図面配布・差し替え台帳の雛形と確認指標
5ルールを毎回意識して守るのは負担が大きいため、簡単な台帳にまとめると運用しやすくなります。ここでは、台帳の項目と、試行後に確認したい指標、参考にできる公的な事例を紹介します。
台帳に記録する項目
次のような列を持つ表を作ります。既存の表計算ソフトでも、図面管理アプリのメモ欄でも構いません。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 図面ID | 図面を一意に特定する番号 |
| 図面名 | 図面の名称 |
| 現行Rev. | 現在の改訂番号 |
| 変更理由 | 今回の改訂で何が変わったか |
| 更新者・承認者 | 誰が更新し、誰が施工可として承認したか |
| 施工可承認日時 | 施工可として承認した日時 |
| 発行・配布担当 | 正本置き場へ発行し、現場へ配布した人 |
| 正本URL | 正本置き場への参照先 |
| 配布先 | 配布した現場監督・職種・業者 |
| 受領確認 | 配布先が受領したことを確認した日時 |
| 紙・端末の旧版処理 | 旧版の紙・データをいつ・誰が無効化したか |
台帳の効果を確かめる指標
この台帳を試行的に使い始めたら、次のような指標を数週間追ってみることをおすすめします。
- 最新版はどれかという問い合わせの件数
- 図面を探すのにかかる時間
- 配布してから、関係者全員の差し替えが確認できるまでの時間
- 受領未確認のまま残っている件数
これらが減っていけば、5ルールが実際に機能している目安になります。
公的な事例集に見る取り組み
国土交通省の「建設業における働き方改革推進のための事例集(令和5年5月)」には、図面版管理に関連する2つの取り組みが紹介されています。ある企業(東京都)の事例では、図面修正時に最新版や正しい発行者が分からなくなるという課題に対し、クラウド上で最新版を適正に更新・共有できる環境を整えました。
また、日建建設株式会社(福岡県)の事例では、施工管理アプリで資料を共有する仕組みとあわせて、資料の保管ルールをあらかじめ決めておく運用を取り入れています。
いずれも版管理の効果だけを切り出して定量的に示した資料ではなく、複合的な取り組みの一部であるため、「同じルールを整えれば同じ効果が出る」と単純に約束するものではありません。あくまで、運用を設計する際の参考事例ととらえてください。
出典・参照:
原本性・著作権・二次利用は、契約で別に取り決める
5ルールと台帳は、現場の運用を整えるための仕組みです。契約上の原本性や著作権、二次利用の許諾までは、クラウドの運用だけで置き換えられません。次の事項は、契約や覚書で別途取り決める必要があります。
- 図面やBIMデータの編集・二次利用の範囲(著作権が発生し得る)
- 設計図書とBIMデータの内容が一致しない場合の優先順位
- 各当事者の責任の範囲
クラウド上で閲覧・共有できることは、二次利用の許諾や責任の所在が決まっていることを意味しません。国土交通省の「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第3版)」や著作権法にも、この点への注意が示されています。
個別の契約関係の法的な結論はケースごとに異なるため、必要に応じて契約書や専門家に確認しながら、社内の運用ルールとあわせて整えておくことをおすすめします。
出典・参照:
まとめ:更新完了の条件を決め、5ルールと台帳を一現場・一工種から始める
図面の版管理は、クラウドへ上げた時点では終わりません。更新完了までを運用に組み込む手順は、次の3つに整理できます。
- 更新完了の条件を決める:承認済みの図面を正本置き場へ発行し、対象者の受領を確認し、紙や端末の旧版を無効にするまでを完了と定める。あわせて「最新」と「施工可」を分ける。
- 5ルールを一現場・一工種で運用する:正本置き場、状態と権限、最小限の版情報、配布記録、旧版の無効化を、その現場のルールとして決める。
- 台帳に記録し、指標で確かめる:承認者、配布先、受領確認、旧版の処理を台帳に残し、問い合わせの件数や受領未確認の件数を数週間追う。減っていれば、ほかの工種や現場へ広げる。
誰が承認し、誰に配り、旧版をいつ無効にしたかが台帳に残れば、最新版かどうかを記憶ではなく記録で確認できます。契約上の原本性や著作権、二次利用の許諾は、この運用とは別に取り決める事項なので、契約書面もあわせて確認しておきましょう。
小さな建設会社の図面版管理は、大がかりなシステムを入れる前でも、更新完了の条件と台帳1枚から始められます。まずは、次の図面変更から、一現場・一工種で台帳に1行残してみてください。
執筆者
株式会社MU 代表取締役社長
山田 元樹
社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援を過去のエンジニア経験を活かし、エンジニア + 経営視点で行う。DX推進の観点も含め上場企業をはじめ多数実績を持つ。

