「AI博覧会 Summer 2026」AI時代の組織・人材・ビジネス変革の最前線【イベント・レポート④】

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AI博覧会 Summer 2026

  • 開催日:2026年8月26日(水)~27日(木)
  • 開催場所:新宿住友ビル 三角広場
  • 主催者:株式会社アイスマイリー

AIを導入したものの、期待した成果が出ていない。

そうした悩みを抱える企業が増える中、2026年8月26日・27日の2日間、新宿住友ビル 三角広場で「AI博覧会 Summer 2026」が開催されました。

10回目を迎えた同イベントには、AI技術開発企業など約80社が出展し、200以上の製品・ソリューションを展示。40以上のカンファレンスも行われ、2日間で約9,000人が来場しました。

DXportal®では、AI時代の人材育成、企業と個人が生き残るための組織戦略、そして注目を集めた3社の展示から、AIの「社会実装(研究や技術を、実際の現場で使える形にすること)」とビジネス活用の現在地を読み解きます。 

【本記事の要点】

  • 松田氏の講演:研修をインプットで終わらせず、アウトプットとフィードバックで成果につなげる学習設計
  • 宮家氏の講演:AI導入の成果を分ける組織の意思決定速度と、AI普及後の差別化軸となる「人間力」
  • 注目3社の展示:ヒューマノイドロボット、業務自動化、社内情報検索の最新ソリューション

AIネイティブな人と組織を作る:AI時代の人材育成の新常識

「AIを業務に導入したものの、期待したほど組織の生産性が上がらない」「研修を行っても受講者の行動変容につながらない」と悩む経営者や人事・人材育成担当者は多いのではないでしょうか。

本記事では、ラーニングテクノロジー領域で20年以上、企業の学びを支援してきたユーム テクノロジージャパン株式会社代表取締役・松田しゅう平氏による特別講演の模様をレポートします。

20年間変わらない人材育成の課題:「インプット偏重」からの脱却

講演の冒頭、松田氏は20年にわたり学習業界を見てきた立場から、企業内人材育成が抱える構造課題を指摘しました。従来の企業研修やeラーニングは、コンテンツの視聴やレポート提出といった「インプット」に偏りがちです。その結果、「投資対効果(ROI)はどうなっているのか」「研修で現場の行動や成果は変わったのか」と問われても、明確な成果を示しづらい状況が続いていました。

理想的な学習効果を追求するなら、受講者それぞれに合わせたエグゼクティブコーチング(経営層向けの個別指導)が最適ですが 数百〜数万人規模の組織での実施は膨大な費用と時間がかかり、現実的ではありません。

この課題を打開するには、認知科学や心理学に基づく「学習の科学」の実践が必要です。質の高いインプット素材を活かしつつ、学んだ内容を自らの言葉で話す「アウトプット」と「フィードバック」を繰り返すことで、知識が脳に定着し、実務で成果を出せる「パフォーマンス型」の学習が成立すると強調しました。

なぜテクノロジーが進化しても人の生産性は上がらないのか?

スマートフォンの普及や生成AI(大規模言語モデル、LLM)の登場で、 ハイクオリティな学習コンテンツを誰でも簡単に作成・配信できるようになりました。しかし、日本生産性本部の調査をはじめとするデータが示す通り、教材の質が向上しても、人間の生産性が劇的に高まったわけではありません。

松田氏はその理由について、「コンテンツ(インプット)の質が上がるだけでは、人のパフォーマンス改善にはつながらないからだ」と語ります。

AI時代に求められるのは、最新のAIツールを教材作成に使うだけでなく、人間の能力を引き出す「AIリテラシー」と「AIネイティブな学習設計」です。LLMは学習者に対し、「ティーチャー」「コーチ」「チューター」の3役を、高圧的にならず均質かつ的確に果たせます。このポテンシャルを引き出すことが、組織全体の成長を左右します。

知識の内面化(インターナリゼーション)を促す3つのプロセス

学習内容を実務で使えるレベルに高めるには、知識を自分のものにする「内面化(インターナリゼーション)」が不可欠です。松田氏は、効果的な研修・トレーニング設計で外せない3つのプロセスを挙げました。

  1. 主体的な思考:単に知識を注入するのではなく、学習者自らが考え、問いを立てて知識を構築する仕組みを組み込む
  2. タイムリーな支援と実践(プラクティス):疑問が生じた際に適切なフィードバックを受けられる環境を整え、実務に近いシミュレーションを行う
  3. 自発的な評価:上司や講師から一方的に評価されるのではなく、学習者自身が「どこまで理解でき、何が足りないか」を把握する

インプットを提供するだけでアウトプット設計がない研修は、厳しい言い方をすれば「効果が薄い」と言わざるを得ないと指摘しました。

新常識「AGL」が実現する、AIと対話する次世代の学習デザイン

講演後半では、教える側・学ぶ側の双方にイノベーションをもたらす最新テクノロジー「AGL(AI Generated Learning / AI Guided Learning)」の活用例が実演されました。

従来、新入社員のオンボーディング(早期に職場へなじみ、戦力となるための受け入れ支援)や企業価値(コアバリュー)の浸透プログラムを1から設計するには、 動画撮影、テキスト要約、理解度テストの作成などで2〜3時間以上を要していました。

しかし、AGLを活用した「AIネイティブ」なアプローチでは、AIとの対話を通じて30分未満でコースが完成します。元資料をアップロードすると、AIが「対象者は誰か」「学習時間」「テストの有無」などを質問し、コース構成や学習設計のアドバイスを含む「ラーニングマップ」を自動生成。受講者もAIと対話し、選択問題や記述問題、質疑応答を重ねることで、習熟度に合わせたパーソナライズド・ラーニング(アダプティブラーニング)を体験できます。

AIと人が役割を分担し、成果を出す組織へ

最後に松田氏は、AI時代の人材育成のポイントを3点にまとめました。

  1. インプット中心から「パフォーマンス型」学習へ移行する:コンテンツを「見て終わり」にせず、アウトプットとフィードバックを中心に設計する
  2. 「学習の科学」と「AI」を融合させる:AIを安全な対話パートナー・コーチとして活用し、知識の内面化プロセスを自動化・効率化する
  3. 「AIネイティブ」な教え方・学び方を実装する:AIがなければ成立しない新しい学習体験を取り入れ、人とAIが担う領域を明確に切り分ける

「知識を通じて人をつなぎ、業務に活かし、すべての人がやりがいを感じながら成果を出すことを支援したい」というミッションを掲げる同社の取り組みは、同社の取り組みは、AI時代の企業人材育成に向けた具体的な指針を示しています。 

AI時代を生き残る条件とは?「小規模・最速」の組織展開と「人間力」で勝つ戦略

「AIを活用して業務効率化や売上アップを実現したい」「AIに自社の仕事が奪われるのではないか」と期待や不安を抱く経営者や事業主は多いでしょう。本稿では、創業初年度から正社員1名で高い収益性を誇る株式会社HOW TO代表取締役・宮家昂希氏による特別講演「秒進分歩 AI時代を生き残る企業と個人の条件」の模様をレポートします。

AIは「強力な味方」であり「人間の役割を脅かす存在」

講演の冒頭、宮家氏は「AIは業務を助ける味方であると同時に、人間の役割そのものを無意味にしかねない脅威でもある」と提示しました。多くの企業が人手不足の解消や自動化を目指してAIに期待を寄せる一方、ここ1年ほどのAIの進化は目覚ましく、自律的に16時間以上も複雑なタスクをこなし続けるレベルに達しています。

特に2025年は「AIエージェント元年(人の指示を受け、自律的に作業を進めるAIが広がった年)」と呼ばれ、Claude CodeやCodex(いずれもAIによるプログラミング支援ツール)など高度なツールが急速に普及しました。夜間にAIを稼働させれば翌朝には仕事が完了している世界が現実となり、AIエージェントを活用する企業としない企業との差は開き続けています。 

宮家氏は「もはやAIを使うことは大前提。便利なツールを探すだけでなく、自社や自分が『AIに負けない存在』になるための戦略が必要だ」と呼びかけました。 

なぜ日本企業はAI導入で成果が出ないのか? 差を生むのは「組織の速度」

組織でAIをどう活用すべきかについて、宮家氏は日米のデータを紹介しました。AI導入率は日本87%、米国90%と大差はありません。しかし、「AIを導入して成果が出ている」企業は、米国38%に対し日本はわずか9%です。

AIの性能に大きな違いがないにもかかわらず、なぜ差が生じるのでしょうか。宮家氏は要因を「組織のあり方と意思決定のスピード」と分析します。

日本企業に多い「経営陣が検討し、稟議(関係者の承認を回して決裁を得る社内手続き)を通して数カ月後に実行する」スタイルでは、 市場やAIの進化に追いつけません。着手時には手法自体が陳腐化しているためです。成果には、現場が最新ツールを素早く試し、有効な知見を即座に共有・仕組み化する「高速な仮説検証のサイクル」が必要です。

「小さな組織+コミュニティ」が変化に強い理由

(株)HOW TOは、正社員が宮家氏1名という超小規模な体制ながら、上場企業に負けない価値を提供し、高い利益率を維持しています。「会社の規模が大きいほど多くの価値を提供できる時代は終わりました。売上は最大化するものではなく最適化するものです」と語る同氏が重視するのが「コミュニティ運営」です。

一人で収集・検証できる情報には限界がありますが、得意分野を持つメンバーが集まるコミュニティを形成・活用すれば、最新の知見が集まり、迅速な検証が可能になります。

この仕組みは人材獲得や事業開発にも応用できます。インターンシップなどで若い優秀な人材をコミュニティ化したり、部活動やサークルのように社員が外部コミュニティで学び続けたりすることで、組織の硬直化を防げます。宮家氏も、コミュニティ内の日常的な対話からアイデアを拾い、その場で出資・事業化を判断するスピード感で新規事業を生み出しています。

AIが普及した先の差別化軸は「原点回帰の人間力」

宮家氏は、今後2〜3年で誰もがAIを使いこなす時代が到来すると見ています。 員がAIを活用する環境で、企業や個人は何で差別化を図るのでしょうか。宮家氏が示した答えは、原点回帰である「人間力」です。

どれほどAIが進化しても、人間の深い感情や文脈を汲み取る「洞察力」「観察力」「傾聴力(定性的なヒアリング力)」では人間に軍配が上がると、同氏は指摘します。 スポーツやアウトドア、異分野への挑戦など、机上の勉強にとどまらない実体験を持つ人ほど、これから高く評価されるようになります。

同社でも、システム開発のプロトタイプ(試作品)制作やコード生成はAIで迅速に行いますが、 最も力と時間を注ぐのはクライアントへの「ヒアリング」です。雑談や対話を重ね、「現場の本当の課題は何か」「どのようなUI(画面や操作性の設計)なら使いやすいか」を察知する人間力こそ、 他社との差になります。

秒進分歩の時代を生き抜くために

講演の締めくくりとして宮家氏は、「AIの進化は秒針が刻むように絶え間なく進んでいます。この変化の波に乗り、柔軟に帆を広げていくことが重要です」と強調しました。

AIに代替されることを恐れず、AIを強力な相棒として乗りこなしながら、人間ならではのクリエイティビティや対話力、すなわち「人間力」を磨き続けること。これこそが、AI時代に企業と個人が生き残り、価値を生み出し続ける条件であると結び、特別講演を終えました。

AI・人・組織の変革を支える「社会実装」の最前線

株式会社セールスフォース・ジャパンや株式会社PKSHA Technology、株式会社SHIFT AIなど約80社が出展しました。DXportal®では、 その中から特徴的なソリューションを展示した3社を紹介します。

純国産ヒューマノイドが切り拓く日本の可能性

西郷 潤氏

「AI博覧会」で純国産ヒューマノイドロボットを展示し、注目を集めたのがドーナッツロボティクス株式会社です。同社取締役COO(最高執行責任者)の西郷 潤氏は、 「私たちはヒューマノイドロボットを中心に開発している会社です。設立は2016年で、今年で10年目を迎えました」と語ります。

同社は画像と言語を理解する最先端のAI技術を搭載した量産型二足歩行ヒューマノイド「cinnamon 1」などを展開しています。建設や製造、介護業界での省人化ソリューションとして期待されています。 ブースではダンスや会話コミュニケーションなどが得意な小型機や大型機を展示し、来場者が足を止めて撮影する姿も見られました。

西郷氏は、米中が先行するAI市場における日本、そして同社の可能性について次のような見通しを示しました。 「世界で紛争が起きている中、それに加担しない安全で安心なロボットが求められてくると考えています。必然的に日本製のロボットが求められると考えます。私たちはその流れを牽引し、業界のリーディングカンパニーになれるよう努力していきます」と意気込みを語りました。

生成AIで人の業務を自動化、伴走型支援で導入を後押し

大塚空来氏

「AI博覧会」にて、オーダーメイドのAI開発とコンサルティングで注目を集めた株式会社Co-Labo AI。創業者でCEOの大塚空来氏は、 「私たちは、生成AIの活用に特化したコンサルティングファームです。特に、業務の何%をAIに置き換えられているかを示す『AI転換率』を軸に、人が担う業務の自動化・効率化を支援しています」と語ります。

同社はエンジニアとビジネスの知見を併せ持つ強みを活かし、各企業の課題に応じた業務効率化を実現します。ブースでは来場者に対し、デモを交えながら課題をヒアリングしていました。 大塚氏は来場者の反響について「弊社では最初にヒアリングを行い、課題や業務内容に応じてデモ等を活用しながら、導入後のイメージを具体化していきます。実際の活用イメージを確認いただいた上で、本格的な開発・導入をご検討いただけるよう伴走しています。この点が、日本企業にとってハードルとなっている部分を乗り越えられるとして、非常に好評をいただいています」と手応えを明かしました。

2024年12月設立のスタートアップながら、AI導入の壁を解消する伴走支援で評価されています。

AI検索で社内情報を一元化、業務の工数を削減

 市橋 渉氏

「AI博覧会」のブースにて、自社開発の社内ポータルサービス「ColorKrew Intra」を紹介していた株式会社Colorkrew。同社プロダクト・セールス統括の市橋 渉氏は、「弊社はもともと『ドリームキャスト』(セガの家庭用ゲーム機)のインターネットプロバイダーとして生まれた会社です。 特徴としては、システムをすべて100%内製(自社内での開発)で開発している点が挙げられます」と語ります。 

本展示会で注目を集めた「ColorKrew Intra」は、分散しがちな社内情報を一元化し、クラウド移行や運用の課題を解決するAIを中核に据えた社内ポータルです。最大の特徴であるAI検索機能について、市橋氏は「私たちのAIチャット機能で検索していただくと、イントラ内のテキストだけでなく、アップロードされたPDFやExcel、Wordファイルの中のテキストまで検索対象として返します」と強みを説明。欲しい情報へ素早くアクセスでき、工数削減に貢献すると語りました。

同社のシリーズ製品全体では、1,000社以上の導入実績があり、大手企業や自治体など幅広く活用されています。 

まとめ:

「AI博覧会 Summer 2026」を取材して強く感じたのは、AI活用の焦点が「何を導入するか」から「AIを前提に、人と組織の仕事をどう変えるか」へ移っていることです。講演では、研修をインプットで終わらせず、アウトプットとフィードバックを通じて成果へつなげる学習設計や、AI時代に適した高速な意思決定の在り方が語られました。

一方、展示ブースでは、ヒューマノイドロボット、業務自動化、社内情報検索など、AIを具体的な現場課題の解決に結び付けるサービスが並んでいました。AIの進化が加速するほど、企業に問われるのは導入のスピードだけではないと考えます。

AIと人が担う役割を見極め、試して学び、組織の仕組みとして定着させる力が欠かせません。貴社では、AIに任せる仕事と人が担う仕事を、どこで切り分けているでしょうか。

DXportal®編集部

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