3つのクラウドサービス

コストを抑えながら効率的にDX推進を後押ししてくれるクラウドサービス。
しかし一口にクラウドサービスと言ってみても、それにはいくつもの種類があり、提供されるサービスは無数にあります。
また、それぞれに運用方法や目的が違うため、自社の目的にあったサービスを選ばなければなりません。
その形態は大きく次の3つに分けられます。
- SaaS(Software as a Service:サース/サーズ)
- PaaS(Platform as a Service:パース)
- IaaS(Infrastructure as a Service:イアース/アイアース)
なお、これにHaaS(ハース)を加えて4種類で解説される場合もありますが、HaaS(Hardware as a Sarvice)はサービスとしてのハードウェアの意味で、現在ではIaaSとほぼ同義とされているため、ここではこの3種類として解説します。
SaaS(Software as a Service:サース/サーズ)
「サービスとしてのソフトウェア」という意味を持つSaaSは、ユーザーがインターネット経由でソフトウェアを利用できるサービスの総称です。
データ以外の総てをクラウド事業者が提供・運用しているため、もっとも手軽に導入することができます。
ほぼすべての端末からアクセスすることが可能で、複数人での作業や編集などを行うことができるのもメリットの1つです。SaaSは、業務効率化や情報共有といったDXの第一歩として、多くの企業に採用されています。
【メリット】
- 導入が最も容易で、専門知識が不要
- 低コストで利用でき、初期投資を抑えられる
- 常に最新の機能を利用できる
【代表例】
- Gmail、Google Workspace: メールや文書作成など、日常業務に不可欠なサービス
- Microsoft 365: Word、Excel、PowerPointなどのオフィスツール
- Salesforce: 営業活動や顧客管理を支援するCRMサービス
PaaS(Platform as a Service:パース)
「サービスとしてのプラットフォーム」という意味を持ち、SaaSで提供されるアプリケーションなど、開発環境そのものを提供するサービスです。
通常アプリケーションの開発ではプラットフォーム、つまり開発環境の構築から行う必要がありますが、PaaSはクラウドで提供されるプラットフォーム(OS、サーバーなどを開発する機能一式)を利用することができるため、ソフトウェアの開発作業だけに注力することができます。
そのため自社でのソフトウェア開発も容易で、開発したシステムを顧客へ提供するなども可能。
そのため自社でのソフトウェア開発も容易で、開発したシステムを顧客へ提供するなども可能。PaaSは、自社独自の業務システムやサービスを開発したい企業に適しています。
【メリット】
- 開発環境を自社で構築する手間とコストを削減できる
- 開発に専念できるため、効率的にアプリケーションを開発できる
- 事業者のサービスを利用するため、セキュリティや運用保守の負担が軽減される
【代表例】
- Google App Engine: Googleのインフラを活用したアプリケーション開発環境
- AWS Elastic Beanstalk: AWS上でアプリケーションを展開・管理するサービス
IaaS(Infrastructure as a Service:イアース/アイアース)
「サービスとしてのインフラ」と訳され、物理的なインフラ機器を持たずとも、インターネット経由でクラウド上のインフラ(サーバー)を利用することができます。
サーバーやストレージといった物理的な構築パーツはクラウドを利用できるため、CPUやメモリ、あるいはストレージなど総てを自社に必要な分だけチョイスすることができ、拡張も容易です。
PaaSと比較しても専門知識が必要となる分、サーバー構築の自由度が高いという特徴を持っています。IaaSは、システム構築の自由度を最大限に高めたい企業や、多様なシステムを統合的に管理したい企業に適しています。
【メリット】
- サーバーやストレージの構成を自社の要件に合わせて自由にカスタマイズできる
- 利用した分だけ課金されるため、コストの最適化が図れる
- 物理的なインフラを自社で持つ必要がなく、運用管理が容易
【代表例】
- Amazon Web Services(AWS): クラウドインフラの世界的リーディングカンパニー
- Microsoft Azure: Microsoftが提供する統合クラウドプラットフォーム
まとめ:中小企業のDX推進を加速させるクラウド戦略
クラウドサービスは、もはや単なるITインフラではなく、ビジネスを成長させるための戦略的なツールです。初期投資や専門人材不足といった中小企業の課題を解決し、迅速かつ柔軟なDX推進を可能にします。
本記事で解説したように、クラウドサービスには「SaaS」「PaaS」「IaaS」の3つの主要な類型が存在します。
- SaaS:既存の業務効率化を目指す企業にとって、手軽に導入できる第一歩となる
- PaaS:独自のシステム開発を通じて競争優位を築きたい企業に適している
- IaaS:自社で完全にコントロールできる柔軟なIT基盤を求めている場合に最適な選択肢となる
貴社のDX推進を成功させるためには、これらのクラウドサービスの特性を理解し、自社のビジネスモデルや課題に最も適したものを主体的に選択することが不可欠です。本記事が、貴社のDX戦略を策定する上で有益な情報となれば幸いです。

執筆者
株式会社MU 代表取締役社長
山田 元樹
社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援をエンジニア + 経営視点で行う。
最近の趣味は音楽観賞と、ビジネスモデルの研究。
2021年1月より経営診断軍師システムをローンチ