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ラティス・テクノロジーは5月22日、東京・千代田区のJPタワーホール&カンファレンスで「製造業DX×3Dセミナー2026」を開催しました。テーマは「AI時代の製造業DX×3D」です。会場では軽量3D技術「XVL」を軸に、設計・生産・保守を横断するデータ活用の最新動向が示されました。
製造業の現場では近年、設計変更の増加、多品種化、人材不足、技能継承など、課題が複雑に絡み合っています。生成AIをはじめとするデータ活用への期待が高まる一方で、「そもそも現場で使えるデータをどう整備するのか」が新たなテーマになりつつあるのです。こうした背景のもと、軽量3Dデータを活用した業務連携が再び注目を集めています。
今回のイベントで印象に残ったのは、見るための3Dから業務で使う3Dへと、活用フェーズが大きく変わり始めていた点でした。各社の講演や展示では、設計情報を現場へ流通させ、品質や保守まで含めて活かす取り組みが相次いで紹介されています。そこから浮かび上がってきたのは、単なる3D活用ではなく、製造業データ基盤をどう構築するかという問いでした。
【本記事の要点】
- ラティス・テクノロジーが5月22日に開催した「製造業DX×3Dセミナー2026」では、見るための3Dから業務で使う3Dへと活用フェーズが変わり始めている現在地が示された
- 鳥谷氏は基調講演で、複雑なものづくりを徹底する「面倒くさいものづくり」を競争力に据え、3D情報を業務全体で共有する3Dパイプライン構想と新たな3D共有基盤を提示した
- アルゴグラフィックスや大塚商会、ダイテック、図研プリサイトなど各社の展示では、転記レスや現場入力、品質フィードバックなど、データを現場で循環させる実装が相次いだ
- 生成AIへの期待が高まる今こそ問われるのは、AI活用以前の製造業データ基盤の整備であり、小さな実装の積み重ねが次の製造業DXにつながる
日本の製造業は「面倒くさいものづくり」で勝負する

イベント冒頭では、ラティス・テクノロジー代表取締役社長CEOの鳥谷浩志氏が基調講演を行いました。講演全体を通じて伝わってきたのは、日本の製造業が置かれた危機感と、その中で何を競争力として磨くべきかという強い問題意識です。
鳥谷氏はまず、自動車業界を中心とした市場環境の変化に言及しました。EVシフトの揺り戻しやグローバル競争の激化により、製造業を取り巻く環境は不確実性を増しているといいます。その一方で柔軟な戦略転換を進める企業事例を紹介しながら、いま重要なのは戦略と組織の柔軟性だと語りました。
その文脈で提示されたのが、密な連携と疎な連携という考え方です。PLMのように厳密なデータ統合を行う仕組みが密連携であるのに対し、軽量3Dデータによる柔軟な情報流通は疎連携として機能します。鳥谷氏は、橋で街をつなぐのか、船で柔軟につなぐのかという比喩を用いながら、両者を組み合わせることで柔軟なデータ活用が可能になると説明しました。
講演中盤で示されたのが、日本の製造業が今後進むべき方向としての「面倒くさいものづくり」というキーワードです。これは東京大学の藤本隆宏氏の言葉だといいます。鳥谷氏は、中国から「そんな面倒なことは日本にやらせておけ」と言われるくらい複雑なものづくりを徹底すべきだと語りました。そして、ものづくりとは設計情報の連鎖であるという藤本氏の思想こそ、自社が推進してきた3Dパイプラインの考え方そのものだと位置付けたのです。
“現場で使える3D”へ、活用フェーズが変わり始めた
では、その面倒くさいものづくりをどう実現するのでしょうか。鳥谷氏はその方向性として、三つのキーワードを提示しました。
1.こだわり設計
2.よりどり生産
3.活かし切り活用
こだわり設計では、複雑な内部構造を高精度ですり合わせながら、外部インターフェースを標準化することで、製造DXやサービスDXを成立させる考え方が示されました。よりどり生産では、多品種・混流生産に対応するため、複雑化する生産ラインを3Dで検証しながら柔軟な生産体制を構築する必要性が説かれます。そして活かし切り活用では、熟練者のノウハウを形式知化し、多能工化や技能継承へつなげていく構想が語られました。
中でも印象的だったのが、3D図面DXに対する問題提起です。多くの製造現場では現在、3D設計されたデータを一度2D図面へ変換し、そこから組立図やQC工程表、作業指示書などを個別に作成しています。その結果、設計変更のたびに大量の修正作業が発生し、現場の負荷を高めているといいます。
鳥谷氏はこれを、日本の製造業全体が抱える構造課題だと指摘しました。その上で、3D設計したものをそのまま共有可能な形で流通させるべきだと提案します。重要なのは3D図面を作ることではなく、3D情報を業務全体で共有することだというのです。
その実装として同社は、「追加」「統合」「継承」という三要件を備えた新たな3D共有基盤を提示しました。あわせて、月額5,000円から利用できるビューア「PMI Navigator」の出荷も発表し、誰でも3Dを扱える環境づくりを進めていく方針を示しています。
講演終盤では、「D×V×F>R」という変革公式も紹介されました。現状への危機感(D)、ビジョン(V)、最初の一歩(F)が現場の抵抗(R)を上回ったとき、変革は前へ進んでいきます。鳥谷氏の講演は単なる技術論ではなく、現場で動き始めるDXをどう実現するかという実装論として、強く印象に残る内容でした。
各社事例に見る、3Dデータ活用の実装フェーズ
イベントでは、アイシンやトヨタ自動車東日本、日本精工、東京エレクトロンなど、ユーザー企業による講演を通じて具体的な活用事例も紹介されました。
それらの事例に共通していたのは、3Dを表示する段階から、3Dを業務へ組み込む段階へ進んでいる点です。単なるデジタル処理ではなく、設計変更へどう追従するか、現場でどう定着させるかという、実運用レベルの課題へ踏み込んでいる姿が印象に残りました。
展示会場で見えた「現場定着型DX」のリアル
展示エリアでも、現場で使える3Dをテーマにした提案が数多く見られました。会場全体に共通していたのは、単なる3D表示ではなく、業務プロセスへどう組み込むかという視点です。とりわけ目立っていたのが、転記レスへの取り組みでした。
アルゴグラフィックスは、3D図面データ流と現場活用をテーマに出展しました。従来、多くの現場では設計図面をExcel帳票へ転記しながら後工程資料を作成しており、そこには膨大な工数と修正負荷が存在しています。これに対し同社は、3Dデータを直接帳票へ活用することで、転記作業そのものを不要に。旧版・新版の3D差分比較機能によって設計変更箇所を視覚的に確認できる仕組みも提案しており、設計変更へ追従できる現場運用まで踏み込んでいた点が印象的でした。
大塚商会は、3D作業指示書×電子帳票をテーマに展示を行い、3Dモデルを確認しながら現場実績を入力できる仕組みを紹介しました。従来の現場では紙図面を参照しながら別システムへ入力するケースが多く、情報参照と入力作業が分断されていたといいます。同社は3Dを見るだけでなく、入力・共有・分析までつなげることで、現場データ活用基盤として発展させようとしています。入力情報はBIや各種分析基盤とも連携でき、設計情報と現場実績を結び付けたデータ循環の方向性が示されていました。
ダイテックは、現場定着を重視したアプローチを展開していました。同社はWebブラウザだけで利用できるクラウド型Web3D環境を提供しており、サーバー構築なしで活用を開始できます。タブレットやスマートフォンにも対応し、現場展開のハードルを大きく下げているのが特徴です。さらに特徴的だったのが、現場で理解されるコンテンツ設計まで支援している点でした。マニュアル制作のノウハウを生かし、複雑な設計情報を必要最小限へ整理しながら保守や作業指示へ落とし込みます。3Dを導入するのではなく、現場で使い続けられる状態を作るという視点が強くにじんでいました。
図研プリサイトは、PLMと3Dを融合した次世代PLMを提案しました。同社の「visual BOM」は図面・BOM・品質情報・3Dデータを統合管理する仕組みで、今回は品質情報連携が大きな注目を集めています。過去のトラブルや不具合情報をPLMへ集約し、3D上で可視化することで、設計者はモデルを確認しながら過去の不具合や類似問題を参照できるようになります。これは品質情報を後工程の記録ではなく、設計段階で活用する知見へ変える取り組みといえるでしょう。
会場ではこのほか、キヤノンITソリューションズ、トヨタシステムズ、構造計画研究所、図研、Airion、IMIS、プラーナーなども関連ソリューションを展示していました。各社に共通していたのは、3Dを見る時代から3Dを業務へ埋め込む時代への転換です。転記レス、現場入力、品質フィードバック、保守支援とアプローチは異なるものの、いずれもデータを現場で循環させる方向へ向かっていました。
AI時代に求められる「製造業データ基盤」
今回のイベントで浮かび上がったもう一つのテーマが、AI活用以前の基盤整備です。生成AIへの期待が高まる一方で、製造業では設計情報や現場データが分断されているケースもまだ残っています。そのため、どのデータをどう現場で流通させるかが、あらためて問われています。
今回の講演や展示では、設計・製造・品質・保守をデータでつなぎ、部門を横断して活用できる環境を整備しようとする方向性が随所に見られました。ラティス・テクノロジーが描く世界観も、単なる3D活用にとどまりません。軽量3Dデータを介して部門間をつなぎ、現場の知見を循環させ、将来的な高度データ活用へつなげていくことにあるといえます。
その意味で今回のイベントは、AIをどう使うかを語る場というより、AI時代に必要な製造業データ基盤をどう整備するかを考える場でした。巨大な改革論だけでDXは前に進みません。まずは設計変更へ追従できること。現場で情報共有できること。保守や品質の情報を循環できること。そうした小さな実装を積み重ねることが、次の製造業DXにつながっていくのではないでしょうか。今回の「製造業DX×3Dセミナー2026」は、製造業DXが構想から実装へ移行しつつある現在地を、極めてリアルに映し出すイベントとなっていました。
まとめ:製造業DXは「見る3D」から「使う3D」へ動き出す
今回のイベントで際立っていたのは、3D活用が設計部門だけのテーマではなくなっていたことです。これまで製造業の3Dは見るための技術として語られがちでしたが、各社の講演や展示から浮かび上がってきたのは、現場でどう使うか、設計変更へどう追従するか、どう定着させるかという、実務に根ざした視点でした。
AIという言葉も単独ではなく、その前提となるデータ基盤をどう整備するかという文脈で扱われていました。AIは魔法の技術ではなく、活用できる設計情報や現場データがあって初めて機能します。3D×AIというバズワードだけでは終わらない、現場実装へ向かう製造業DXのリアルがそこにありました。あなたの会社の現場では、設計情報はいま、どこで止まっているでしょうか。
執筆者
DXportal®運営チーム
DXportal®編集部
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