【警告】AIが常識を塗り替える時代。中小企業経営者が持つべき「覚悟とスピード」

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経営者に求められるトップダウンの「覚悟とスピード」

この激動の時代において、市場の可能性を掴み、企業を次のステージへ押し上げるためには、経営者自身がテクノロジーを主導する「覚悟」と、市場の変化に追いつく「スピード」が不可欠だと池森さんは強調します。

池森氏

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「生き残る企業には、経営者自身がAIを理解し、使いこなす力が求められます。スタートアップにおいては、経営者本人がAIリテラシーとフットワークを持ってトップダウンで進めていくことが必須です。外部の専門家任せでは、競争に勝つことは難しいでしょう。これが、AI時代を生き抜く経営者に求められる『覚悟』なのです。

また「スピード」という点でも、従来の開発サイクルでは、AI時代のスピード感に全く追いつきません。『企画して、1ヶ月後にモックアップ、3ヶ月後にMVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)』といった従来の開発サイクルでは現代ビジネスでは到底間に合いません。AIを活用し、数日でモックアップを作り、高速で検証を回すフットワークとスピード感が求められるのです」

この圧倒的なスピード感で市場の変化に対応する能力こそが、AI時代を生き抜くための鍵となるのでしょう。

未来へのメッセージ:危機感を希望に変えるには?

AIとヒューマノイドが労働市場を根本から変革する未来は、多くの企業や労働者にとって、絶望的な時代になる可能性を秘めています。しかし、この危機感を「希望」に変えるためには、どういったアクションを起こしていけばよいのでしょう?

最後に、絶望的な未来予測から希望へと向かうための、具体的なマインドセットと行動について、池森氏に伺ってみました。

池森氏

「富の集中が加速し、労働から資本への転換が進む未来において、企業経営者は、労働に依存するビジネスモデルから、資本やテクノロジーが資産を生む側に回る意識が必要です。これは、自社のビジネスモデルの抜本的な見直しであり、テクノロジーへの投資を加速させることを意味しています。」

この変化が避けられない以上、労働者もこの時代のなかで生き残る道を切り開いていくしかありません。現在、経営の舵取りを担う世代である50代後半から60代のシニア層にとっては、自分や自分の企業の将来を変え得る最後のチャンスだと池森氏は示唆します。

池森氏

「現在55歳ぐらいの人は、AIが労働市場を本格的に奪い尽くす10年後までの間に、これまでに培った知見、経験、ネットワークを武器に、一抜け(逃げ切り)できる可能性が残されている最後の世代と言えるでしょう。ですが、その未来は諦めた瞬間に終わります。

危機感を持って今すぐ学びを始め、新しい技術を恐れず使いこなすこと、そして、その知識を事業や社会貢献に活かす気概を持つことが、未来を切り拓く唯一の道となります。これまでに培った知見、経験、ネットワークを武器に、AI時代に対応するための知識と経験のアップデートを今すぐ始めるべきでしょう。」

さらに、労働力としてAIによる代替の波に最も晒されるリスクがある若い世代に向けては、より厳しい覚悟を求めるメッセージが送られました。

池森氏

「30代や40代の比較的若い世代にとって、AIやヒューマノイドの波は『逃げ切れる』問題ではありません。この世代の人たちは、AIリテラシーをもはやスキルではなく、生存本能として捉えるべきです。もし、AIエージェントがオンライン上の仕事の多くを奪い、ヒューマノイドがリアルの仕事を代替する未来が来れば、知識と経験の少ない若年層から仕事が失われ、収入が激減する可能性があります。そしてこれは決して絵空事ではなく、多くの識者たちが『予測』している近い将来の社会の姿なのです。

このAI時代を生き抜くためには、受け身ではなく、テクノロジーを自ら主導し、ビジネスの新しい形を創造していく姿勢が不可欠です。若い世代は、AIを『便利なツール』として活用するのではなく、『労働を代替する競争相手』として直視し、AIができない領域の学習、あるいはAIを『使う側』に回るための学習を、今すぐ血のにじむような覚悟で始める必要があるでしょう。

今すぐ行動を起こすことで、この危機感を原動力に変え、新しい技術を恐れず、学びを始めることこそが、未来を切り拓く唯一の道となるのです。」

取材を終えて

池森氏近影
池森氏近影

池森氏の言葉は、単なるDXのノウハウ論ではなく、一人の投資家・起業家として、今の世界の動きに対する強い「警告」でした。AIが加速させる変化のスピードは、私たちが想像するよりも遥かに速く、猶予はほとんど残されていないという現実を突きつけられた思いです。

特に、「労働力不足は一過性の問題であり、最終的にはヒューマノイドが代替する」という未来予測は、多くの企業が抱える人手不足という喫緊の課題への見方を根本から変えるものでしょう。しかし、この変化は多くの企業経営者や労働者にとって「絶望的な未来」が訪れる可能性を示唆しているのです。

DXとは、まさに「変革」を意味します。それは、自社のビジネスモデルを変えるだけでなく、経営者自身のマインドセットと、未来に対する覚悟を変えることなのです。この危機感を力に変え、即座に行動に移すことこそが、企業存続の必須条件となるでしょう。

インタビューの最後に池森氏がつぶやいた「結局、『勉強』していくしかないですね」という言葉が非常に印象に残った今回のインタビューでした。

(DXportal®編集長:町田英伸)

株式会社tsam代表取締役/池森裕毅氏プロフィール

1980年千葉県松戸市生まれ。東京理科大学中退後、起業家として活動開始。2005年にオンラインゲームデータオークションサイトRMTを運営する株式会社ポケットを設立し、2014年に売却。2011年にはソーシャル婚活サイトfriggを運営する株式会社フリッグを設立し、2013年に売却成功。現在は、株式会社tsamでスタートアップ支援とStoked Capitalで資金調達支援を行う傍ら、情報経営イノベーション専門職大学で客員教授、独立行政法人中小企業基盤整備機構で中小企業アドバイザーにも就任するなど、起業に関するトータルサポートを手掛けている。

>>株式会社tsam公式サイト

著書

  • 『デジタル人材のシン・キャリアガイド―スタートアップの始め方』ぱる出版
  • 『図解・ビジネスモデルで学ぶスタートアップ(監修)』株式会社日本能率協会マネジメントセンター
町田 英伸

執筆者

DXportal編集長

町田 英伸

自営での店舗運営を含め26年間の飲食業界にてマネージャー職を歴任後、Webライターとして独立。現在はIT系を中心に各種メディアで執筆の傍ら、飲食店のDX導入に関してのアドバイザーとしても活動中。『DXportal®』では、すべての記事の企画、及び執筆管理を担当。特に店舗型ビジネスのデジタル変革に関しての取り組みを得意とする。「50s.YOKOHAMA」所属。