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物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の実務で、荷待ち時間の記録は「誰が、いつの時刻を、どこへ残すか」を決めるところから始まります。荷待ち時間とは、トラックが荷主の施設に着いてから、荷役が始まるまで待たされた時間のことです。早着や休憩など、含めない時間もあります。
この時間を算定するために残す時刻は、指示時刻・到着受付・荷役開始・荷役終了・出発の5つです。ただし、これらの時刻は、ドライバーの日報やデジタルタコグラフ、荷主の受付台帳のどれからでも取ることができるため、担当と保存先を決めておかないと、同じ時刻を運送側と荷主側が二重に入力したり、どちらにも残らなかったりすることが起こり得ます。
さらに、荷待ち時間の記録は、運送事業者の業務記録、すべての荷主の努力義務、特定荷主の定期報告という、根拠の異なる3つの制度に分かれ、自社がどれに当てはまるかで記録・保存・報告の求められ方も変わってしまうのです。
本記事では、3つの制度の違いを解説し、荷待ち時間を算定する5つの時刻と、担当・正本(記録が食い違ったときに基準とする記録)・保存先を1枚の表にした役割表を示します。なお、貴社が特定荷主に当たるかどうかの判定は、特定荷主の判定を扱った記事で解説していますので、合わせて参考にしてください。
【本記事の要点】
- 荷待ち時間の記録は、運送事業者の業務記録、全荷主の努力義務、特定荷主の定期報告の3つで根拠が別である
- 運送事業者の業務記録は2025年4月から全車両が対象で、荷主都合の荷待ちが30分以上のときに記録し、最低1年保存する
- 取る時刻は指示時刻・到着受付・荷役開始・荷役終了・出発の5時刻で、誰が取り、どれを正本にするかを先に決める
- 運送側と荷主側は、各時刻を一度だけ入力する場所を決めて相手側が参照し、差異は一方に合わせず、双方の時刻と理由を残す
荷待ち時間の記録は、運送事業者と荷主で根拠が3つに分かれる
荷待ち時間の記録は、運送事業者の業務記録、全荷主の努力義務、特定荷主の定期報告の3つに分かれ、対象も基準も保存も違います。3つの違いは、次のとおりです。
| 制度 | 対象 | 基準 | 保存・報告 |
|---|---|---|---|
| 運送事業者の業務記録 | 全車両(2025年4月1日から) | 荷主都合の荷待ちが30分以上 | 業務記録に記載し、最低1年保存 |
| 全荷主の努力義務 | すべての荷主(2025年度から) | 荷待ち時間・荷役等時間の短縮 | 定期報告の対象は特定荷主 |
| 特定荷主の定期報告 | 指定を受けた特定荷主(2026年度から) | 荷待ちと荷役等を原則分けて施設ごとに計測(切り分けが難しい場合は分けずに計測できる) | 施設ごとの平均時間を毎年度報告 |
運送事業者の業務記録
国土交通省の荷待時間や荷役作業・附帯業務の「業務記録」への記録義務の対象が、全車両に拡大によると、『貨物自動車運送事業輸送安全規則』の改正(2024年10月1日公布、2025年4月1日施行)で、荷待時間や荷役作業等の記録義務の対象は全車両に拡大しました。以前は車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の車両が対象でした。
記録の対象になる荷待ちは、荷主都合で30分以上待機したときです。記録は業務記録に記載し、最低1年保存します。なお、国土交通省の旧ページには以前の対象(8トン以上・5トン以上)が今も残っているため、確認するときは、全車両に拡大した後の資料を見るようにしてください。
全荷主の努力義務
すべての荷主は、荷待ち時間と荷役等時間を短縮する努力義務を負います。発荷主(第一種荷主)も着荷主(第二種荷主)も対象で、受渡しの日時や時間帯を決めたり指示したりするときに、一時に多数のトラックが集中しないようにします。
定期報告の義務が課されるのは、全荷主ではなく、指定を受けた特定荷主です。特定荷主も全荷主に含まれるため、努力義務に加えて定期報告が求められます。自社の荷主としての立場と、特定荷主かどうかによって、取る時刻のデータの使い道が変わります。
特定荷主の定期報告
一定規模以上の特定荷主は、2026年度から、指定を受けた翌年度以降、毎年度、定期報告を行います。荷待ち時間に関する報告の要点は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計測する施設 | 自らが管理する施設(施設ごとに計測)。寄託契約先が管理する施設は、原則として計測の対象から外し、連携状況を報告する |
| 計測する時間 | 原則として荷待ち時間と荷役等時間に分けて計測。実態として切り分けられない場合は、分けずに荷待ち時間等として計測できる |
| 報告する数値 | 施設ごとの平均時間(手引書の様式では、月別の平均を分単位で記載。サンプリングする場合は、対象月のみ記載) |
| 荷待ち時間等の報告を省略できる場合 | 1回の受渡しに係る荷待ち時間等が1時間未満(拠点ごとに、1か月間またはサンプリング期間を通じた平均で判断) |
なお、業務記録の30分は、運送事業者が記録する基準です。定期報告を省略できる1時間未満は、特定荷主の報告の条件で、別の基準です。混同しないようにしましょう。
出典・参照:
荷待ち時間の記録方法|記録する5時刻と、算定のルール
荷待ち時間を算定するために基本となる記録項目は、指示時刻、到着受付、荷役開始、荷役終了、出発の5つです。ただし、休憩や、到着時間帯の指定、遅着による追加の待機があるときは、算定に必要な情報も合わせて記録します。国土交通省の『荷待時間・荷役作業等記録票』と算定方法で使われる時刻を、役割表では、この5項目にまとめて扱います。
この5時刻を、デジタルタコグラフ(デジタコ。運行データを自動で記録する機器)、日報、受付台帳のどれから取れるかを書き出すと、記録の抜けや二重入力が見えてきます。
記録する5時刻
5時刻は、次のとおりです。
| 時刻 | 何の時刻か |
|---|---|
| 指示時刻 | 荷主等から指定された到着の時刻(時間帯で指定された場合は、算定に用いる時刻) |
| 到着受付 | トラックが施設に着いた時刻(到着後すぐに受付等を行う場合は、その受付の時刻) |
| 荷役開始 | ドライバーが荷役等に従事し始めた時刻 |
| 荷役終了 | 荷役等が終わった時刻 |
| 出発 | トラックが施設を出た時刻 |
荷待ち時間は、到着受付の時刻(早く着いた場合は指示時刻)から、荷役等の開始までです。荷役等時間は、荷役等の開始から終了までです。
早着・遅着・休憩・天候の扱い
算定の起点は、到着の仕方で変わります。国土交通省の物流効率化法ポータルは、次のように示しています。
| 場合 | 荷待ち時間の起点 |
|---|---|
| 指示時刻・時間帯の指定がない | 到着時刻(速やかに受付等を行う場合はその時刻) |
| 指示時刻・時間帯より早く到着 | 指示時刻 |
| 指示時刻・時間帯内に到着 | 到着時刻(速やかに受付等を行う場合はその時刻) |
| 指示時刻・時間帯より遅く到着 | 到着時刻(速やかに受付等を行う場合はその時刻) |
つまり、指示時刻や時間帯が指定されていて、それより早く着いた場合は、早く着いた分の待機は荷待ち時間に含まれず、起点は指示時刻に繰り下がります。
このとき、荷待ち時間から除ける時間もあります。到着後に受付等をせず、業務上の指示で休憩するなど、業務から完全に離れられる時間です。トラック事業者側の遅着で順番が後ろにずれた分や、天候・交通事情など荷主等の責任によらない分も除くことができます。ただし、通常生じる範囲の荷待ちは除けません。
荷待ちと荷役の分け方
荷待ち時間と荷役等時間は、荷役等の開始時刻を境に分けます。荷役等に含まれるのは、荷積み・荷卸し、検品、荷造り、仕分、荷主が行う荷役への立会いなどです。
ただし、荷役等の開始から終了までの間にある、すぐに車両を動かせる状態での待機や、荷役中の立会いが必要な時間のように、業務から完全に離れられず実質的に休憩できていない時間は、休憩として除くことができないため荷役等時間に含めなければなりません。
運送事業者の記録の運用|ドライバー・デジタコ・日報のどれを正本にするか
運送事業者は、荷主都合の荷待ちが30分以上になったときに、業務記録へ記載します。荷主が記録内容を確認したかどうかも記録の対象で、荷主の確認が得られなかった場合は、その旨も記録します。荷待ちが途中で途切れて複数回に分かれる場合は、合計で30分以上かどうかが判断の基準です。
記録の扱いは、次の3点を押さえます。
- 30分未満の待機は、記録の対象にならない
- デジタコなどで必要事項を記録・保存している場合は、同じ内容を重ねて記載しなくてよい
- 荷役作業等は、実施した作業がすべて契約書に明記されている場合、合計で1時間以上になったときが記録対象である
運送側が自分で取れる時刻は、配車指示の記録に残る指示時刻と、ドライバーやデジタコ、日報から取れる到着受付・荷役開始・荷役終了・出発です。ただし、デジタコの記録だけでは受付や荷役の開始・終了が判別できない場合があるため、その場合はドライバーの入力や荷主側の記録で補います。荷主側の記録を取り込めない場合は、これらが運送側の一次入力になります。運行管理者が内容を確認し、誤記があれば訂正します。業務記録には、どの運行日・車両・荷主・施設の時刻なのかが分かるように記載するようにしてください。
デジタコや日報が既にある事業者は、そのうちの1つを正本に決め、もう一方は参照用にします。正本を1つに決めておくと、運行管理者が訂正するときに、どの時刻を直せばよいかが明確になります。つまり、正本の決め方が、運送側のデータの信頼性を左右するのです。保存期間は最低1年です。荷主側の記録を取り込める場合の一次入力の分け方は、共同運用の役割表で示します。
貴社では、デジタコと日報のどちらを正本にしているでしょうか。紙やExcelから転記している場合は、紙・Excelの転記を扱った記事とデジタコ義務化を扱った記事もあわせて参考になります。
出典・参照:
荷主の受入現場の運用|受付・バース・物流担当で時刻を取る
荷主の受入現場では、荷待ち時間の短縮という努力義務に取り組むために、現場で時刻を取ります。特定荷主の定期報告には、荷待ちと荷役等を分けて施設ごとに計測するデータが必要です。
荷主側は、受付、バース(トラックが荷役のために着ける場所)、物流担当のどこが各時刻を取るかを、先に決めましょう。取り先の例は、到着時刻や時間帯を指示する物流担当が指示時刻、受付が到着受付と出発、バース担当が荷役開始と荷役終了です。正本は、指示時刻が予約システムか受付台帳、到着受付と出発が受付台帳、荷役開始と荷役終了がバース担当の記録になります。
荷出し側(発荷主)は出荷バースで、荷受け側(着荷主)は受入バースで、同じ5時刻を取る点は変わりません。
出典・参照:
運送側と荷主側が同じ時刻を二度入力しない|共同運用の役割表
運送側と荷主側が同じ時刻を別々に手入力すると、二度入力になり、時刻がずれたときにどちらが正しいかも決められません。そこで、各時刻を最初に取る側と入力する場所を1つに決め、もう一方はその記録を参照します。
共通のキーは、運行日、車両、荷主、施設の4つに、受付番号など1回の受渡しを識別できる番号を加えたものです。同じ車両が同じ日に同じ施設へ2回行くこともあるため、この番号が要ります。これらを双方の記録に持たせると、1回の受渡しごとに、運送側の記録と荷主側の記録を同じ行に並べられます。運送事業者の業務記録は、法令で求められる記録として残します。
そのうえで、必要な事項は、荷主側の記録から取り込んで保持し、手で打ち直しません。運送側と荷主側がそれぞれ決めた取り先をもとに、5時刻ごとの取得・参照・正本・保存を1枚にした役割表は、次のとおりです。
| 5時刻 | 一次取得者と、一度だけ入力する場所 | 相手側の参照方法(打ち直さない) | 各制度上の記録・正本 | 保存先 | 確認者 |
|---|---|---|---|---|---|
| 指示時刻 | 荷主の物流担当が、予約システムまたは受付台帳に入力 | 運送側は予約・受付の記録から取り込む | 運送側は業務記録、荷主側は予約システムまたは受付台帳 | 運送側は業務記録、荷主側は元の記録 | 運行管理者、物流担当 |
| 到着受付 | 荷主の受付が、受付台帳に入力 | 運送側は受付台帳の時刻を取り込み、デジタコの到着記録と照らす | 運送側は業務記録、荷主側は受付台帳 | 同上 | 運行管理者、受付 |
| 荷役開始 | 荷主のバース担当が、バース記録に入力 | 運送側はバース記録から取り込む | 運送側は業務記録、荷主側はバース記録 | 同上 | 運行管理者、バース担当 |
| 荷役終了 | 荷主のバース担当が、バース記録に入力 | 運送側はバース記録から取り込む | 運送側は業務記録、荷主側はバース記録 | 同上 | 運行管理者、バース担当 |
| 出発 | 荷主の受付が、受付台帳に入力 | 運送側は受付台帳の時刻を取り込み、デジタコの出発記録と照らす | 運送側は業務記録、荷主側は受付台帳 | 同上 | 運行管理者、受付 |
保存期間は、運送事業者の業務記録が最低1年です。荷主側の元の記録には、保存期間の定めが示されていません。運送側に合わせて1年以上とするのは、運用上の例です。
運送側と荷主側で時刻に差が出たときは、どちらかに合わせて書き換えず、双方の時刻と差の理由を残します。運送側の記録に誤記が確認された場合は、修正前の値と修正した理由を残して訂正します。荷主側の記録を共有してもらえない場合は、運送側がデジタコや日報の時刻を一次入力にし、荷主側は受付台帳の時刻を入力する形が現実的です。この場合も、双方の時刻を並べて、差の理由を残します。
30分未満の待機は、法定の業務記録としては必須ではありません。ただし、荷待ち時間の短縮という改善の分析には役立つため、取れる現場は取っておくと、月ごとの集計に使えます。
まとめ:自社に当てはまる制度を確認し、5時刻の取り先を決める
荷待ち時間の記録は、運送事業者の業務記録、全荷主の努力義務、特定荷主の定期報告で根拠が別です。自社の立場が運送事業者なのか荷主なのか、両方なのかを確認すれば、当てはまる制度が決まります。
制度が決まったら、5時刻の取り先、正本、保存を、順に決めます。運送側の決めごとは、ドライバー・デジタコ・日報のどれを一次入力にし、誰が確認・訂正するかです。荷主側の決めごとは、受付、バース、物流担当のどこが時刻を取り、受付台帳か予約システムのどちらを正本にするかです。各時刻を一度だけ入力する場所を決めて相手側が参照し、共通キーで突き合わせれば、同じ時刻を二度入力せずに、データとして集計できる記録になります。
個別の運行や契約の扱いは、契約内容や荷主、所管する行政機関によって異なります。国土交通省や管轄の運輸支局などにも確認してください。そのうえで、自社の立場に当てはまる制度を確認し、共同運用の役割表の空欄を埋めてみてはいかがでしょうか。
執筆者
株式会社MU 代表取締役社長
山田 元樹
社名である「MU」の由来は、「Minority(少数)」+「United(団結)」という意味。企業のDX推進・支援を過去のエンジニア経験を活かし、エンジニア + 経営視点で行う。DX推進の観点も含め上場企業をはじめ多数実績を持つ。




