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顧客リストは、持っていれば使える資産だと考えて、メールや電話、SMSで営業や案内を続けている企業もあるのではないでしょうか。ところが海外では、そのリストを使ってよいかどうかを、国の登録簿との照合で決める制度が動き出しています。
南アフリカ政府と全国消費者委員会(NCC)は2026年10月7日、全国オプトアウト登録基盤の段階導入を発表しました。これは、消費者が事業者からの勧誘を事前に拒否する意思を、国の登録簿に登録する仕組みです。消費者の登録開始は2027年5月の予定で、それまでは事業者側の準備段階です。
本記事では、制度の工程と仕組み、顧客データの扱いの変化、日本・米国・英国・EUの制度との違いを解説します。
【本記事の要点】
- 南アフリカは、消費者が事業者からの電話、SMS、電子メールでの勧誘を事前に拒否できる、全国の登録簿の導入を始めた
- 事業者は、営業先リストを登録簿と毎月照合し、拒否を登録した人を外す義務を負う
- 顧客データは、保有しているだけでは使えず、使う時点で外部の登録簿の判定を受けるデータに変わる
- 日本では同様の全国登録簿は確認できず、営業先の国やチャネルに登録簿がある場合は、日本の管理に加えて、その登録簿との照合が必要になることがある
南アフリカの全国オプトアウト登録基盤の概要
南アフリカの全国オプトアウト登録基盤とは、事業者からの営業や案内の勧誘を受けたくない消費者が、事前に拒否の意思を登録しておく、国の登録簿のことです。登録基盤(登録簿)は、全国消費者委員会(NCC)が運営します。南アフリカ政府は2026年10月7日、この登録基盤を段階的に導入すると発表しました。登録基盤の内容は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 『消費者保護法』(Consumer Protection Act 68 of 2008)の第11条と、2026年の改正規則 |
| 運営主体 | 全国消費者委員会(NCC) |
| 拒否を登録する人 | 事業者からの営業や案内の勧誘を受けたくない消費者 |
| 対象になる勧誘 | 電話、SMS、電子メールなどの電子通信による直接勧誘。郵便や対面を含む、すべての営業活動ではない |
| 事業者に求められること | 直接勧誘を行う事業者は、NCCの登録簿に登録し、営業先リストを登録簿と毎月照合して、拒否した人を外す |
この登録基盤は、次の流れで使われます。
- 消費者が、事業者からの勧誘を受けたくない意思を、登録簿に登録する
- 事業者が、営業先リストを登録簿と照合する
- 事業者が、拒否を登録した人を、送信や架電の前にリストから外す
この流れは、拒否を登録した人への、電話やSMS、電子メールでの直接勧誘を防ぐための仕組みです。
導入は、時期を分けて、4つの段階で進みます。時期ごとの出来事は、次のとおりです。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年4月15日 | 『消費者保護法』の改正規則(Government Notice R.7380)が発効 |
| 2026年9月15日 | 直接勧誘を行う事業者の登録が開始(12月まで) |
| 2026年12月〜2027年4月 | 事業者が営業先リストを無料で照合できる準備期間(5カ月) |
| 2027年5月(予定) | 消費者が勧誘の事前拒否を登録できるようになる |
工程が分かれているため、営業先リストを登録簿と照合する作業は、消費者の登録が始まる前から事業者側で動き出します。
出典・参照:
事業者に課される義務
全国オプトアウト登録基盤は、勧誘を拒否したい消費者だけが使う仕組みではありません。電話、SMS、電子メールなどで営業や案内を直接行う事業者にも、2026年の改正規則で義務が課されます。
こうした事業者に求められるのは、全国消費者委員会(NCC)の登録簿への登録と、営業先リストの毎月の照合などです。義務の内容は、次のとおりです。
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 事業者登録 | NCCの登録簿に事業者として登録する |
| 年次更新 | 登録の記念日ごとに更新料を払い、登録を更新する |
| 月次の照合 | NCCと毎月データを照合し、拒否登録者のデータを自社のデータベースから除外する |
| 登録前の勧誘の禁止 | 事業者登録をしていない限り、直接勧誘のために消費者へ連絡しない |
事業者は、登録と年次の更新、照合のたびに、規則で定められた料金を払います。ただし、2026年12月〜2027年4月の準備期間中は、営業先リストの照合を無料で試せます。この義務は、事業者の規模を問わず課されるものです。
違反した場合、NCCは調査して是正命令を出せます。行政制裁金の上限は、前年度売上高の10%または100万ランド(南アフリカの通貨:約960万円/2026年10月10日現在)の、大きいほうです。是正命令に従わない場合などには、別に刑事責任も定められています。
出典・参照:
顧客データは「持つ」から「使えるか判定する」へ変わる
南アフリカの登録基盤から読み取れる、顧客データの流れは、次のとおりです。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 営業先のリストを、NCCの登録簿と照合する |
| 2 | 拒否登録をした人を、リストから除外する |
| 3 | 自社の営業や配信、架電の仕組みから、除外した人を外す |
ここで、顧客データは、保有しているだけでは使えなくなります。使う時点で、外部の基盤の判定を受けるデータに変わるのです。
なお、拒否登録の範囲の細かな扱いなど、運用の詳細は今後確定する指針で示されます(2026年10月2日付の草案では意見募集の段階)。
登録簿が禁じるのは、拒否を登録した人への勧誘です。そのため、事業者は、拒否を登録した人を営業先リストから外します。拒否を登録していない人への勧誘は、登録簿の仕組みでは禁じられていません。
ただし、南アフリカの『個人情報保護法』(POPIA)の第69条は、電子通信による直接勧誘について、本人の同意などの条件を別に定めています。
これにより、営業や案内に使う顧客データには、2つの区分が生まれます。
| 区分 | 意味 |
|---|---|
| 保有しているデータ | 自社のデータベースに保有している、顧客や見込み客のデータすべて |
| 営業や案内に使えるデータ | 営業や案内を、電話、SMS、電子メールなどの連絡手段で送るときに、拒否登録の照合と、同意などの条件を満たしているデータ |
同じ顧客のデータでも、拒否を登録した人は、電話やSMS、電子メールでの営業には使えません。つまり、保有しているデータが、そのまま営業や案内に使えるデータになるとは限らないのです。
出典・参照:
日本・米国・英国・EUとの違い:中央登録簿をどこまで使うか
最後に、日本・米国・英国・EUの制度を、南アフリカの登録基盤と比べてみましょう。比較の観点は、勧誘のチャネルの範囲、中央の登録簿の有無、照合の頻度です。
| 地域 | 制度の中心 | 対象のチャネル | 照合 |
|---|---|---|---|
| 南アフリカ | NCCの全国オプトアウト登録基盤 | 電話、SMS、電子メールなどの電子通信 | 事業者が毎月照合 |
| 米国 | 連邦取引委員会(FTC)の国家Do Not Call登録簿 | 主に電話 | 販売者は少なくとも31日ごとに登録簿を更新 |
| 英国 | 電話優先サービス(TPS)と法人向け(CTPS) | ライブの営業電話 | 電話をかける前に登録番号と照合。登録が有効になるまで28日 |
| EU | 『ePrivacy指令』第13条 | 自動発信、FAX、電子メール(SMSを含む)は原則として事前同意が必要 | EU共通の単一の登録簿はなく、各国が実装 |
| 日本 | 『特定電子メール法』と『特定商取引法』 | 広告宣伝メール・SMSは原則オプトイン(事前同意)。電話勧誘販売は再勧誘の禁止 | 送信者ごとに同意と拒否を管理 |
米国と英国は、電話を中心に、全国の登録簿と照合する制度です。南アフリカは、この登録簿の考え方を、電話だけでなく、SMSと電子メールにも広げています。EUは、登録簿ではなく電子メールなどへの事前の同意を原則とし、共通の登録簿はなく各国が制度を実装する形です。
違いは、どのチャネルを中央の登録簿で統制するかという、政策の選択にあります。
こうした各国の状況に比べると、日本では、南アフリカのように電話やSMS、電子メールを横断して全事業者に定期的な照合を課す全国登録簿は確認できませんでした。日本の事業者は、送信者ごとに同意と拒否を管理することになります。
| 場面 | 日本の事業者に求められること |
|---|---|
| 広告宣伝のメール、SMSを送る前 | 受け取る人の事前の同意(オプトイン)を、原則として得る |
| 広告宣伝のメール、SMSを送るとき | 送信者を表示し、同意を記録する |
| 受信を拒否されたあと | その人には送らない |
| 電話で勧誘するとき | 契約しない意思を示した人には、勧誘を続けず、再び勧誘しない |
出典・参照:
まとめ:顧客データは「使える根拠」で選ぶ時代へ
南アフリカの全国オプトアウト登録基盤は、時期を分けて、段階的に動き出しました。事業者が営業先リストを登録簿と毎月照合し、拒否した人を外す仕組みが整います。その結果、顧客データは、保有しているだけでは使えず、使う時点で外部の基盤の判定を受けるデータに変わります。
日本では、事業者が自社で同意と拒否を管理する形が中心です。一方、南アフリカや米国、英国は、事業者に中央の登録簿との照合を求めています。営業先の国に登録簿がある場合、日本向けの同意と拒否の管理だけでは、拒否を登録した人へ知らずに送ってしまうことになりかねません。登録簿の有無や対象の連絡手段は国ごとに異なるため、海外の顧客への営業では、営業先の国と連絡手段によって、登録簿との照合が必要かどうかが変わります。
顧客データの価値は、件数ではなく、営業や案内の連絡手段ごとに、拒否登録の照合と同意などの条件を満たしているかどうかで決まるのです。
執筆者
DXportal®運営チーム
DXportal®編集部
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