がなければ、空気が決める
「いつまで」「誰の判断で」「何を基準に」の3つが決まっていなければ、クールビズの終わりは、その場の空気に委ねられます。涼しくなってきたから、なんとなく元に戻る。誰も言い出さないから、なんとなく続く。どちらも、誰かが選んだわけではありません。
この構造は、働き方の運用に限った話ではありません。以前、当サイトでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の議題が会議で持ち出されるたびに、「うちはIT企業じゃないから」という一言で検討が止まってしまう組織の構造を取り上げました。
誰かが明確に反対したわけでもないのに、検討そのものが空気で先送りされていく。終わりの日を決めない運用も、同じ空気に流されやすくなってしまうのです。
続けるか戻すかより、選んだかどうか
クールビズの終わりの日の決め方には、たとえば次のような選択があります。
- 9月30日で区切る
- 10月17日まで延ばす
- 期間を決めず、通年で続ける
どの選択にも、それぞれの理由があります。夏の間だけの緩和が社員の負担を減らし、現場になじんでいくのであれば、そのまま定着させるのも、ひとつの判断でしょう。
問われるのは、どれを選ぶかだけではありません。同じ「10月17日まで延ばす」でも、誰かが理由を添えて決めた場合と、誰も言い出せないまま結果としてそうなった場合とでは、その後の運用が大きく変わってきます。
では、何が変わるのでしょうか。誰かが決めた運用には、決めていない運用にはない強みが3つあります。
- 社内にも社外にも、いつまで続けるのか、なぜ続けるのかを説明できる
- 社員が周囲の様子をうかがわずに、自分の服装や働き方を決められる
- 来年の同じ時期に、決めたときの理由が今も当てはまるかを確かめられる
10月17日までの延長を告知した会社は、10月1日付のお知らせで、軽装のままお客さまに対応する場合があることも、あわせて伝えていました。日付を決めたからこそ、社外への説明までできた例です。
選ぶといっても、ひとつの日付を厳格に決めることだけを指すわけではありません。「9月30日を基準にして、10月中は各自の判断にする」というように、幅を持たせる決め方もあるでしょう。それこそ、衣替えの移行期間と同じ発想です。その幅も含めて、誰かが決めたといえることの方が大切なのではないでしょうか。
続けるか戻すかは、組織ごとに違ってかまいません。ただ、どちらであっても、「これは自分たちで選んだ」と言える運用でありたいものです。
出典・参照:
まとめ:働き方にも、衣替えの日を持てないか
衣替えは、暦という共通の基準があるから、誰に言われるでもなく多くの人が同じ日に動けます。
クールビズも、2020年度までは政府が示す全国一律の期間があったものの、その期間がなくなった今、終わりの日は、それぞれの組織が自分で決めるものになったのです。
クールビズに限らず、夏の間だけ認めた時差出勤やリモートワークの頻度も、いつ終わりにするかを決めるのは、それぞれの会社です。
今年の衣替えのついでに、この夏だけ変えていた働き方を、いつ、誰の判断で終わりにするのか、一度言葉にしてみてはいかがでしょうか。続けるにしても、戻すにしても、そこには「なんとなく」ではなく、選び直した結果だという事実が残ります。
始めた運用の終わりを、誰がいつ決めるのか。この問いは、クールビズだけの話ではなく、企業が新しい制度やツールを始めるたびに向き合う、大切な考え方になるのかもしれません。衣替えのように、始めるときに終わりの日を決めておく。それが、組織の「なんとなく」を減らす最初の一歩になるのではないでしょうか。
執筆者
DXportal編集長
町田 英伸
自営での店舗運営を含め26年間の飲食業界にてマネージャー職を歴任後、Webライターとして独立。現在はIT系を中心に各種メディアで執筆の傍ら、飲食店のDX導入に関してのアドバイザーとしても活動中。『DXportal®』では、編集長としてすべての記事の企画、及び執筆管理を担当。特に店舗型ビジネスのデジタル変革に関しての取り組みを得意とする。「50s.YOKOHAMA」所属。


