事業継続力強化計画(ジギョケイ)を現実的に取得する進め方

「BCPを一から整備するのは負担が大きい」という声に対して、中小企業が最初に検討する価値があるのが『事業継続力強化計画(ジギョケイ)』の認定取得です。ジギョケイは中小企業庁が所管する制度で、様式や項目が中小企業向けに簡素化されており、実務担当者が現実的に取り組める規模感になっています。
本章では、ジジョケイの位置づけとメリット、取得までの流れ、継続運用の勘所を整理します。
ジギョケイの位置づけとメリット
事業継続力強化計画(ジジョケイ)は、中小企業が災害・感染症などのリスクに備える取り組みを整理し、経済産業大臣が認定する制度です。認定を受けると、次のような経営面での恩恵あ受けられます。
- 税制優遇
- 日本政策金融公庫の低利融資
- 補助金審査での加点
- 認定ロゴの使用
中小機構の資料でも、災害対応力の強化と取引先からの信頼獲得の両面で位置づけられており、公共入札の加点対象としても採用が広がっています。
認定取得までの具体的ステップ
実務的な進め方の目安は、以下の通りです。制度の細部は所管の資料で最新版を必ず確認してください。
| ステップ | 実施内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 1 | 自社の災害リスクと業務影響の整理 | 1〜2週間 |
| 2 | 対策内容と初動体制、平時の取り組みの検討 | 2〜3週間 |
| 3 | 計画書(様式)の作成 | 1〜2週間 |
| 4 | 電子申請(gBizID)による申請 | 数日 |
| 5 | 認定通知の受領(審査期間目安1〜2か月) | 1〜2か月 |
この表からも、着手から認定まで概ね3〜4か月というレンジで動くことがおわかりでしょう。まずは自社の該当担当を決め、初回検討会の日程を決めるところからはじめてみてください。すべてを一気に整えるのではなく、着手日を確定させることが現実的な一歩となるのです。
継続運用でつまずかないための工夫
認定は取得して終わりではなく、実効性を保つには年1回の見直しと訓練が求められます。よくある失敗は、担当者の異動でメンテナンスが止まり、災害時に古い連絡先しか残っていないパターンです。
- 人事異動時のBCP項目引き継ぎをルール化する
- 年1回の訓練を経営会議の定例議題に組み込む
- 取引先や自治体との連絡先を年度末に一括更新する
対策としては、このような運用へ落とし込むと、形骸化を避けやすくなります。
出典・参照:
自治体との災害時応援協定を受注機会に変える視点
災害時応援協定は、多くの地域で建設業協会や運送事業者組合を通じて締結されていますが、個別企業が自治体と直接協定を結ぶ動きも広がりつつあります。この協定は災害時の初動対応の枠組みであると同時に、平時からの信頼関係を可視化する仕組みでもあります。
本章では、応援協定の全体像、建設・物流企業が果たせる役割、そして受注機会につながる関係構築の視点を扱います。
応援協定の全体像
内閣府の防災情報のページでは、企業と自治体・住民団体との地域防災協定が減災の取り組みとして位置づけられ、民間事業者の役割が明示されています。協定内容は、次のように幅広く、企業の業種・強みに応じて設計されてます。
- 道路啓開
- 応急復旧
- 物資輸送
- 避難所運営支援
- 要配慮者搬送
締結にあたっては、企業側が「提供可能な資源」と「対応可能な範囲」を具体的に示す必要があります。
建設・物流企業が果たせる役割
建設会社では重機・車両・技術者の稼働情報、物流会社では車両・倉庫・配送網が期待される資源です。これらを協定書に落とし込む段階で、平時からの棚卸しの精度がそのまま反映されます。
逆に言えば、社内に散在する情報を整理する過程そのものが、防災DX対応の第一歩となるのです。協定は書類の締結ではなく、災害時に自治体と協働できる状態づくりの結果である、と捉えると位置づけが明確になります。
平時からの関係構築が本丸となる
自治体案件を受注する際、担当課との日常的な接点や訓練参加が評価されるケースは各地で見られます。応援協定を締結している企業は、平時から自治体防災担当と情報交換する機会があり、これが次の公共案件の受注機会へ波及するケースも少なくありません。
防災協定を「災害時の義務」ではなく「地域における信頼の資産化」と位置づけ直すと、経営上の意味が明確になります。
出典・参照:
まとめ:防災DXは新システム導入ではなく情報を共有できる状態づくり
本記事の要点を整理します。
- 防災DXは行政のシステム刷新ではなく、地域企業の受注条件と信頼構築に直結する経営課題である
- 自治体入札の総合評価や経営事項審査、大手サプライチェーンのBCP要請で、BCP関連認定が評価対象になり始めている
- 事業継続力強化計画(ジギョケイ)は中小企業が最短で着手できる現実的な第一歩となる
- 応援協定や自治体との平時の関係構築は、地域からの信頼を経営資産へ変換する取り組みである
- 本質は新システムの導入ではなく、自社の人員・車両・重機・拠点・在庫情報を平時から整理し、必要な時に共有できる状態を整えることにある
押さえておきたい視点は明確です。自社が保有する経営資源を1枚のシートに棚卸ししてみることが、最初の手がかりになります。全社的な大改革ではなく、担当者1名が半日で着手できる範囲で構いません。その1枚が、今後の防災協定、ジギョケイ申請、入札書類、大手取引先のBCP要請への回答の起点となるのです。
防災DXを新たな負担として抱え込むのではなく、地域から選ばれる企業への転換点として捉え直せるかどうかが、貴社の防災対応を「コスト」から「経営資産」へ変えていく分かれ目になるのです。
執筆者
株式会社MU 代表取締役社長
山田 元樹
社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援を過去のエンジニア経験を活かし、エンジニア + 経営視点で行う。DX推進の観点も含め上場企業をはじめ多数実績を持つ。