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飲食店の営業中、接客や調理で手が離せず、予約の電話に出られないことはないでしょうか。そうした取りこぼしを減らす手段として、AIが電話を受けて予約を受け付ける「AI電話予約」があります。
とはいえ、「AIに任せて、本当に予約をきちんと受けられるのだろうか」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。その不安を考えるうえで押さえておきたいのは、「AI電話予約」には2つの仕組みがあるという点です。
店舗が契約して電話を受ける仕組み(受電型)と、第三者のサービスが店舗へ発信する仕組み(発信型)では、予約を確定させる主体も、トラブルが起きたときの責任の所在も逆になります。後者では、顧客のアプリ上は「予約完了」と表示されているのに、店には届いていないという事例が、消費者委員会の資料で指摘されています。
この記事では、店舗が契約する受電型と第三者が発信する予約代行型の違いを整理し、自店が向き合うリスクと、導入前に決めておくべき「確定証拠」や人へ戻す条件を解説します。
【本記事の要点】
- 受電型か発信型かで、予約確定の主体と苦情の窓口が変わる
- 消費者委員会の資料は、発信型の無断掲載や、予約完了表示と店舗への伝達不一致を指摘している
- 導入前に、予約の「確定証拠」と人へ戻す条件、不応答率以外のKPIを決めておく
「AI電話予約」は1つではない。受電型と発信型で責任の所在が逆になる
「AI電話予約」とひとくくりに語られがちですが、少なくとも次の2種類があり、責任の所在が逆になります。
- 店舗契約の受電型AI:店舗が自ら契約・設定し、顧客からの着信をAIが受ける。受付時間、質問項目、予約台帳との連携、有人への転送条件を店舗側が制御できる。
- 第三者の発信型予約代行AI:顧客向けサービスを運営する事業者が、店舗の承諾なしに店舗へ発信する場合がある。店舗が契約していなくても電話がかかってくることがあり、店舗が制御できる範囲は限られる。
この2類型の違いは、契約主体・電話の向き・予約確定の主体・苦情窓口という4つの軸で整理すると分かりやすくなります。
| 比較軸 | 受電型(店舗契約) | 発信型(第三者予約代行) |
|---|---|---|
| 契約主体 | 店舗自身がAIサービス事業者と契約する | 顧客向けサービスの事業者。店舗は契約していない場合がある |
| 電話の向き | 顧客から店舗(のAI)へかかる | 第三者サービスから店舗へかかる、または店舗の情報が承諾なく掲載される |
| 予約確定の主体 | 店舗が設定した条件で、店舗自身が確定させる | 顧客側のアプリ上で予約完了と表示される。店舗への伝達は別工程になる場合がある |
| 苦情窓口 | 店舗自身(契約するサービス事業者への確認も店舗が行える) | 店舗は契約当事者でないため、まずどのサービス経由の予約かを特定する必要がある |
消費者委員会が指摘する発信型のトラブル
発信型の予約代行AIをめぐる論点は、消費者委員会が2025年11月27日に開いた第476回本会議の資料で取り上げられています。この資料は、顧客側が利用する予約代行サービスについて、いくつかの具体的な懸念を示すものです。
店舗側が把握しておくべき論点として、次の3つが挙がっています。
- 店舗の承諾のない情報掲載:店舗が知らないうちに、店舗情報がサービス上に掲載されているケースがある。
- 掲載情報の誤り:営業時間やメニューなど、実態と異なる情報が顧客へ示される場合がある。
- 予約完了表示と店舗への伝達不一致:顧客のアプリ画面では予約完了と表示されても、その情報が店舗側へ正しく伝わらず、当日になって「予約が入っていない」と断ることになる場合がある。
店舗にとって厄介なのは、この種の発信型サービスを自らは導入していなくても、予約に関するトラブルの当事者になり得る点です。議事録では、会議に出席した専門家が、飲食店の承諾なくアプリに店の情報が掲載され、誤情報も多いこと、アプリでは予約完了と表示されているのに店へ伝わっておらず、顧客が当日に店で断られるトラブルが報告されていることが報告されています。
この場合、店は何も契約していなくても、予約したつもりで来店した顧客と向き合うことになります。原因が店の受付ではなく、店の外にある発信型サービスの側にあっても、困るのは店です。席の用意がなく、顧客に不便をかけるうえ、身に覚えのないトラブルで店の評判を落とすことも考えられます。
少なくとも、自店の情報が発信型サービスへ無断で掲載されていないかを一度確認しておくことと、予約の問い合わせを受けた際に「どのサービス経由の予約か」を聞き取れる体制を整えておくことが、実務上の備えになります。
出典・参照:
事例:受電型AIを導入した3店舗は、AIと人の役割をどう決め直したか
店舗が自ら契約する受電型AIは、導入すれば終わりではありません。この章では、受電型AIサービス「アイブリー」の導入事例から、高齢客への対応、常連客への対応、当日予約の扱いという3つの場面で、店舗がAIと人の役割をどう決め直したかを紹介します。
高齢客の「電話に出てほしい」に応える
札幌で居酒屋「BIRD WATCHING」を営むAKI NAGAOは、約50席の店を平日3〜4名、週末6名のスタッフで回しています。週末は1日20件を超える電話があり、営業前にも5〜6件かかってきます。多くは予約の確認や「今から入れますか」という問い合わせで、来店中の顧客への対応が疎かになることが一番の課題でした。
アイブリーの導入後は、月に100件前後ある予約電話の約半分をAIが処理しています。同店はこの自動化を、スタッフ1人分の働きに相当すると受け止めており、そのぶん顧客1人ひとりに丁寧に接客できるようになったといいます。
一方で、高齢の顧客は有人での対応を望みました。当初、電話の最初の案内では「店舗へ直接つながる」選択肢を最後に置いていましたが、これを最初に案内するよう変更しています。若い顧客は自動応答での予約に抵抗がなく、高齢の顧客は人に出てほしい。この違いを、案内の順序で吸収した形です。
受電型は受付の順序や案内文言を店舗側で調整できるため、こうした要望に合わせられる点が、店舗が制御できる範囲の限られる発信型との違いです。
常連客への対応をどう残すか
東京・日本橋の魚料理専門の和食割烹「室町 三谷屋」は、店主が調理から接客までを担う小規模な店です。電話は1日に20〜25件、忘年会シーズンなどの繁忙期は50件以上。仕込みの最中に電話に出るたび手を洗い直す負担が、何十回も続いていました。
導入後、新規の業者からの営業電話はAIが一次対応し、既存の取引業者からの電話は分けてスタッフが受ける設定にしています。営業電話の95%以上は受ける必要がなくなり、1日あたり約30分、1カ月で数十時間が空きました。
予約を入れた顧客には、最終的にスタッフが折り返して直接話す運用を残しています。三谷屋では、AIの応対が少し素っ気なく感じられても、信頼関係のある顧客であれば関係は損なわれないと考えているようです。AIに任せるのは一次対応、顧客と関係を結ぶ場面は人が担う、という切り分けです。
当日予約を自動確定にするかどうか
創業4年目で都内に6店舗を展開する「和食日和おさけと赤坂」は、顧客の大半が予約来店で、客単価は8,000〜10,000円の日本酒に力を入れた和食店です。営業中の予約電話で接客が疎かになることや、休憩中に営業電話がかかってくることが課題でした。
電話自動応答サービスを探すなかで、アイブリー以外の多くのシステムは、当日の予約をAIが自動で取るフローでした。山口代表は「当日予約のお電話は直接受けたい」と考え、これらの候補を見送っています。
アイブリーでは、当日予約を自動応答の対象外とし、スタッフが直接受ける設定にしました。そして、コース内容の確認、予約時間への遅刻連絡、キャンセルの連絡といった電話はAIが処理しています。
導入後は、ピーク時間帯に「電話がつながらない」という指摘がなくなり、スタッフは接客に集中できるようになりました。
3店舗に共通する、AIと人の役割の決め方
3店舗に共通するのは、「AIに何を任せ、何を人に残すか」を、店舗側が自分たちの事情に合わせて決めている点です。
| 店舗 | AIに任せている電話 | 人に残している対応 | 決める軸 |
|---|---|---|---|
| AKI NAGAO | 通常の予約対応、営業時間外の電話 | 有人対応を望む顧客の直接の電話 | 顧客の年齢層 |
| 室町 三谷屋 | 新規の業者からの営業電話の一次対応 | 既存の取引業者からの電話、予約客への最終的な折り返し | 顧客との信頼関係 |
| 和食日和おさけと赤坂 | コース内容の確認、遅刻連絡、キャンセルの連絡 | 当日予約の受付 | 店の方針 |
決める軸は店ごとに異なります。
- 年齢層によって電話に求めるものが変わるなら案内の順序を変える
- 信頼関係のある顧客には、最後に人が連絡する
- 当日予約のように店が直接受けたい電話は、最初から自動応答の対象にしない
どれも、他店の設定を写しただけでは出てこない判断です。
受付条件を店舗側で調整できる受電型だからこそ、こうした判断を導入の前にも後にも重ねられます。AI受付サービスは、「導入すれば問題が解決する」と安心せず、運用しながら自店に合わせて調整する前提で検討することが求められるのです。
出典・参照:
執筆者
DXportal編集長
町田 英伸
自営での店舗運営を含め26年間の飲食業界にてマネージャー職を歴任後、Webライターとして独立。現在はIT系を中心に各種メディアで執筆の傍ら、飲食店のDX導入に関してのアドバイザーとしても活動中。『DXportal®』では、編集長としてすべての記事の企画、及び執筆管理を担当。特に店舗型ビジネスのデジタル変革に関しての取り組みを得意とする。「50s.YOKOHAMA」所属。


