【株式会社刀】マーケティングで日本を元気にする!森岡毅氏と「刀」のDX戦略【DX企業解剖②】

【株式会社刀】マーケティングで日本を元気にする!森岡毅氏と「刀」のDX戦略【DX企業解剖②】

森岡氏の語る「3つのなぜ?」

森岡氏の語る「3つのなぜ?」

森岡氏が日経ビジネスに寄稿した、「3つのなぜ?」に関するとても興味深い文章があります。この文章は森岡氏の頭の中に迫る一つの手がかりになるだけでなく、氏の解説にはDX推進とも非常に関わりの深い重要な点が含まれていました。ここでは、かいつまんで見ていきましょう。

1つ目は「なぜ売上が伸びないのか?」という問題です。

森岡氏によればこれには2つの理由があります。その1つが「伸び続けるように『ブランド』を設計出来ない事」、そしてもう1つが「そのブランドを実現出来るように『組織構造』を変革できない事」です。

マーケティングにおいてもDX推進においても、外部に対して伝えたいメッセージ(=ブランド)の設計と、その実現のためにビジネスモデルや時には企業理念に至るまでの抜本的な「変革」を行うことは非常に重要なポイントです。

表面的に新しいマーケティングの手法を取り入れたり、デジタルツールを導入するだけでは、森岡氏の指摘する課題を乗り越えることは不可能です。

数多くの企業を見てきた「刀」CEOの森岡氏の言葉からも、これら根本的な課題に向き合うことが出来ない企業は、世界を相手に戦うことを強いられるこれからのデジタル社会の中で、成長し続けれられないということがはっきりとわかります。

次に、「なぜ後継者が育たないのか?」という問題です。

この理由は、事業継承が成功するために最も大切な継承すべきノウハウ(思想)がきちんと「見える化」されていないからだと氏は語っています。

どれだけ優れたノウハウを持っていても、それがある特定の人にしか共有されていなければ継続していくことはできません。企業の歴史の中で作り上げられてきたノウハウを、言語化し、体系的に見える化していかなければ、人の入れ替わりとともに徐々に薄れていってしまうことは避けられません。どれだけ優れた企業戦略や武器となる商品を持っていたとしても、事業の根幹に関わるノウハウが創業者や一部の担当者の頭の中だけにある状態では、継続性はありません

DX推進においても、DX推進のゴールやプロジェクトの進捗などを「見える化」する事が重要です。企業トップが、どれだけ優れたプランを持っていたとしても、その目的が現場に共有されていなければDXの成功はあり得ません。また、既存のビジネスモデルや時には企業理念に至るまでを変革することが求められるDX推進において、そのプロジェクトの進捗が全社的に共有されていなければ、社内に混乱をきたすことは必至でしょう。

最後に、「地方創生はなぜ進まないのか?」という大問題です。このテーマは一見するとDX推進とはかけ離れているように思われますが、実は本質的な共通点があります。

行政が主導する地方創生における課題の1つに、「ユーザー目線で物事が見えていない」ということが挙げられます。

ビジネスの世界とは異なり、サービスを提供する側と利用する側で直接的な金銭の授受が発生しない行政などの場合、「ユーザーファーストでモノを見る」という考え方が欠落してしまうケースは珍しくありません。一方、ビジネスにおいて、エンドユーザーから金銭を受け取る企業がこのような欠点を指摘されることはほとんどありません。

しかし、「新たな価値を生み出す」ために最も重要なのは、「どこまで深いレベルで消費者を理解出来るか」という点にかかっているといっても過言ではありません。つまり、行政サービスであっても、徹底的なユーザ目線が求められるのです。

では、消費者を理解するためには何が必要なのでしょうか。

森岡氏は「消費者行動を短期間で理解するためには、そのカテゴリーやブランドの平均的なユーザーと、ヘビーユーザーの両方を徹底的に集中して観察せよ」と語っています。

ヘビーユーザーの行動は本能や行動欲求が発露しやすく、それを理解することで平均的なユーザーの本能構造も理解しやすくなります。

ただし、ここで注意すべきは「ヘビーユーザーのニーズは平均的ユーザーにはハードすぎて受けない」という事です。そのため、ヘビーユーザーの声だけに引っ張られてしまうとコアな客層向けの二ッチな方向に進んでしまいます。平均的なユーザーとヘビーユーザーの両者を徹底的に観察し、そのバランスを取ったアイデアを生み出すことが、ユーザーの潜在的ニーズを満たすサービスや商品の提供につながるのです。

このように地方創生が抱える課題は、多くの企業が抱える課題とも共通しているといえます。DXportal®でもこれまで何度もお伝えしてきましたが、とことん消費者の視線から考えようとする姿勢こそがビジネスを成功させる鍵と言えるのでは無いでしょうか。

「刀」と森岡氏の日本再生

「刀」と森岡氏の日本再生

この記事の最後に、「刀」と森岡氏がこれまでに行ってきたDXマーケティング戦略の中から、象徴的な2つの事例をご紹介致します。

そこには、各企業が参考とすべき様々な変革のヒントが隠れています。

来場者の幸福感を演出/西武園ゆうえんち

来場者の幸福感を演出/西武園ゆうえんち

「西武園ゆうえんち」は、1950年に「東村山文化園」として開園しました(翌年には「西武園」へと改名)。

かつては日本で数少ない遊園地としてにぎわったものの、TDL(1983年開園)をはじめとする相次ぐテーマパークの隆盛に伴って徐々に客足が遠のき、活気を失っていました。その状況を打破するために、2019年に親会社西武鉄道70周年記念行事の一環として全面リニューアルを決定。そのプロジェクトが「刀」に託されました。

「刀」は、テーマパークリニューアルとしてはかなり限定的な100億円という予算の制約もある中、「昭和」をコンセプトとして打ち出すことで、見事にテーマパークとしてよみがえらせることに成功しました。

「刀」は、人が集客施設に行く1番の理由は「幸福感に浸りたいから」と分析し、西武園に「良きムラ社会」という切り口からアプローチしました。

個人主義の強い西洋と違い、日本人の幸福の記憶はしばしばコミュニティと連関していると考え、日本人の琴線に触れる「良きムラ社会」を想起させる、高度経済成長期である昭和30年代をテーマとしたのです。

2021年5月のリニューアルオープン時には、駄菓子屋など昭和の街並みを再現した園内や、昭和を代表するコンテンツである「ゴジラ」をテーマとした世界初のアトラクションが話題を呼び、コロナ前の約13倍とも言われるチケット売上を記録するまでになりました。

西武ゆうえんちの成功も「森岡メソッド」の根底にある、消費者の視点をとことん追求した結果がもたらした、新たなブランド戦略と言って良いでしょう。

日本人の投資アレルギーを払拭/農林中金バリューインベストメンツ

日本人の投資アレルギーを払拭/農林中金バリューインベストメンツ

「刀」は、2019年に農林中央金庫グループ、農林中金バリューインベストメンツ株式会社との協業を発表しました。

これは、金融業界にマーケティングを導入し、「投機ではない投資」を広めることにより、日本人の生活を豊かにする事を目的とするプロジェクトです。

協業を開始してから再設計された投資信託ブランド「おおぶね」シリーズは、協業前と比較して口座数7倍、純資産総額13倍(2021年7月時点)にまで成長しています。

これは、現状を分析する中でユーザーにとっての真の幸せは何かを考え抜き、「投資アレルギー」という日本人の根深い課題を解決する事を目指した結果、長期投資の思想へと共感の輪を広げる事に成功した例です。

単なるブランド構築だけでなく、サステナブルなDX、あるいはサステナブルなマーケティング戦略を企業に定着させるためには、企業側の業務効率化や利益向上のみならず、ユーザーの利益を最大に考え抜かなければ成功への道筋は見えてこないといった、ビジネスの本質に根付いたマーケティング戦略の成果と言って良いでしょう。

「マーケティングで日本を元気にしたい」

「マーケティングで日本を元気にしたい」

企業がDXやマーケティングを推進する上で、最も大切なのは企業経営陣と従業員、ユーザー、さらには投資家を含めたすべてのステークホルダーにとって利益が出る方法を模索する事と言ってもい良いでしょう。

そうした考えがあってはじめて、持続可能な経営は成り立ちます。

単にマーケティングのノウハウを販売するのではなく、協業パートナーとして取引相手が恒久的な利益を享受できるよう最大限の知恵を絞る。「刀」の歴史からは、そんな覚悟が見え隠れします。

日本企業が世界の中で戦っていくための武器(刀)はマーケティングである。そして、マーケティングで日本を元気にしたい。そう願う「株式会社刀」と森岡氏の挑戦からは、益々目が離せません。

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DXportal®編集部

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