【2025年最終】年内に対応したい!金融庁が推奨する中小企業のサイバーセキュリティ対策と実務

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有事の初動対応における「鉄則」と「NG行動」

有事の初動対応における「鉄則」と「NG行動」

どれほど対策を講じても、侵入を100%防ぐことは不可能です。したがって、侵入された直後の「初動対応」が被害の規模を決定づけます。ここでは現場が徹底すべき行動指針を解説します。

被害拡大を防ぐための初動の鉄則

ウイルス感染や不正アクセスの疑いがある場合、最優先すべきは「被害の封じ込め」です。

  1. ネットワークからの切り離し:感染が疑われる端末のLANケーブルを即座に抜く。Wi-Fi接続であれば機能をオフにする。これにより、他の端末やサーバーへの感染拡大を物理的に遮断する
  2. 記録と報告:画面に表示されたエラーメッセージや脅迫文を(スマホのカメラ等で)撮影し、何が起きたかを記録する。その後、直ちに社内のセキュリティ担当者や経営層、および必要に応じて警察やIPA(情報処理推進機構)へ報告する

証拠保全を損なうNG行動

一方で、パニックに陥った担当者が良かれと思って行い、事態を悪化させる行動があります。原則として、以下の行為は避けるべきであることを周知徹底してください。

【NG行動1】電源を切る・再起動する

電源を落とすと、メモリ上に残っている攻撃の痕跡(ログやマルウェアの挙動データ)が消滅してしまい、原因究明やフォレンジック調査(デジタル鑑識)が困難になります。(※ただし、機器からの発煙など物理的な安全に関わる緊急時は、人命と安全確保を最優先してください。)

【NG行動2】ウイルス対策ソフトでフルスキャンをかける

調査前にスキャンを行うと、ファイルのタイムスタンプが更新されたり、痕跡が削除されたりする可能性があります。すぐに専門家の支援が仰げない場合でも、まずは「ネットワークからの隔離」を優先し、スキャンや削除は専門機関の指示を待ってから実施するのが賢明です。

官民連携の強化と活用すべき支援制度

官民連携の強化と活用すべき支援制度

政府は、中小企業のセキュリティ対策を支援するため、負担軽減策や補助制度を拡充しています。2025年度に活用可能なリソースを紹介します。

報告負担の軽減:共通フォーマットの導入

これまで、サイバー攻撃を受けた企業は、警察、金融庁、個人情報保護委員会など、複数の行政機関へ個別に報告を行う必要があり、その事務負担が復旧作業の妨げとなっていました。

これを受け、政府は2025年10月1日より、DDoS攻撃およびランサムウェア事案に関する「共通報告様式」の運用を開始しました。これにより、一度の入力で関係省庁へ情報を共有できる仕組みが整い、企業はインシデント対応そのものに注力できる環境が整備されます。

中小企業向け支援策の活用(2025年度版)

自社だけで対策が困難な場合は、以下の公的支援を積極的に活用すべきです。

サイバーセキュリティお助け隊サービス

「サイバーセキュリティお助け隊サービス」は、IPAが認定する、中小企業向けの安価で実用的なセキュリティサービスです。監視、駆除、保険がセットになっており、運用の手間をかけずに基本的な防御体制を構築できます。2025年度にはサービス基準の見直しが行われ、よりサプライチェーンの実態に即した内容へ進化する予定です。

SECURITY ACTION(セキュリティアクション)

SECURITY ACTION(セキュリティアクション)」とは、中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを宣言する制度です。この宣言を行うことで、IT導入補助金などの申請要件を満たすことができるケースがあり、経営的なメリットも享受できます。

専門人材への相談

「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」などの国家資格を持つ専門家へのアクセス支援も強化されています。2025年4月には、企業向けの新たな「サイバーセキュリティ相談窓口」も開設される予定であり、有事の際の駆け込み寺として機能します。

まとめ:DX推進の前提となる「防御」と「回復力」の確立

2025年、DXを推進する中小企業にとって、サイバーセキュリティは「守りの盾」であると同時に、ビジネスを安定して継続するための「土台」です。

金融庁が求める水準は一見高く見えますが、リスクベース・アプローチに基づき、優先順位をつけて取り組めば決して不可能なものではありません。まずは「LANケーブルを抜くが、電源は切らない」といった初動の基本を全社員に徹底し、政府の支援制度を活用しながら、自社と取引先を守る体制を構築してください。

サイバーセキュリティ対策の遅れは、経営リスクそのものです。もし自社の現状に不安がある、あるいは具体的な対策手順の策定に課題を感じている場合は、専門家の知見を借りることも有効な選択肢となります。

DXportal®編集部

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