【本音の議論】「高すぎて手が出ない」への処方箋

高額な外部サービスに頼り切るのではなく、既存ライセンスの活用やAIの自動応答、段階的な導入により、現実的なコストで高い評価を得ることは十分可能です。
とはいえ、「重要性は理解できるが、EDRも24時間監視も、導入するには数百万・数千万かかるのではないか」と不安になる方も多いでしょう。確かに、大手ベンダーの提案をそのまま受け入れ、フルスペックの機能を全台に導入しようとすれば、費用は際限なく膨らみます。
しかし、DXを推進する賢いリーダーは、最小の投資で制度の要件をクリアする急所を突いています。ここでは、コストを大幅に抑えるための4つの戦略を提案します。
戦略1:今ある「標準装備」を使い倒す
最大の費用削減策は、新しいソフトを買い足さないことです。現在、Windows 11 ProにはMicrosoft Defenderという強力な防御エンジンが標準搭載されており、これだけでEPP(防御)としての役割を果たせます。
不足しているのは全社一括での管理機能ですが、これはMicrosoft 365のライセンスをBusiness Premium等へアップグレードするだけで手に入ります。個別に高額な製品を契約するよりも安価で、管理工数も削減できるでしょう。
戦略2:「人間」の代わりに「AI」に守らせる
EDRの運用でコストが膨らむ最大の原因は、アラートを分析するエンジニアの人件費です。そこで、自動応答機能が強い製品を選ぶことが有効な手立てとなります。
不審な挙動を検知した瞬間にAIが自動でその端末をネットワークから切り離す仕組みがあれば、夜間に人間が判断を下すまでのタイムラグをゼロにでき、高額な監視サービスへの支払いを最小限に抑えられます。
戦略3:重要なエンドポイントに「集中投資」する
予算が限られているなら、リスクベースで優先順位をつけることが賢明です。顧客の設計データを扱う端末、経理担当者の端末、サーバー管理者のPCなど、攻撃された際の影響が大きい箇所から優先的に導入します。
SCS評価制度においても、リスクアセスメントに基づいた段階的な導入は、理にかなったガバナンスとして評価されるポイントです。
戦略4:国の「セキュリティ補助金」を使い切る
SCS評価制度の普及は国策です。例えばIT導入補助金にはセキュリティ枠が設けられており、サービス費用の一部が補填されます。地方自治体独自の助成金が出ているケースも少なくありません。
補助金の活用を前提とした構成をベンダーに提案させることが、不可欠な一手です。
実装のステップ:資産管理から始める「負けない」セキュリティ

高度なツールの導入以前に、IT資産の把握とパッチ適用の自動化という基本を徹底することが、制度対応への最短距離となります。
コストを抑えて実効性を高めるには、導入の順番が肝要です。どれだけ高価なEDRを入れても、情報システム部門が把握していないPC(いわゆる「野良PC」)が社内に存在すれば、そこから崩壊します。
では、御社のIT資産は今、完全に把握できているでしょうか。ここでは、セキュリティ実装の基本ステップを紹介します。
ステップ1:IT資産管理の徹底
誰が、どの端末で、どんなソフトを使っているかをリアルタイムで把握できる状態にします。これがSCS評価制度の「特定」フェーズにあたります。
ステップ2:OSパッチ適用の自動化
攻撃の多くは、古くなったソフトウェアの脆弱性を突いてきます。 最新の状態に保つだけで、攻撃の大部分は防げるとも言われています。
ステップ3:EPP+EDRの統合導入
資産管理の延長線上で、統合管理できるエンドポイント保護を導入します。前述のMicrosoft365などの既存プラットフォームを活用することで、運用コストを抑えながら対策水準を引き上げられます。
まとめ:セキュリティは「ブレーキ」ではなく「アクセル」
セキュリティ対策を単なる費用や面倒な手続きと捉えると、どうしても後ろ向きな議論になりがちです。しかし、これからの時代においてSCS評価制度で高い評価を得ることは、「自社は信頼できるデジタルパートナーである」という強力な営業武器を手に入れることにほかなりません。
「あの会社は星3つだから、安心して重要な開発を任せられる」
「あのサプライヤーは対策が不透明だから、次回のコンペからは外そう」
セキュリティへの投資を行うことで、そんな会話が現実のものとなるでしょう。
セキュリティへの投資は、企業がデジタル社会で生き残るための入場料であり、競合他社に差をつけるためのアクセルです。まずは、自社のエンドポイント管理体制が今どうなっているか、パッチは当たっているか、PCの台数は把握できているのか。そんな当たり前の管理を見直すことから始めてみてください。SCS評価制度という大きな波を、自社のIT基盤をより強靭で、より稼げるものへと作り変える好機に変えていきましょう。
執筆者
株式会社MU 営業部
帯邉 昇
新卒で日本アイ・ビー・エム株式会社入社。ソフトウェア事業部でLotus Notesや運用管理製品Tivoliなどの製品担当営業として活動。その後インフォテリア株式会社、マイクロソフト株式会社で要職を歴任した。キャリア30年のほとんどを事業立ち上げ期のパートナーセールスとして過ごし、専門はグループウェアやUC、MA、SFA、BIなどの情報系で、いわゆるDXの分野を得意とする。(所属元)株式会社エイ・シームジャパン。