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「ECサイトを立ち上げた。専門のツールも導入した。なのに、なぜか成果がでない(続かない)」
そんな悩みを抱える中小企業のEC事業責任者や通販・D2C担当者は少なくありません。実は、EC事業のDXが進まない主因は、ツールの有無ではなく「継続的に改善し続けられる運用体制」の有無にあることが多いのです。
この記事では、EC運用が特定の担当者に依存しやすい構造と、外部支援を活用する際の判断基準を解説します。読み終えたとき、自社のEC運用体制を点検する視点が得られるはずです。
【本記事の要点】
- EC事業のDXが進まない主因は、ツールの有無ではなく「継続的に改善し続けられる運用体制」の有無である
- EC運用の属人化は「少人数だから」だけでなく、部署設計・KPI未整備・引き継ぎ不在という組織構造の問題でもある
- 外部支援を使うべきか内製を残すべきかは、社内データの整備状況・KPI設計・業務の専門性・契約リスクという4つの軸で判断できる
- 外部委託そのものを目的化させず、支援会社の報告を評価できる知識を自社側にも残すことが重要
- EC運用の外部支援サービス例として、FORCE-R株式会社・株式会社いつもの2社を、あくまで候補の1つとして紹介する
ツールを入れたのに、なぜEC事業の成果は続かないのか
ECサイトの構築ツールや受注管理システムを導入する中小企業は、この数年で着実に増えています。しかし、導入したものの、売上や集客が思うように伸び続けないという声も同じくらいよく聞かれます。
ここで見落とされがちなのは、ツールやサイトの導入自体はEC事業のゴールではなく、あくまで出発点にすぎないという点です。EC事業で成果を出し続けるには、データを見て仮説を立て、施策を試し、結果を検証して次に活かすという改善のサイクルを回し続ける必要があります。ツールを入れた時点で「DXが完了した」ととらえてしまうと、このサイクルが止まり、成果も頭打ちしてしまうのです。
つまり、EC事業のDXが進まない主因は、多くの場合ツールの有無や性能差ではありません。継続的に改善し続けられる運用体制があるかどうかそのものが、成果を左右しているのです。
EC運用が「1人」に依存する3つの要因
EC運用には、多岐にわたる業務が含まれます。
- 集客施策の立案
- 受注処理
- 顧客対応
- 商品企画
- 施策の見直し
中小企業の多くは、こうした業務を専任の担当者1人、あるいは他業務と兼任する数名で回しています。
しかし、この体制には構造的なリスクがあります。それは、担当者が退職・異動した瞬間に、これまで蓄積してきた運用ノウハウが失われ、業務そのものが止まってしまうことです。また、集客施策は打てても、その後のCVR改善や商品企画の見直しといった「地道な改善」まで手が回らないケースも珍しくありません。改善が担当者個人の経験と勘に依存してしまい、組織としての再現性が生まれにくいのです。
ではなぜ、そうなってしまう理由が「少人数だから」という説明だけでは足りないのでしょうか。実際には、担当者を1人から数人に増やしても、属人化が解消されない中小企業は珍しくありません。その背景には、少なくとも3つの構造的な要因があります。
要因1:EC運用が複数領域にまたがる「越境型」の仕事だから
EC運用という仕事の性質そのものが、複数領域にまたがる「越境型」であることが1つ目の要因です。
- 集客
- 受注処理
- 顧客対応
- 商品企画
- 物流連携
- データ分析
これらは本来、マーケティング・営業・情報システムといった別々の専門領域にまたがります。しかし多くの中小企業では、EC事業を独立した部署として設計しておらず、既存部署の中の「担当業務の1つ」として位置づけられています。結果として、複数領域を横断的に理解できる人材に業務が集約されやすくなります。
要因2:成果指標(KPI)が言語化されていないから
成果指標(KPI)が言語化されていないことも、大きな要因の1つです。EC運用の成果は、売上や転換率だけでなく、在庫回転や顧客対応の質など複数の指標が絡み合います。これらを整理し、誰が見ても判断できる形にする作業は手間がかかるため後回しにされがちです。結果として「何を改善すべきか」の判断が、担当者個人の経験と勘に依存したまま固定化されます。
要因3:引き継ぎの仕組みが整備されていないから
引き継ぎの仕組みが整備されていないことも見逃せません。EC運用では、日々の意思決定の背景(なぜこの施策を選んだか、なぜこの数値を重視するか)が担当者個人のメモや記憶にとどまりやすく、標準化されたマニュアルとして残らないまま業務が拡大していきます。担当者を増員しても、この「暗黙知の言語化」ができていなければ、実質的な属人化は解消されません。
つまり属人化は、単に人手が足りないからではなく、部署設計・評価制度・引き継ぎ体制という3つの構造的な穴が重なって生じている場合が多いのです。こうした状態のままツールだけを増やしても、運用の負荷が増えるだけで、根本的な解決にはつながりにくいでしょう。
外部支援を活用する際に見るべき基準
属人化を解消する選択肢の1つが、外部の運用支援サービスを活用することです。ただし、外部支援には「提案はしてくれるが実行は自社任せ」というパターンと、「実行まで伴走してくれる」パターンがあり、この違いを見極めずに契約すると、期待した効果を得られないことがあります。
外部支援を使うべき企業、内製を残すべき企業の判断軸
外部支援の活用を検討する前に、まず自社が「外部に任せるべきフェーズ」にあるのか、「内製で体制を整えるべきフェーズ」にあるのかを見極める必要があります。判断の軸となるのは、次の4点です。
- 社内データの整備状況:受注データや顧客データが、自社の担当者が扱える形で蓄積されているか。データが整理されていない状態で運用ごと外部に任せると、成果の検証も自社ではできなくなる
- KPI設計の有無:何をもって成果とするかの指標が、既に自社内で定義されているか。指標が定まっていないまま外部委託すると、支援会社の報告をそのまま鵜呑みにするしかなくなる
- 業務の専門性と頻度:日常的に発生する定型業務か、単発かつ高度な専門知識が必要な業務か。前者は内製化に向き、後者は外部の専門性を借りる方が効率的なケースが多い
- 委託時の契約・責任分担リスク:契約が終了した際に、運用ノウハウやデータが自社に残る契約になっているか。在庫欠品やクレーム対応など、責任の所在が契約書上どちらにあるかも事前に確認しておくべき点である
この4軸に照らして、社内にデータもKPIも整っておらず、まず土台を整える必要がある企業は、いきなり全面的な外部委託に踏み切るより、部分的な支援から始めて自社にノウハウを蓄積していく方が、結果的に投資対効果が高くなる傾向があります。逆に、データやKPIは自社で整理できているが実行のリソースが足りない企業は、外部の実行力を借りることで改善サイクルを早められるでしょう。
支援会社を選ぶ際の基準
内製より外部支援が適していると判断した場合、支援会社を選ぶ際に確認したい基準は、次のとおりです。
- 戦略や施策の提案だけで終わらず、実行のフェーズまで伴走してくれるか(提案書や契約書に、実行支援の具体的な工数・体制が明記されているか)
- 支援を通じて得た知見やノウハウが、自社の担当者に蓄積される仕組みになっているか(定例報告が数値の共有だけで終わらず、施策の意図や判断基準まで共有されるか)
- 対応できる範囲が、集客・サイト運用・受注処理・商品企画のどこまでをカバーしているか(自社が将来的に内製化したい業務まで委託範囲に含めてしまっていないか)
- 自社の業種や商材規模に近い支援実績があるか(実績の規模が自社と大きく異なる場合、提案の粒度が合わない可能性がある)
とくに注意したいのは、「丸投げ」に近い形で外部委託してしまうと、支援が終了した時点で社内に何も残らないという事態です。外部支援は、自社の運用体制を補強し、いずれは自走できる状態へ近づけるための手段として位置づけることが重要です。
外注そのものが目的化するリスク
もう1つ注意すべきなのは、「外部に委託すること自体」がゴールになってしまうケースです。外部支援サービスを導入した時点で「DXに取り組んだ」と捉えてしまうと、ツール導入だけで安心してしまうのと同じ落とし穴に、形を変えて陥ることになります。
- 外部委託が目的化すると、支援会社からの報告数値を検証せずに受け入れる
- 成果が出ない場合も「専門家に任せているから大丈夫」と点検を怠る
- 契約更新の判断基準が「特に問題が起きていないから」という消極的な理由にとどまる
こういった状態に陥りがちになるのです。これでは、属人化の担い手が社内の1人から外部の1社に変わっただけで、運用体制そのものは変わっていません。
外部支援を機能させるには、自社側にも「何を任せ、何を自社で判断するか」を線引きし、支援会社からの報告を評価できるだけの最低限の知識を担当者が持ち続ける姿勢が欠かせません。外注は運用体制を補強する手段であって、それ自体がゴールではないという点は、忘れずにおきたいところです。
EC運用の外部支援サービス例
ここでは、EC運用の外部支援サービスの例として、FORCE-R株式会社と株式会社いつもの2社を紹介します。自社の状況に照らして、選定基準と照らし合わせながら検討する材料としてご覧ください。
FORCE-R株式会社は、創業から約10年、EC運用支援に特化してきた企業で、次のような複数のチャネルに対応しています。
- Amazon
- 楽天市場
- TikTok Shop
- 自社EC
- Shopify
- Qoo10
同社の特徴は、50万人以上のモニター調査によってユーザー目線の課題を発掘したうえで、モール運用、広告運用、商品企画・開発までを自社で一貫して実行支援する点です。提案だけでなく実行フェーズまで伴走する体制を敷いている点は、前章の選定基準と照らし合わせる際の参考になるでしょう。
株式会社いつもは、東証グロース市場に上場する企業で、戦略立案から市場調査、サイト構築、広告運用、物流、CRMまでをワンストップで提供しています。特に、ワンストップで対応範囲が広い点は特徴的です。
ただし、外部支援を活用して成果が出るかどうかは、支援会社の実行力だけでなく、自社側がどこまで一貫した体制の見直しに付き合えるかにも左右されます。前章で挙げた4つの判断軸に照らして、自社が今どのフェーズにあるかを整理したうえで検討してみてください。
FAQ:よくある質問
Q. 外部支援を使うと、費用はどれくらいかかりますか。
A. 支援範囲や契約形態によって幅があり、一律の目安を示すことはできません。まずは自社が任せたい業務範囲を明確にしたうえで、複数社から見積もりを取り、対応範囲と費用のバランスを比較することをおすすめします。
Q. 小規模なEC事業でも、外部支援を検討する価値はありますか。
A. 規模の大小より、「担当者1人に依存した状態が続いているか」が判断材料になります。小規模でも属人化リスクが高い場合は、部分的な支援から検討する価値があるでしょう。
Q. 外部支援を使えば、必ず成果が改善しますか。
A. 支援を活用しても、自社側に改善サイクルを回す体制が育たなければ、効果は長続きしません。前章で挙げた「実行まで伴走してくれるか」「ノウハウが自社に残るか」という基準を、契約前に確認することが重要です。
まとめ|EC事業のDXは「体制」で決まる
EC事業のDXが進まない主因は、ツールの有無ではなく、継続的に改善し続けられる運用体制の有無です。改めて本記事の内容をまとめます。
- EC運用の属人化は、部署設計・KPI未整備・引き継ぎ不在という組織構造の問題であり、「少人数だから」だけでは説明がつかない
- 外部支援を使うべきか内製を残すべきかは、社内データの整備状況・KPI設計・業務の専門性・契約リスクの4軸で判断する
- 外部支援を検討する際は、実行まで伴走してくれるか、ノウハウが自社に残るかを確認する
- 外部委託そのものを目的化させず、支援会社の報告を評価できる知識を自社側にも残す
自社のEC運用が、特定の担当者だけに依存していないか。改善のサイクルが、担当者の異動や退職があっても止まらない仕組みになっているか。そして、外部支援を使うにせよ内製を残すにせよ、自社側に判断の軸が残っているか。まずはこの3点を、自社の体制で点検してみてください。
執筆者
DXportal編集長
町田 英伸
自営での店舗運営を含め26年間の飲食業界にてマネージャー職を歴任後、Webライターとして独立。現在はIT系を中心に各種メディアで執筆の傍ら、飲食店のDX導入に関してのアドバイザーとしても活動中。『DXportal®』では、編集長としてすべての記事の企画、及び執筆管理を担当。特に店舗型ビジネスのデジタル変革に関しての取り組みを得意とする。「50s.YOKOHAMA」所属。



