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何かを調べるとき、今はAIに聞くことが当たり前になっている方も多いかもしれません。けれども、AIに聞く前は、Googleなどの検索窓に単語を打ち込む、いわゆる「ググる」ことがほとんどでした。では、あのころの私たちは、いったい何をググっていたのでしょうか。
当時は、知らない言葉を検索窓へ打ち込むために、まず単語へ削り、開いた検索結果を3〜5個のタブに並べて読み比べていました。そんな作業を、最近していないと感じることはないでしょうか。
いまは知りたいことの事情をAIに一文で話しかけるだけで、もっともらしい1つの答えがすぐに返ってきます。便利になったことは間違いありませんが、この変化を「検索エンジンからAIへの全面移行」と単純にとらえてよいのか、あるいは何かを見落としていないか、立ち止まって考えたことがある方は少ないかもしれません。
本記事では、国内外の調査データをもとに、検索からAIへ何が引き継がれ、人間の役目がどこへ移ったのかを整理します。
【本記事の要点】
- 日本の検索行動は「検索エンジンが主役のまま、AI利用が伸びる」段階にあり、全面移行したとはいえない
- 国内の生成AI利用者544人のうち64%が、AI要約だけで検索を終えることが「ときどき以上」あると回答している(全体の64%ではない)
- 従来の検索は候補のリンクを返し、人間が比較・統合していたが、生成AIは比較・統合済みの答えを先に返す。人間の役目は答えの検証へ寄っている
- 検索の時代にも、人間は何を覚え何を外部へ預けるかを道具に合わせて組み替えてきた
日本の検索は、まだAIへ「全面移行」していない
AIが広まったことで、「もう誰も検索エンジンを使わなくなった」と語られることがあります。しかし、日本で情報収集の実態を調べた国内の調査を確認すると、検索エンジンは今も情報収集の中心にあり、AIへ置き換わったとまではいえないようです。
検索エンジンは主役のまま、AI利用が伸びている
マクロミルが2025年3月に実施した調査(全国15〜59歳、有効回答3,097人)では、情報収集に使うサービスの上位はGoogle、Yahoo! JAPAN、YouTubeが維持しています。そのうえで、ChatGPTの利用率は前年比4.5ポイント上昇しており、とくに10代・20代の伸びが目立ちました。
ChatGPTやPerplexityを検索目的で使った人のうち、「検索頻度が増えた」と答えた人はおよそ6割から8割を超えますが、この数字はあくまで各サービスの利用者を母数にしたものであり、全人口の利用率ではありません。
出典・参照:
リンクを開かず終える「ゼロクリック」が広がっている
NTTドコモ モバイル社会研究所が2025年11月に実施した調査(全国15〜79歳、有効回答1,267人)では、生成AI利用者544人のうち64%が、検索結果のAI要約だけで満足し、リンクを開かずに調査を終えることが「ほとんど/よく/ときどき」あると答えました。
ただし、このドコモの調査は、利用者が自分の行動を思い返して答えた「自己申告」です。では、実際の行動を記録したデータではどうなのでしょうか。
米国の調査機関Pew Research Centerは、米国の成人900人が2025年3月にGoogleで検索した68,879件の閲覧ログを分析しました。その結果、検索結果にAI要約が表示されたときに、その下の通常の検索結果のリンクをクリックした割合は8%で、AI要約が表示されなかったときの15%より低くなっています。一方、AI要約の中に載っている引用リンクをクリックした割合は、わずか1%にとどまりました。
つまり、自己申告でも実際の行動でも、AI要約で調べ物を終える傾向が見られるということです。日本を含む6カ国を対象にしたReuters Instituteの調査でも、情報取得を目的とした週次のAI利用は、6カ国平均で2024年の11%から2025年には24%へ上昇しました。これは世界全体を代表する数字ではなく、あくまで調査対象6カ国の平均ですが、方向性は日本の数字とも重なる面があるのです。
同じ調査によれば、健康や政治のように影響の大きい領域ほど、AIの回答をひとまずの手がかりにしつつ、従来の情報源で裏づけを取る利用者が多いと分かります。こうした結果から分かるのは、今でも検索かAIかの比較ではなく、扱う話題のリスクに応じて使い分けているのが実態のようだ、ということです。
出典・参照:
検索とAIで、何の役割が入れ替わったのか
数字を並べただけでは、「AIは便利になった」以上の話には聞こえません。ここで考えたいのは、検索エンジンを使っていたとき、私たちは何をしていたのかということです。
検索エンジンが返すのは、答えそのものではなく、答えを探すための候補のリンクの一覧でした。そのリンクをいくつも開いて読み比べ、迷いながら比べて、自分なりの暫定の結論を作る。この作業は、これまで人間が担ってきたのです。
| 検索エンジン中心 | 生成AI中心 |
|---|---|
| 問いを短いキーワードへ翻訳する | 背景や条件を自然文で説明する |
| 候補のリンクを得て、人が比較・統合する | AIが先に比較・統合した答えを返す |
| 情報源の文脈や対立する見解が見える | 出典は脚注化され、回答本文が前面に出る |
生成AIは、この比較・統合の工程を先に引き受けます。いわば、便利さと引き換えに、出典の選び方、対立する見解、思いがけない寄り道は見えにくくなってしまうのです。
さらに、最近では検索エンジン自体がAI要約(AI Overviews:AIによる概要)を組み込み始めており、両者の境界はすでに曖昧になっています。検索かAIかという道具の名前で語るより、「候補を見せる仕組み」から「答えを生成する仕組み」へ重心が移ったととらえるほうが実情に近いでしょう。
ここまでの変化を見て、「AIに頼ると、人間の記憶や思考力が落ちるのではないか」と心配する方もいるかもしれません。ただ、同じような議論は、検索の時代にもありました。2011年にScience誌へ掲載された実験研究では、あとから調べられると分かっている情報について、人は内容そのものより「どこで調べられるか」を覚えやすい、と報告されています。
「あれ、何をググっていたんだっけ」と思い出せなくても、検索窓を開けば調べ直せる。私たちは検索の時代から、覚える仕事の一部を外へ預けてきました。AIの登場で急に始まった変化ではなく、その延長にある変化なのではないでしょうか。
出典・参照:
まとめ:探す人から、確かめて引き受ける人へ
検索とAIは、対立させて語るものではなくなりつつあります。変わったのは道具の名前ではなく、「候補を見せる仕組み」から「答えを生成する仕組み」へ、情報収集の重心が移ったという点です。
人間の役目は、リンクを比較しながら答えを組み立てる「探す人」から、AIが先に組み立てた答えを受け取り、確かめ、現場で使う「引き受ける人」へと変わりつつあります。
思えば私たちは、検索の時代にも、何を自分で覚え、何を外部へ預けるかを道具に合わせて組み替えてきました。AIの時代も、その延長にあります。AIの答えをどこまで任せ、どこから自分で確かめるのか。その線引きを自分で決められることが、これからの調べ方の基本になりそうです。
執筆者
DXportal編集長
町田 英伸
自営での店舗運営を含め26年間の飲食業界にてマネージャー職を歴任後、Webライターとして独立。現在はIT系を中心に各種メディアで執筆の傍ら、飲食店のDX導入に関してのアドバイザーとしても活動中。『DXportal®』では、編集長としてすべての記事の企画、及び執筆管理を担当。特に店舗型ビジネスのデジタル変革に関しての取り組みを得意とする。「50s.YOKOHAMA」所属。

