【2025年版】DX時代のテレワーク導入|中小企業が抱える課題と解決策

【2025年版】DX時代のテレワーク導入|中小企業が抱える課題と解決策

新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、多くの企業で導入が進んだテレワーク。2025年現在、テレワークは多くの企業にとって、単なるコロナ禍の緊急措置ではなく、DX推進や働き方改革に不可欠なツールとして定着しつつあります。

しかし、その一方で、オフィスへの出社回帰の動きも見られます。

国土交通省の「令和6年度テレワーク人口実態調査」によると、令和6年度のテレワーク実施率(雇用型就業者のうちテレワークを実施したことがある人の割合)は全国平均で24.6%にとどまっています。これは、コロナ禍をピークにやや減少傾向が続いていますが、コロナ禍前と比べると依然として高い水準を維持していると言って良いでしょう。特に首都圏では、約4割の水準を保っています。

ただし、テレワーク導入によるコミュニケーション不足や、企業文化の醸成が難しいといった課題から、テレワークを制限して、オフィス出勤とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークを採用する企業も増加しています。つまり、様々なメリットがあるにも関わらず、必ずしも完全なテレワークへの移行が積極的に進められているわけではないのです。

テレワーク導入には、リモート環境での業務の進め方、IT環境の整備、企業文化の醸成など、様々な課題を克服する必要があります。

本記事では、中小企業がテレワークを導入する際の問題点と解決策を2025年の最新情報も交えながら具体的に解説していきます。

テレワーク導入で期待できるメリット

テレワーク導入で期待できるメリット

テレワーク導入は、従来のオフィス勤務では得られなかった様々なメリットを企業と従業員双方にもたらします。

企業側のメリット

企業側のメリットとしては、オフィス賃料や光熱費などのコスト削減が挙げられます。また、距離的な制約が緩和されるため優秀な人材を獲得しやすくなり、様々な働き方に対応できる柔軟性から離職率低下にも繋がります。さらに、従業員が集中しやすい環境で働くことで、生産性向上が見込めます。

災害やパンデミックなどの緊急時にも、事業を継続しやすくなるという点も大きなメリットです。

従業員側のメリット

従業員側のメリットとしては、仕事とプライベートの時間調整がしやすくなるため、ワークライフバランスの向上が期待できます。通勤時間の削減や自由な服装で勤務が可能になることなどにより、ストレス軽減にも繋がります。

また、リゾート地などで休暇を取りながら仕事をするワーケーションのような新しい働き方も可能になり、より柔軟な働き方も実現するでしょう。

さらに、多くの人が作業しやすいようにデザインされたオフィスとは異なり、自宅など自分に合った環境で働けることにより集中力を高める効果も期待できます。テレワークを通して、自己管理能力や問題解決能力など、様々なスキルを身につけることができる点もメリットと言えるでしょう。

新しい働き方への対応

テレワーク導入をきっかけに、従来の働き方にとらわれない、新しいワークスタイルが生まれつつあります。

オフィス出勤とテレワークを組み合わせた働き方であるハイブリッドワーク、業務内容に合わせて働く場所を自由に選択できる働き方であるABW(Activity Based Working)、リゾート地などで休暇を取りながら仕事をする働き方であるワーケーションなどです。

これらの新しいワークスタイルは、従業員の多様な働き方を実現し、働きがいのある環境づくりに貢献すると期待されています。

テレワーク導入の課題と解決策

テレワーク導入の課題と解決策

テレワーク導入は、企業と従業員双方にとって、大きなメリットをもたらす可能性を秘めています。一方で、テレワーク導入には、様々な課題も存在します。ここでは、主な課題と解決策について詳しく解説していきます。

業務的に難しい

まず、テレワーク導入が難しい業種・職種があることを理解しておく必要があります。例えば、飲食店などの店舗型ビジネスや建設業、医療施設などでは、業務の性質上、テレワークの導入が難しい場合が多いでしょう。

しかし、これらの業種・職種の場合でも、テレワークを部分的に導入したり、ハイブリッドワークを採用したりするなど、働き方改革を進めることは可能です。

例えば、建設業において現場での作業や対面での安全確認は不可欠ですが、設計業務、CADを用いた製図作業、プロジェクトの進捗管理、事務処理、経理、あるいはクライアントとの打ち合わせの一部などは、デジタルツールを積極的に活用することでリモートでの実施が十分に可能となります。

重要なのは、業務内容を分析し、テレワークに適した業務を見極めることです。その上で、テレワークを導入しやすいように、業務プロセスを見直したり、IT環境を整備したりする必要があります。

レガシービジネスの弊害

テレワーク導入以前の根本的な課題として、いまだに多くの企業に根強く残る紙文化が挙げられます。

紙面による押印や稟議承認など、デジタル化が進んでいない業務プロセスは、テレワーク導入の大きな障害となります。そのため、テレワーク導入を成功させるためには、業務プロセスのデジタル化やペーパーレス化を積極的に推進していく必要があります。

セキュリティ対策

テレワーク導入における重要な課題の一つに、セキュリティ対策があります。

社外から企業のシステムにアクセスするため、情報漏えいやサイバー攻撃などのリスクが高まります。そのため、テレワーク導入にあたっては、セキュリティ対策を強化することが重要です。

例えば、ハード面では、VPN(Virtual Private Network:仮想専用線)機器のソフトウェアの最新アップデートやセキュリティパッチの適用を行い、常に最新の状態に保つことが重要です。ソフト面では、従業員に対して、セキュリティに関する教育を定期的に実施することが欠かせません。

勤務状況把握が難しい

テレワークでは、従業員の勤務状況を把握しにくいため、勤怠管理や進捗管理に課題が生じることがあります。

この課題の解決策としては、まずオンラインの勤怠管理システムを導入することで従業員の勤務時間を正確に把握することが挙げられます。また、タスク管理ツールを利用することで、プロジェクトの進捗状況を可視化し、各従業員の業務負荷を把握することができます。

さらに、上司と部下がオンラインツールなどを利用して定期的にコミュニケーションを取ることで、業務の進捗状況や課題を共有することも大切です。

コミュニケーション不足と孤独感

テレワークでは、従業員同士が顔を合わせる機会が減り、コミュニケーション不足に陥ったりや孤独感を感じやすくなったりする傾向があります。これは、従業員のモチベーション低下や帰属意識の希薄化に繋がり、生産性や創造性の低下にもつながる由々しき事態です。

このような問題を解決するためには、積極的なコミュニケーションが重要です。ChatworkやSlackなどのビジネスチャットツールを活用し、気軽にコミュニケーションを取れるようにしましょう。

また、チームや部署単位で定期的にオンラインミーティングを実施することで、情報共有や意見交換の場を設けることも重要です。

さらに、オンラインで社内の交流を促進する取り組みも有効です。オンラインで参加できる社内イベントを開催したり、バーチャルオフィスを導入したりするなど、従業員同士が交流できる機会を積極的に設けることが重要です。

また、従業員のメンタルヘルス対策として、相談窓口を設置したり、ストレスチェックツールを導入したりすることも有効な手段と考えられます。

柔軟な働き方を支えるワークプレイス設計

テレワークの導入により、従業員が働く場所や時間の選択肢が増える一方で、オフィスと自宅、あるいはその他の場所を効果的に組み合わせた働き方をどのように最適化するかが課題となります。

この課題に対する有効な解決策の一つが、「ABW(Activity Based Working)」です。ABWとは、業務内容に合わせて働く場所を自由に選択できる働き方を指します。

例えば、集中して作業したい場合は個別のブース、チームで協力して作業したい場合はコラボレーションスペース、オンライン会議を行う場合は専用の会議室など、多様なニーズに応じたスペースを提供します。

ABWを導入することで、従業員は自身の業務内容や気分に合わせて最適な環境を選べるようになり、生産性や創造性の向上に繋がります。企業側も、固定席を減らすことが、オフィススペースの効率的な活用を可能とし、コスト削減にも寄与するのです。

ただし、ABWを成功させるためには、従業員の自律性を尊重し、それぞれの働き方をサポートするITツールの整備や、オフィスデザインの見直しが不可欠です。これにより、テレワークとオフィスワークの利点を最大限に引き出し、従業員のエンゲージメントを高めることができます。

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