中小企業が少ないリソースでDXを成功させる3つの実践ステップ
経営資源が限られる中小企業にとって、DX推進は決して容易な道のりではありません。大手企業のように潤沢な予算や専門の人材を確保することは難しいのが現実です。しかし、だからといってDXを諦めるわけにはいかないでしょう。
経済産業省のレポートは、そうした中小企業が直面する特有の課題をふまえ、現実的な解決策を提示しています。ここでは、中小企業が今すぐ取り組むべき、具体的で実践的な3つのアクションについて解説します。
【ステップ1】オーダーメイド脱却:SaaS活用で「業務標準化」を急ぐ
経産省は、中小企業に対して、個別企業の要望に合わせてゼロからシステムを構築する「オーダーメイド(スクラッチ)開発」を避け、すでに完成された「パッケージソフトウェア」や「SaaS(Software as a Service)」を原則とすべきだと強く指摘しています。
パッケージソフトウェアとは、特定の業務向けに標準的な機能がまとめられ、市販されているソフトウェアのことです。一方、SaaSは、インターネット経由でソフトウェアを利用するクラウドサービスを指します。
オーダーメイド開発から脱却すべきと経産省がレポートのなかで指摘する理由は、オーダーメイド開発でカスタマイズを重ねたシステムは、肥大化・複雑化しやすく、その後の改修や最新技術への対応が困難になるためです。DXを阻害する「現行踏襲のこだわり」を捨て、あるべき業務の姿からシステムを検討する標準化への対応が重要になります。これにより、導入コストや運用コストを抑えつつ、最新のデジタル技術を迅速に取り入れることが可能になるでしょう。
【ステップ2】人材不足の解消法:外部エコシステムとAIの戦略的活用
IT人材の需給格差は深刻であり、自社での育成のみに依存した体制では限界が生じています。この事態に対し、SaaS等の利活用によって高度な専門知見を要する開発案件を抑制し、人的リソースの所要量を平坦化する施策を講じる必要があるでしょう。あわせて、外部組織との連携や生成AIの導入による供給能力の拡充を並行して推進する姿勢が求められます。
具体的には、IT導入補助金などを活用してSaaSを導入することで、高度なIT人材がいなくてもデジタル化を推進できる状態を作ることなどが挙げられます。また、将来的には、レポートで提言されている「循環型人材供給エコシステム」の活用や、生成AIを活用したコード解析・生成なども有効な手段となるでしょう。
【ステップ3】IT資産の可視化:失敗を防ぐ「自己診断ツール」の活用
「何から手をつければいいのかわからない」と感じる企業は、まず自社のIT資産の全体像を把握することから始めるべきです。施策の優先順位を確定できない企業においては、自社が保有するIT資産の網羅的な把握を最優先しなければなりません。経済産業省は「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて」を通じ、企業が自律的にDX成熟度やIT資産の現状を客観視するための「自己診断ツール」の整備方針を明示しています。
システムの仕様をドキュメント化し、どのシステムがブラックボックス化しているのか、どの業務プロセスが非効率なのかを特定することが、モダン化の第一歩です。この可視化によって、全社的に足並みをそろえてよりスムーズなDX推進に繋がるでしょう。
まとめ:レガシーシステム脱却は「古い企業文化」との決別である
経済産業省の最新レポート「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて」をもとに、日本企業が直面するDXの課題とその解決策について解説しました。DX推進を阻むのは、単に「古いシステムが残っている」といった問題だけではなく、経営層の意識や企業の文化といった非技術的な要因が深く関わっていることが明らかになりました。
「2025年の崖」を本当の意味で乗り越えるためには、経営層がDXを「自分事」として捉え、ITガバナンスを強化することが不可欠です。また、情報システム部門は、保守・運用の役割から「経営戦略を推進するパートナー」へと変革し、ベンダー企業とは価値共創の関係を築く必要があります。
特に中小企業においては、オーダーメイド開発へのこだわりを捨て、パッケージソフトウェアやSaaSの活用による標準化を推進することが、DX成功への近道となります。まずは自社のIT資産を可視化し、現状を正確に把握することから始めてみてはいかがでしょうか。貴社がDXを成功させ、未来に向けて競争優位性を確立するためのヒントが、この記事の中にきっと見つかるはずです。
執筆者
株式会社MU 代表取締役社長
山田 元樹
社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援を過去のエンジニア経験を活かし、エンジニア + 経営視点で行う。DX推進の観点も含め上場企業をはじめ多数実績を持つ。