【GAFAMの次はどこだ?】世界の次世代覇権予想⑧エネルギー・電力インフラ部門|デジタルの果てに、また電力があった

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ダークホース|SMRと核融合の開発企業

AI需要と電力・送電基盤の関係を整理する説明図解

正式ノミネート外のダークホースとして、SMR(小型モジュール炉)と核融合の開発企業を取り上げます。どちらも商用の発電はまだ始まっておらず、ビッグテックが電力の購入契約を先に結んだ段階の企業です。

SMR勢:Kairos Power・Oklo・TerraPower

ビッグテックが電力の購入契約を結んでいるSMR(小型モジュール炉)の開発企業は、Kairos Power、Oklo、TerraPowerの3社です。

Kairos Powerは、フッ化物溶融塩冷却型のSMRを開発しています。Googleとは、2035年までに最大500メガワット規模の電力を調達する開発契約を結びました。最初のSMRを実際に稼働させる目標時期は2030年です。

Okloは、オハイオ州で先進炉キャンパスを新設する計画で、Metaへ最大1.2ギガワットを供給する契約を結んでいます。稼働は早ければ2030年が目標です。TerraPowerは、Metaと、最大8基の原子炉から約2.8ギガワットを調達する契約を結んでおり、早ければ2032年に最初の2基からの供給開始を目指しています。

Metaは2026年1月、OkloとTerraPower、既存の原子力発電所を持つVistraの3社と、合計最大6.6ギガワット規模の原子力電源を確保する契約を発表しました。ただし、SMR3社の稼働目標は2030〜2032年で、Kairos Power、Oklo、TerraPowerのいずれも、SMRによる電力の供給は、まだ始まっていません。

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核融合勢:Helion Energy・Commonwealth Fusion Systems

ビッグテックが電力を先に買っている核融合の開発企業は、Helion EnergyとCommonwealth Fusion Systems(CFS)の2社です。

Helion Energyは、2025年7月にワシントン州で商用核融合発電所「Orion」の建設に着手しました。Microsoftとは2023年に電力購入契約を結んでおり、最初の発電所から最大50メガワットを2028年から供給する計画です。2026年にはシリーズGラウンドで4億6500万ドルを調達し、企業評価額は155億ドルに達しました。

CFSは、Googleとの契約により、バージニア州チェスターフィールド郡に建設予定の商用核融合発電所「ARC」から200メガワットを供給します。系統への接続は2030年代初めが目標です。ただし、この契約には条件があります。実証機「SPARC」(マサチューセッツ州デベンス)が、投入したエネルギーを上回る核融合エネルギーを生み出すことです。

ただし、両社とも、核融合による商用の電力供給は、まだ始まっていません。

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日本企業の勝ち筋|ガスタービンと送配電機器

AI需要と電力・送電基盤の関係を整理する説明図解

日本企業についても、「日本は原子力技術がある」という曖昧なイメージではなく、どの企業がどの設備で世界的な競争力を持つのかを見る必要があります。電力機器の分野では、日本の重電メーカーが生産能力の増強を相次いで打ち出しています。

  • 三菱重工業:ガスタービンの生産能力を2倍にするため、日米で1000億円超を投じると報じられている
  • 日立製作所(日立エナジー):米バージニア州に、大型変圧器の新工場を建設する
  • 東芝:日本とインドの送変電機器の工場に約550億円を投じ、2030年度に2024年度比で2倍以上へ引き上げる
  • 富士電機:千葉工場と川崎工場を再編し、変圧器・開閉装置の生産能力を50%高める
  • 明電舎:160億円を投じ、沼津事業所の変圧器の生産能力を2028年度に現状比で約50%増やす

背景には、老朽化した電力機器の更新、データセンター建設の増加、再生可能エネルギー・原子力の新増設があります。東芝の社長は、心配すべきは供給力不足による機会損失だと指摘しています。

国の側も動いています。この20年ほど、日本の電力需要は、省エネと人口減少で減り続けてきました。それが、データセンターや半導体工場の新増設、電動車や産業の電化を受けて、増加に転じる見通しです。

国は、データセンターの立地を国内で最大限に促したい。一方で、増える電力需要には、電源の確保と、さらなる省エネの両方で備える必要がある。この両立が、政策の焦点になっています。

経済産業省・資源エネルギー庁は2026年4月、省エネ・非化石転換法に基づく新たな措置を施行しました。柱は3つです。

  • 見える化:電気使用量、PUE、エネルギー消費原単位などを定期報告の対象に加え、事業者に自社サイトでの公表を求める
  • 新設の基準:2029年度以降に新設するデータセンターに、PUE1.3以下を求める
  • 対象の拡大:他社から借りた場所に自社のIT機器を置く「テナント型」も、PUEの算定対象に加える

PUEは、施設全体の消費エネルギーをIT機器の消費エネルギーで割った値で、低いほど効率が高いことを示します。従来の目標は「2030年度までに1.4以下」でしたから、新設分には、それより厳しい水準を先に示したことになります。基準を満たせなければ、合理化計画の提出が求められ、従わなければ、さらなる行政措置もありえるでしょう。

日本企業の勝ち筋は、完成品としての巨大発電所を丸ごと輸出することよりも、変圧器・タービンといった個別設備で世界的な競争力を発揮できるかどうかにあるのではないでしょうか。

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まとめ:AI時代の最重要資源は、データなのか、半導体なのか、それとも電気なのか

世界の覇権は、物理資源からデータへ移ったように見えました。しかしAIによって、再び物理インフラの重要性が増しています。デジタルが進化すればするほど、物理インフラへ戻ってくる。この逆説こそが、本記事の中心的な発見です。

AI時代の電力覇権には、異なる立場の企業が関わっています。

  • 需要側:Microsoft・Google・Amazon・Metaが、原子力・SMR・核融合という、これまでテック企業とは縁遠かった分野へ次々と資金を投じている
  • 電気を作る側:Constellation Energy・NextEra Energy・Vistraが、その受け皿になっている
  • 設備を作る側:GE Vernova・Siemens Energyが、送変電設備という「見えないインフラ」の担い手になっている
  • ダークホース:SMRと核融合の開発企業が、まだ商用化前ながら、ビッグテックの先行契約を集めている

電力の確保が間に合わなければ、どれほど優れたAIモデルも、どれほど高性能な半導体も、実際に動かすことはできません。汽車には線路が、自動車には高速道路が、インターネットにはWWWが必要でした。ではAI時代に世界をつなぐ「網」は、再び物理的な送電網になるのでしょうか。次のビッグテックは、ソフトウェア企業ではなく「電気を握る企業」から生まれるのでしょうか。

次回、シリーズ第9回は最終回です。ここまで見てきた7部門を横断し、DXportal®編集部が「GAFAMの次」を担う次世代覇権企業を最終選考します。最終ノミネート10社を6つの評価軸で採点し、次世代覇権ランキングを発表します。

エネルギー・電力インフラ部門 ノミネート一覧

企業・組織区分ひとこと
Constellation Energy正式ノミネートMicrosoft・Metaとの原子力長期契約でスリーマイル島原発の復活を主導
NextEra Energy正式ノミネート再エネと原子力を併せ持ち、Googleと複数電源の開発を提携
GE Vernova正式ノミネートデータセンター向け電化事業受注が急増、送変電設備というボトルネックを握る
Siemens Energy正式ノミネートガスタービン・変電設備の需要急増、GE Vernovaと並ぶ電力インフラの担い手
Vistra正式ノミネートMeta・AWSと大型原子力契約、原子力とガスの両輪で発電容量を拡大
Kairos Power/Oklo/TerraPower(SMR)ダークホース開発・建設段階のSMRにGoogle・Metaが先行投資、稼働は2030年前後の見通し
Helion Energy/Commonwealth Fusion Systems(核融合)ダークホースMicrosoft・Googleが未商用化の核融合電力を先行購入、稼働目標は2028年前後

DXportal®編集部

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