宇宙開発の知見をビジネスへ。若手世代が提唱する「Act Global」とデータ利活用の未来

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「Act Global」が切り拓く国境を越えたネットワークの価値

では、こうした構造課題を乗り越えるための実践的な一手はどこにあるのでしょうか。我々が着目しているのは、若手人材が「世界を舞台に動く」という行動様式を身につけることです。

私たちは、日本の若手が世界で戦えるマインドセット(思考様式)を養う場として、グローバルな視座を学ぶコミュニティを運営しています。その一環として、2025年7月には国連発のSGAC(Space Generation Advisory Council)、SDF(宇宙開発フォーラム実行委員会)、TELSTAR、ASE-Lab.の4団体が合同で、SPACETIDE 2025公認サイドイベント「SG[Japan] 2025」を開催しました。

このイベントには35歳以下の若手人材41人が集結し、うち16人は世界7カ国から来日した海外人材です。会場にはまさに「世界の縮図」と呼べる空間が出現し、参加者たちは宇宙政策、技術開発、キャリアパスといったテーマについて、国籍を超えた議論を展開しました。

特筆すべきは、海外の同世代が持つ視座の広さや行動力に触れ、日本の参加者が良い意味で「打ちひしがれる」体験をした点です。自分の見えていなかった世界を自覚する衝撃こそが、「Act Global」への第一歩を踏み出す契機となったのです。イベント終了後も参加者同士でキャリアパスの相談や情報交換が続いており、「SG[Japan] 2025」は単発の刺激に終わらず、持続的な交流の起点として機能しています。

国境を意識しないアクションが国際競争力を高める

「Act Global」とは、単なる語学力の話ではありません。世界的な視座を持ち、各国に信頼できる人脈を備え、産業の潮流を常に捕捉できる状態を指します。しかし、これまでは国内で開発が完結できてしまう環境が、皮肉にも外へ向かう動機を弱めてきたのです。これでは、中長期的な視点に立てば、国内市場だけを舞台にした活動では持続的な成長を見込めません。

デジタル技術を共通言語として、国境を意識せずに行動できる人材の育成が、日本の宇宙産業に持続的な成長をもたらします。個々人が国際的な露出を増やすことで、日本発の技術が世界にもたらす貢献度や国力も自然に向上するはずです。

私がロケットへの憧れから現在注力しているのは、若手と世界を繋ぎ、挑戦する精神を醸成することです。ISS(国際宇宙ステーション)のような政府主導の時代から、民間がボトムアップで宇宙を日常にする時代へ。SGAC Japan(国連発の宇宙世代諮問委員会日本支部)の活動で生まれた人脈が、学際的な交流や国際協力の起点となると確信しています。各企業の経営者も、こうした変化の波を自社の戦略に取り込む視点を持っていただきたいところです。

まとめ:宇宙とDXが交差する未来への提言

日本の宇宙産業は、世界水準の技術と人材を抱えながら、その力を外需へと転換する回路が十分に機能していません。国内完結型の開発環境は強みである一方で、民間主導の転換期においては長期的に外需を取り逃がすリスクを内包しています。

この構造を変えるには、若手世代が「Act Global」を体現し、世界を舞台に制限なく行動するしかない、と私は確信しています。データとデジタル技術の活用を共通言語として、世界に人脈を持ち、常に最新の潮流を自社の戦略へ取り入れる姿勢。それこそが、あらゆる領域のDX経営においてパラダイムシフトを促す力となるのです。

宇宙とDXは、一見かけ離れた領域のように見えます。しかしその本質は同じです。データを起点に価値を生み出し、境界を越えてつながり、世界の集合知をリードする。次世代のリーダーがその実践を積み重ねることで、日本の産業全体の競争力が底上げされていくと、私たちは確信しています。

※本記事の内容は筆者個人の見解であり、所属する機関等いずれの組織の公式見解を代表するものではありません。

山本大凱

執筆者

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山本大凱

総合研究大学院大学 先端学術院JAXA宇宙科学研究所にて大学院生として研究開発に従事(名古屋大学 工学部 機械・航空宇宙工学科 卒業)。国連発のU35宇宙人材コミュニティSGAC(Space Generation Advisory Council)の日本イベントSG[Japan] 2025, 2026のEvent Managerを務める。

【研究実績】
銀河における星形成の研究(素粒子宇宙物理学分野)[2019-2023]
回転デトネーションエンジン(ロケット工学分野)の研究 [2023-2026]
宙漆プロジェクト(宇宙芸術分野)の開発 [2022-2026]
※宇宙分野の国際会議への参加(アメリカ・オーストラリア)
プロフィールページ ▶ https://my.prairie.cards/u/muttamotoyama