LINE Pay撤退で加速する決済DX!中小企業が取るべき次の一手

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2025年4月30日をもって、LINE Payの国内におけるサービスは完全に終了しました(参考:LINE Pay公式サイトプレスリリース/日本経済新聞)。LINE Payのサービス終了は、単に決済サービスが統廃合されたというだけに留まらず、キャッシュレス決済市場、ひいては日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進が大きな転換点を迎えたことを示唆しています。

QRコード決済市場はPayPayを筆頭とする大手寡占時代へと突入しており、この変化は中小企業の経営戦略にも影響を与え始めているのです。

この記事を読めば、LINE Pay撤退の背景にある市場動向と、この変化が中小企業のDX推進にどのような影響を及ぼすのか、そしてこの変革期に企業が取るべき戦略について理解を深めることができます。

QRコード決済市場の変化と淘汰

QRコード決済市場の変化と淘汰

前述の通り、LINE Payの国内におけるサービス終了は、日本のQRコード決済市場が新たな段階に入ったことを象徴しています。この変化を理解するためには、まずはこれまでの経緯を整理する必要があるでしょう。

QRコード決済市場の黎明期とLINE Payの役割

日本で、QRコード決済が注目され始めたのは2018年頃からです。当時、多くの事業者が参入し、まさに「乱立」とも言える状況でした。

その中でLINE Payは、コミュニケーションアプリ「LINE」の強大なユーザー基盤を背景に、QRコード決済の普及を牽引する先駆者として重要な役割を果たしました。送金機能の手軽さや、LINEプラットフォーム上での利用シーンの多さが人気のポイントだったLINE Pay。多くのユーザーにキャッシュレス決済の利便性を伝えたという意味で、その功績は大きいものでしょう。

この「QRコード決済市場黎明期」とも呼べる時期には、各社による大規模なポイント還元キャンペーンが繰り広げられ、消耗戦の様相を呈していました。

PayPay台頭と市場シェアの変化

QRコード決済市場の勢力図を大きく塗り替えたのが、2018年にサービスを開始したPayPayです。ソフトバンクグループとヤフー(現LINEヤフー)の強力なバックアップのもと、大規模な還元キャンペーンや積極的な加盟店開拓を展開しました。また、中国の巨大決済サービスAlipayとの連携も早くから実現し、インバウンド需要の取り込みにも成功しています。

結果として、PayPayは驚異的なスピードでユーザー数と加盟店数を増やし、MMD研究所が2025年1月に行った調査によれば、QRコード決済の利用率で約65.1%と圧倒的なシェアを握るに至りました。LINE Payも健闘しましたが、PayPayの猛烈な攻勢の前に徐々にシェアを奪われる形となったのです。(参考:MMD研究所/調査データ:2025年1月決済・金融サービスの利用シェアトップ

LINEヤフー経営統合と事業再編の加速

LINE Payの撤退を決定づけたのは、2021年のLINEとヤフーの経営統合です。この統合により、グループ内にはLINE PayとPayPayという二つの主要な決済サービスが存在することになりました。経営資源の「選択と集中」を進める中で、よりシェアの高いPayPayに決済事業を一本化する流れは既定路線だったと言えるでしょう。

実際に、LINE PayのQRコード決済機能は2022年にPayPayに統合されており、今回のサービス完全終了は、この事業再編の最終段階と位置づけられます。

QRコード決済市場の現状と今後の展望

QRコード決済市場の現状と今後の展望

LINE Payの撤退は、QRコード決済市場が「乱立期」から「大手集約・寡占期」へと移行したことを明確に示しています。

現在のQRコード決済市場シェアと勢力図

前述の通り、現在のQRコード決済市場はPayPayが頭一つ抜け出している状況です。これを楽天ペイ(楽天グループ)、d払い(NTTドコモ)、au PAY(KDDI)といった大手通信キャリア系のサービスが追随する構図となっています。

MMD研究所の調査(2025年1月)によると、利用しているQRコード決済の上位は「PayPay」(65.1%)、「楽天ペイ」(36.0%)、「d払い」(28.6%)となっており、これらの大手サービスへの集約が進んでいることが見て取れます。(参考:MMD研究所/調査データ:2025年1月決済・金融サービスの利用シェアトップ

各社はそれぞれの経済圏(楽天ポイント経済圏、ドコモ経済圏など)の強みを活かし、顧客の囲い込みとサービス拡充を図っているのです。

キャッシュレス決済全体の普及状況と政府の動向

日本のキャッシュレス決済比率は年々上昇しており、経済産業省の発表によると2023年には39.3%に達し、政府が掲げる「2025年までに4割程度」という目標を前倒しで達成する勢い(参考:2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました/経済産業省・2024年3月29日発表)です。

この背景には、消費者の利便性向上志向に加え、政府によるキャッシュレス推進策(ポイント還元事業など)も大きく影響しています。今後もこの流れは継続し、キャッシュレス決済全体の市場は拡大していくと予測されます。QRコード決済も、その手軽さから引き続き重要な役割を担うでしょう。

消費者の決済行動の変化と求めるもの

スマートフォンの普及に伴い、QRコード決済は多くの人々にとって日常的な支払い手段となりました。

消費者が決済サービスに求めるものは、単なる支払い機能だけでなく、ポイント還元の魅力、利用できる店舗の多さ、操作の簡便性、そして何よりもセキュリティの高さです。大手サービスへの集約が進むことで、これらの要素における競争が一層激化し、消費者にとってはより質の高いサービスが提供される可能性も期待できます。

山田 元樹

執筆者

株式会社MU 代表取締役社長

山田 元樹

社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援をエンジニア + 経営視点で行う。
最近の趣味は音楽観賞と、ビジネスモデルの研究。
2021年1月より経営診断軍師システムをローンチ