職人手配システムで効率化できない理由|建設業に残る「人を知る力」の価値化

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目次

システムを導入する前にやるべき「判断基準の棚卸し」

システムを導入する前にやるべき「判断基準の棚卸し」

システムを選ぶより先に、社内で行うべき作業があります。それは、手配担当者が頭の中で行っている判断基準を書き出し、共有可能な形に整えることです。この章では、判断基準の棚卸しを行う具体的な進め方を解説します。

手配担当者の頭の中を書き出す3つの質問

まずは手配担当者に、以下の3つを問いかけてインタビュー形式でメモを取ります。

  • なぜ、この現場にはA社ではなくB社を呼んだのか(判断理由)
  • 過去にA社を呼んで失敗した経験はあるか、その原因は何か(除外理由)
  • 急ぎのときに融通が利く協力会社は誰か、その理由は何か(関係性の質)

この質問群を10案件ほど繰り返すと、担当者の判断軸が徐々に文章として立ち上がります。

協力会社台帳に追加すべき情報項目

多くの会社の協力会社台帳は「会社名・連絡先・工種・単価」で止まっています。ここに次の項目を追加すると、判断が組織で共有できるようになります。

情報カテゴリ具体項目目的
基本情報工種・保有資格・CCUS登録番号属性検索の基礎
稼働情報対応可能エリア・稼働可能人数・繁忙期手配可否の初期判断
相性情報相性の良い現場監督・不得意な現場タイプ配置ミスの回避
品質情報仕上がりの傾向・段取りの流儀・清掃姿勢施主向け品質の予測
関係性融通の利きやすさ・支払条件・過去のトラブル緊急対応力の把握

この表は自社の職人手配業務にそのまま当てはめて、まず1社分を試作すると効果が見えてきます。さらに、表を作って終わらせず、月1回のペースで手配担当者と現場監督が共同で更新する運用にすると、生きた情報として蓄積されてきます。

現場ごとの相性・仕上がり評価を残す方法

現場完了時に、現場監督が「今回呼んだ職人・協力会社について、次回も呼びたいか、その理由は何か」を1枚のシートに書く運用を始めます。このとき、星評価だけでなく、自由記述の1〜2行を残すと、次の手配時に判断材料として使いやすくなります。

「人を知る力」を組織資産に変える具体手順

判断基準の棚卸しができたら、次はそれを継続的に会社の資産へ変えていく段階です。ここでは4つのステップで、無形資産の形式知化を進める方法を示します。

ステップ1:判断基準のインタビューと文書化

前章の3つの質問をベースに、手配担当者へ複数回のインタビューを実施します。1回30分、月2回ペースで半年も続ければ、100案件分の判断ログが溜まります。この記録が判断基準の見える化の起点です。

ステップ2:台帳・データベースの再設計

Excelでも構いませんが、複数人での更新を想定するならクラウド型の顧客管理ツールや協力会社管理ツールを検討します。この段階で初めて、システム化の議論が意味を持ちます。あくまで判断基準の器として、システムを選定する順序です。

ステップ3:若手への同行OJTと共有会議の運用

書類化と並行して、若手担当者をベテランの手配業務へ同行させます。

  • 電話のやり取り
  • 現場での立ち話
  • 価格交渉の間合い

これら、文書に落としきれないニュアンスを体験させることが承継の近道です。さらに、月1回、手配担当者・現場監督・経営者が集まる「協力会社ミーティング」を設け、台帳の更新と気づきを共有するとより効果が高まります。

ステップ4|CCUS等の外部情報との連携

CCUSの登録技能者は2024年8月末時点で150万人を超え、技能者向けアプリの提供も始まりました。CCUSで確認できる資格・就業履歴と、自社台帳の相性・品質情報を組み合わせると、客観データと経験知が補完し合います。CCUS情報は「初対面の職人を評価する客観指標」として位置づけると使いやすくなります。

システムと人の役割分担の設計|CCUS・マッチングサービスの位置づけ

システムと人の役割分担の設計|CCUS・マッチングサービスの位置づけ

ここまでの整理を踏まえ、CCUSやマッチングサービスを含めた各種システムを、自社の職人手配業務にどう組み込むかの設計指針を示します。役割分担を明確にすることで、高い投資対効果が期待できるようになります。

CCUSを「実績の確認装置」として使う

CCUSは技能者の資格・就業履歴・技能レベルを客観的に可視化する仕組みです。初めて発注する職人・協力会社に対して、書類上の裏取り装置として使うと有効です。ただし、既存の常連協力会社との関係管理に無理やり適用する必要はありません。

マッチングサービスを「新規開拓の入口」に限定する

これらの建設業向けマッチングサービスは、繁忙期の応援先探しや、新規エリア進出時の初期候補探しに向いています。ただし、コア協力会社との関係管理には向かないため、用途を割り切ることが肝心です。

コア協力会社は関係資本で守る

日常的に付き合う中核の協力会社は、システムではなく人と人の関係で守ります。

  • 定期的な現場訪問
  • 支払条件の遵守
  • 繁忙期以外の仕事の融通

などなど、地味な関係維持の投資が、緊急時の手配力を支えます。ここに時間を割ける状態を作るために、システム化はあくまで補助線として位置づけなければなりません。

出典・参照:

まとめ:職人手配の効率化はシステム導入の前に「判断基準の見える化」から

本記事では、職人手配システムを入れても効率化が進まない理由と、その解決策としての「人を知る力」の資産化を解説しました。要点を整理します。

  • 職人手配システムは検索・履歴・書類・出面といった定型業務は代替できるが、相性・段取り・仕上がり・融通の判断は代替できない
  • 効率化を阻む構造には、登録数と実戦力のギャップ、価格買い叩き、信頼の非対称性、現場文化の非言語性がある
  • 手配担当者への属人化は、工程遅延・受注機会損失・事業継続リスクという経営問題を招く
  • 解決の順序は「システム選定」ではなく「判断基準の棚卸し」→「協力会社台帳の再設計」→「若手OJT・共有会議」→「システム・CCUS連携」となる

貴社が取り組める具体的な一歩は以下の3つです。

  1. 手配担当者へ「なぜ直近3案件でその協力会社を選んだのか」を聞き取り、判断理由をメモに残す
  2. 既存の協力会社台帳に「相性の良い現場監督」「仕上がりの傾向」「融通の利きやすさ」の列を追加する
  3. 現場完了時に現場監督が「次回も呼びたいか、その理由」を1〜2行残す運用を試行する

システム導入の議論は、この作業が動き始めてからで遅くありません。職人不足が加速する時代だからこそ、貴社の「誰を、どの現場へ、なぜ配置するのか」という判断を、会社の資産として残していく取り組みが手配力の差につながるのです。

山田 元樹

執筆者

株式会社MU 代表取締役社長

山田 元樹

社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援を過去のエンジニア経験を活かし、エンジニア + 経営視点で行う。DX推進の観点も含め上場企業をはじめ多数実績を持つ。