DX担当にも休息を!キャンプで考えるデジタルデトックスという週末の贅沢

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ソロキャンプでタブレットを開くことを、否定しなくていい

編集部による撮影

正直に書きます。私も最近のソロキャンプでは、暗くなったテントの中で暇を持て余し、タブレットで映画を見て夜を過ごすことがあります。かつて「携帯と時計を車にしまおう」と声をかけていた人間が、キャンプ場の夜に配信サービスを立ち上げている。この揺れをどう受け止めるかは、現代のデジタルデトックスを考えるうえで避けて通れません。

結論から言えば、それを否定する必要はありません。デジタルデトックスは、スマートフォンやタブレットを悪者にする運動ではないからです。問題は、その画面を惰性で開いているのか、意識的に選んで開いているのかにあります。仕事のメールをチェックする指の動きの延長で動画を再生し続けているのなら、それは休息ではなく別の消費です。しかし、焚き火を消して寝袋に入り、今夜はこの映画をゆっくり見ようと決めて開くなら、それはひとつの休み方として成立します。

LINEリサーチが2024年3月に公表した調査でも、やってみたいデジタルデトックスの1位は「スマホを触らない時間や過ごし方を意識する」で、完全に断つことよりも意識的に距離を置く方向を望む人が多いという結果が出ています。全否定でも常時オンでもなく、その中間に使い方を置くのが、いまの現実的な選択だと言えます。

デジタルデトックスをストイックな修行にしてしまうと、平日の仕事に戻った瞬間の反動が強く、長続きしません。むしろ、画面を開くたびに「これは意識的に選んで開いているのか」と一度だけ問う。そのくらいの軽さがちょうどよいのです。

出典・参照:

「見ない時間」を作るための、経営者・管理職向けの現実的な手順

ここまで読んで、スマートフォンの通知を切りたい気持ちはあるけれど実際には切れない、と感じている方が多いと思います。

  • 経営者が見ておかないと不安
  • 急ぎの連絡が来たら困る
  • 完全に連絡を断つのは無責任ではないか

特に中小企業の経営者や、少人数の管理職ほど、この感覚は強くなります。だからこそ、精神論ではなく、仕組みで解決する必要があります。以下は、編集部と経営者の対話のなかで実際に効果のあった実務的な手順です。

金曜の夜までに、翌週の判断事項を先に潰しておく

多くの経営者が休日にスマートフォンを見てしまう理由は、月曜以降に決めなければならない事項が頭に残っているからです。金曜の午後、あるいは夕方に30分だけ時間を確保し、翌週に判断が必要な案件を書き出し、その場で決められるものは決めておきましょう。決められないものは、判断に必要な材料と期限を明確にしてから週末に入ります。頭のなかに未決事項が残っていないだけで、休日の通知確認は明らかに減ります。

緊急連絡フローを、経営者一人依存から外す

経営者が見ておかないと、という感覚の裏には、緊急連絡が経営者にしか届かない設計があります。

  • 取引先のトラブル
  • システム障害
  • 現場の事故

想定される緊急事象ごとに、一次受けとエスカレーション先を決め、SlackやTeams、電話番号を含めた連絡フローを文書にします。そのうえで、休日は一次受けを別の担当者に回し、経営者への連絡は本当に判断が必要な事象だけに絞りましょう。属人化した緊急対応の解消は、休息のためだけでなく、事業継続の観点からも避けて通れない論点です。

不在時間帯を、家族と社内に明示する

「今日の午後3時から明日の朝8時までは、通知に応答しません。緊急時はこの番号へ」

この一文をあらかじめ家族と社内に共有しておくと、こちらの罪悪感も相手の遠慮も減ります。

  • ステータス機能で不在を表示する
  • 自動応答メールを設定する
  • 共有カレンダーに休息時間を書き込む

このような具体的な操作にまで落とし込むと、実行のハードルはグッと下がります。

通知は「切る」ではなく「絞る」

もちろん、スマートフォンのすべての通知を切る必要はありません。家族からの着信、災害情報、事前に登録した特定の緊急連絡先だけは通す設定にし、それ以外のメール、チャット、SNS、ニュースアプリの通知を止める。スマートフォンを持って山へ行くことは、最近ではむしろ安全上推奨されるべきです。切るのは通知の音と表示だけで構いません。

復帰時のバッファを月曜の午前に確保する

見ない時間を作るなら、復帰時の反動もセットで設計します。月曜の午前中は、外部会議を入れず、メールとチャットの処理に集中する時間として空けておきます。休日に見なかった通知は月曜の午前に一気に片付けるという流れを作ると、休日中に何度も確認する必要がなくなります。ここまでを一連の運用として組めば、通知を見ない時間は無責任ではなく、むしろ組織にとっての合理的な設計になります。

出典・参照:

ワーケーションとの違い:目的を混ぜないという設計

「自然の中で仕事をする」という選択肢もあります。ワーケーションのように、自然のあるロケーションを選び、日中は集中して仕事をし、夕方以降を自然のなかで過ごすという過ごし方は、働き方の1つの形として有意義な形です。リゾートホテルや湖畔のコテージで仕事を進める時間には、都会のオフィスとは違う集中の質があると感じている経営者も多いはずです。

問題は、目的を混ぜてしまうことです。休むためのキャンプなのに、テントの中で仕事のメールを返し続けているなら、心は最後まで職場にいます。ワーケーションのつもりで来たのに、結局散歩ばかりして仕事が進まなかったなら、罪悪感が休息の効果を打ち消してしまうでしょう。休めるはずの時間も仕事の連絡を受けてばかりでは、そもそも本末転倒です。出発前に、この週末はどちらの目的で行くのかを確認しておくだけで、過ごし方の質は大きく変わります。

デジタルとの距離を設計するという意味では、ワーケーションもデジタルデトックスも同じステージにあります。仕事用の時間と、休息用の時間を、あらかじめ塗り分けておく。これができれば、キャンプ場でノートPCを開くことも、都心のホテルで通知を切ることも、どちらも成立する休み方になるのです。

DXは「常時接続」ではなく「接続と切断の設計」である

DXは「常時接続」ではなく「接続と切断の設計」である

最後に、DXportal®としての視点を書いておきます。DX(デジタルトランスフォーメーション)は、便利さや効率だけを追う取り組みではありません。

  • 連絡が取れること
  • 情報が見られること
  • 仕事がどこでもできること

これらは、確かに価値があります。しかしそれが、経営者や社員の心を24時間仕事に縛り続けるなら、判断力や創造性はむしろ削られていくでしょう。

DXportal®編集部が考えるDXによる仕組み化や効率化は、常時接続を無条件に推し進めるものではありません。人が健全に働き続けるために、いつつながり、いつ切るのかを組織として設計する思想です。

  • 休日連絡ルールをSlackのプロフィールに明記する
  • 権限委譲の範囲を文書化する
  • 緊急対応フローを一人依存から外す
  • 業務の属人化を可視化する

こうした地道な仕組みは、休むための工夫であると同時に、事業を継続させるためのDXそのものです。最近のDXで注目されるAI導入による業務効率化も、公私ともに「人の時間を作り出す」ためにあります。

経営者が週末に焚き火の前で何もしない時間を持てるかどうかは、個人の休息の質にとどまりません。その時間を許容できる仕組みが社内にあるかどうか、緊急時に判断を代行できる体制が用意できているかどうかが、組織の成熟度を映します。「電波は届く。でも、あえて見ない」という個人の選択は、実は組織のDXが背景にあってはじめて成立するのです。

デジタルデトックスの本質は、デジタルを捨てることではなく、主導権を自分に取り戻すことにあります。焚き火の前で何もしない時間は、非効率ではなく、次の判断力を回復する時間です。そこに座れる経営者と組織を作ることが、これからの週末の課題であり、DXの1つの到達点でもあります。我々が扱うべきDXは、業務効率化の先にある「休める組織」の設計まで含んでいるのです。

まとめ:電波を切るのではなく、通知を見ない習慣を取り戻す

本記事では、キャンプを題材にしながら、忙しい経営者やビジネスパーソンにとってのデジタルとの距離の取り方を考えてきました。要点を整理します。

  • 30年前は圏外に行けば自動的に仕事から切れたが、衛星通信の広がりでこの前提は崩れつつある
  • 現代のデジタルデトックスは、電波を切ることではなく、電波が届く状態で見ないと決める意志的な選択である
  • 総務省の調査や健康ニーズ調査が示すとおり、常時接続の疲労は個人の意志の問題ではなく構造の問題である
  • キャンプは「待つ」「ぼんやりする」「何もしない」時間を取り戻す装置として機能する
  • ソロキャンプで動画を見ること自体は否定されない。惰性で開くのか意識的に選ぶのかが分岐点になる
  • 休むためには、判断事項の前倒し、緊急連絡フローの脱属人化、通知の絞り込み、復帰バッファの確保が現実解となる
  • DXは常時接続の推進ではなく、接続と切断を組織として設計し、休める仕組みをつくる思想でもある

もちろん、次の休日にいきなり「キャンプに行きましょう!」と言いたいわけではありません。まずは今週末のうち3時間だけ、家族と社内に共有したうえで通知を切り、その時間に何を感じるかを試してみてください。

「休んでいるつもりで、実は仕事の入口をずっと開けたままにしていなかったか」

この問いに向き合う3時間が、次の判断力を静かに回復させます。焚き火の前でなくても、リビングの椅子でも構いません。始まりはいつも小さな試行からです。経営者であるあなたの考え方がシフトチェンジすれば、貴社の組織文化もそこから少しずつ動き出すのではないでしょうか。

町田 英伸

執筆者

DXportal編集長

町田 英伸

自営での店舗運営を含め26年間の飲食業界にてマネージャー職を歴任後、Webライターとして独立。現在はIT系を中心に各種メディアで執筆の傍ら、飲食店のDX導入に関してのアドバイザーとしても活動中。『DXportal®』では、編集長としてすべての記事の企画、及び執筆管理を担当。特に店舗型ビジネスのデジタル変革に関しての取り組みを得意とする。「50s.YOKOHAMA」所属。