【業界インタビュー】ECサイト事業を、人の感性とAIの力で支援|株式会社メルカート

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企業がECサイトを十分に活用できるようになると、売上拡大だけでなく、消費者との良好なコミュニケーションにもつながります。EC事業に取り組んでいる、あるいはこれから始めようと考えている方にとって、その具体的な取り組み事例は大きなヒントになるはずです。

そこで今回は、ECプラットフォーム事業とECサイト構築・運営支援事業を展開する株式会社メルカート(以下、メルカート)に注目。同社が運営するECプラットフォーム「メルカート」では、人とAIの双方によるサポートを提供し、クライアント企業のECサイト立ち上げから運営・マーケティングまでを幅広く支援しています。

インタビューに応じてくださったのは、株式会社メルカート代表取締役社長の渡邉章公氏、マーケティング統括責任者の座間保氏、広報担当者の小岩未来氏。メルカートの強みや、クライアントと消費者双方の目線に立った価値提供のあり方について伺いました。

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ECサイトの開発から運営までを専門部隊がサポート

メルカートは、企業が自社独自のECサイトを構築するにあたってのシステム開発や運用、その後のマーケティングまでをワンストップで支援しているサービスです。従来のECサイト構築パッケージは、あらゆる機能を搭載しているものの、クライアント企業が使いこなせないことも多かったとのこと。そこでメルカートは、ECサイトを構築するクライアント企業に人が伴走する設計にしたといいますが、それはどのような設計なのでしょうか。

渡邉氏

メルカート渡邉社長

「AIは機械的な応答や自動化には優れていますが、例えば「ブランドの世界観を表現したい」「AIが対応しきれない特殊な運用を、人がオペレーションを設計して回していきたい」というニーズにはなかなかはまらないところがあるので、そうした部分を人でサポートしています。マーケティングの側面でも、人のノウハウと感性を生かした支援を行っているのがメルカートの強みですね。

ECカートはどのサービスも機能が豊富ですが、ユーザーがAIやマニュアルだけで独自の課題を解決していくのは難しいです。そこで、どういった課題に対してどの機能を使っていくかということも人が伝えています。」

具体的に、ECサイトの立ち上げ前と立ち上げ後で、それぞれどんなサポートがあるのでしょうか。

渡邉氏

「契約後にメルカートを立ち上げるまでには3ヶ月程度かけ、サイトの設計や運用方法を準備します。この間はメルカート事業を担当する部署のなかでクライアント企業専任の責任者を置いてスケジュールを管理し、クライアント企業とタスクを共有しながらコミュニケーションをとってオープンまで支援するため、安心してサイト立ち上げまで進んでいただけます。

そしてオープン後も充実したサポートを受けられることが、クライアント企業から評価していただくポイントですね。支援部隊は、ヘルプデスク、カスタマーサクセス、マーケティングの3つです。

まず、ヘルプデスクは、クライアントがいつでもメールや電話で問い合わせできるサポート窓口として活用していただけます。

カスタマーサクセスは、サイトを運営していくにあたってクライアントが気づけない課題を我々が発掘していくことをコンセプトにしてきました。月に1回程度、我々が数字を見ながら、運用する中での課題や解決策をクライアントにアドバイスし、運用を前進させていくのが主な役割です。

そしてマーケティング支援部隊は、アドバイスを実行するために実際に手を動かすチームです。有料サービスではありますが、広告運用やクリエイティブ制作、SEO設計・対策といったそれぞれの専門部隊が、全体の体制を整えるサポートをしています。」

ECサイト立ち上げの経験がない人でも、これだけのサポートがあれば、立ち上げから、その後のマーケティング、販売まで頓挫することなく、スムーズに進められそうですね。

DX、EX、CXを三つ巴で推進

DX、EX、CXを三つ巴で推進

ECサイトの構築を支援する際には、サイトを運営するクライアント企業だけでなく、そのサイトを利用する消費者とのコミュニケーションも意識していると伺いました。メルカートはDXのほかに、EX(従業員体験)やCX(顧客体験)の向上も掲げているそうですね。具体的に、どのようにEXやCXの向上にまでつなげているのでしょうか。

渡邉氏

「ECサイトを立ち上げれば売れる時代は終わっている、というのが我々の実感です。サイトを改善しながら、事業者がしっかり消費者と向き合わないとモノが売れない時代に入っているので、その体制作りを我々はサポートしています。

マーケティングを内製化したいというクライアントにはノウハウを提供し、会社内でのチーム作りの伴走も行います。クライアントと我々が一緒にサイトを運用していくのですが、1~2年すると、クライアントのリテラシーがかなり上がっているケースもめずらしくありません。」

クライアントが自ら消費者の声を分析してPDCAサイクルを回せるようになると、CXも向上していくということでしょうか。

渡邉氏

「例えば、世界的ガラスメーカー、AGCさんのグループ会社であるAGCテクノグラスさんのECサイトは、もともとは簡単なサービスサイトと、楽天サイトへの導線だけがある状態でした。我々がサポートに入り、コンテンツ作りや撮影、動画活用や、顧客の声を集めてビジネスに生かしていく取り組みを支援したことで、5年経った今ではAGCテクノグラスさんだけで販促のためのコンテンツ作りやサイトの改善などかなりのことができるようになっています。

今、AGCテクノグラスさんが注力しているのは、消費者の声をデータとして活用していく取り組みです。お問い合わせやレビュー、消費者の行動データを集めて、製品企画やサービスサイトに反映したり、マーケティングに生かしたりという取り組みを盛んに行った結果、PDCAサイクルがAGCテクノグラスさんだけで回るようになってきました。

従業員がデジタルやデータを活用できるとビジネスが広がっていくので、我々はチーム作りからサポートすることで、EXの強化につなげています。」

それによって消費者に対するコミュニケーションも活性化していくので、CXにもつながっていく、という流れができていますね。

ハード面とソフト面の双方で支援

DX、EX、CXを大事にしてビジネスを動かすため、特に意識していることはありますか。

座間氏

メルカート座間氏

「ハードとソフトの両面でクライアントをサポートしていくことですね。

ハード面でよくある課題は、今までのレガシーな基幹システムやECサイトシステムのデータが連携しておらず、消費者が何をしたいのか、どんな不満があるかが全く見える化できていないことです。こういったクライアントは、連携サービスが豊富で自由にカスタマイズできるメルカートを使っていただくことで、課題を解消できます。

一方、ソフトはなかなか難しい部分です。「アクセスって何?」「PVって何?」という状態の担当者に用語の解説をしたこともあります。AGCテクノグラスさんは、担当者が優秀な方だったこともあり、1年くらい経つとデジタルリテラシーやマーケティングリテラシーが上がり、スムーズに施策を打って売上を伸ばせるようになりました。」

吉川真布

執筆者

DXportal®編集部

吉川真布

朝日新聞社で記者として約8年勤めた後、教育・リスキリング系ベンチャー企業に参画。Webライターとしても活動し、大手出版社系メディアなどで、起業家やビジネスパーソンのインタビュー記事を執筆。