明日から使える「5人ヒアリング」チェックリスト
読者がそのまま使える確認項目を用意しました。以下の表は、今週中に一つずつ埋めていくための実務ツールです。項目を埋める前に、まずは各相手の名前を書き出すところから始めます。
| 相手 | 聞くべき質問 | 目的 | 完了 |
|---|---|---|---|
| 社長・経営者 | 一番困っている経営課題は何か/使える予算はいくらか | DXの目的と後ろ盾を得る | □ |
| 現場のベテラン | 過去にうまくいかなかった改善は何か | 失敗パターンを避ける | □ |
| 実務担当者 | 毎日面倒な作業を3つ挙げるとしたら何か | 改善テーマの種を集める | □ |
| 管理部門 | 二重入力や承認待ちが起きている業務はどこか | 部門横断の詰まりを把握する | □ |
| 慎重派・反対派 | 新しい仕組みで何が不安か | 導入後の問題を先取りする | □ |
この表は、ただ埋めるだけのものではなく、埋めた後に「社内の困りごとマップ」を作るための素材です。5人分のヒアリングメモが手元に揃った段階で、共通して出てくるキーワード(例:転記/確認電話/押印待ち)を抽出すると、最初に手を付けるべき領域が浮かび上がります。
読者は、明日から次の3ステップで動けます。
- ステップ1:5人の名前を紙に書き出し、それぞれ15〜30分のヒアリング枠を打診する
- ステップ2:質問リストをメモアプリに保存し、聞いた内容をその日のうちに書き残す
- ステップ3:5人分のメモが揃ったら、共通する困りごとを3つに絞る
ここまで進めば、DX担当としての最初の成果物である「社内の困りごとマップ」がほぼ完成します。ツールや補助金の検討は、この地図ができてからで間に合います。
味方作りで気を付けたい3つの落とし穴
5人と会う過程で、新人DX担当が陥りやすい落とし穴が3つあります。ここを踏まえずに走ると、せっかくのヒアリングが逆効果になることもあります。順番に確認します。
落とし穴1:味方だけを増やそうとする
賛成派だけに会っていると、耳ざわりのよい情報しか集まりません。導入後に反対派から一斉に不満が噴出し、プロジェクトが止まります。最初から反対派の声を聞いておく方が、長期的にはプロジェクトを守れます。
落とし穴2:聞いた内容を放置する
ヒアリングした相手は「あの件、どうなったのか」と気にしています。1週間経っても何もフィードバックがないと、「結局、話を聞いただけか」と信頼を失います。ヒアリング後は、簡単でよいので「教えてもらった件について、来月までに整理して共有します」と一言返す運用を作ります。
落とし穴3:自分の意見を先に出す
新人DX担当は、話の途中で「それはこうすればいいのでは」と口を挟みたくなります。しかし初期のヒアリングでは、相手の言葉を最後まで聞くことに徹します。解決策を出すのは、5人分のメモが揃ってからで間に合います。
日経クロステックの2025年2月の記事でも、「2025年の崖」で語られてきたレガシー刷新論議以上に、現場・経営・情シスの合意形成が実務上の壁となっている点が改めて指摘されています。技術論よりも合意形成の設計が、成否を分けるという流れは変わっていません。
出典・参照:
まとめ:DX担当の最初の成果物は「社内の困りごとマップ」
本記事では、新人DX担当が着任直後に会うべき社内の5人と、それぞれに何を聞くべきかを整理しました。要点は以下のとおりです。
- DX担当の最初の仕事はツール選定ではなく、社内の困りごとを集めて味方を増やすこと
- 会うべき5人は「社長」「現場ベテラン」「実務担当者」「管理部門」「慎重派」の5役割
- 聞き方の軸は「教えてください」「困りごとを教えてください」であり、改革者として乗り込まない
- ヒアリングの成果物は、社内の困りごとマップとしてまとめる
- 賛成派だけでなく反対派の声も、導入後のリスクを減らす資産として扱う
貴社が明日から取れる行動は3つあります。1つ目は、今週中に5人の名前を書き出し、各15〜30分のヒアリング枠を打診すること。2つ目は、本記事のチェックリスト表をメモに転記し、質問を手元に置くこと。3つ目は、ヒアリングが終わったら、共通して出てきた困りごとを3つに絞り、経営者に共有することです。
DX担当として最初の成果は、ツールを入れることではありません。社内の困りごとマップを持ち、味方が5人できた状態を作ることです。そこから先の議論は、この地盤ができて初めて動き出します。
連載『新人DX担当の教科書』の次回では、集めた困りごとをどう整理し、経営者と現場に共有する形に落とし込むかを扱います。
執筆者
DXportal編集長
町田 英伸
自営での店舗運営を含め26年間の飲食業界にてマネージャー職を歴任後、Webライターとして独立。現在はIT系を中心に各種メディアで執筆の傍ら、飲食店のDX導入に関してのアドバイザーとしても活動中。『DXportal®』では、編集長としてすべての記事の企画、及び執筆管理を担当。特に店舗型ビジネスのデジタル変革に関しての取り組みを得意とする。「50s.YOKOHAMA」所属。
