うるう秒を廃止、世界標準時が連続する時刻に変わる|国際度量衡総会【世界のDX潮流】

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2026年10月、国際度量衡総会(世界の測定の単位を決める国際会議)が、世界の標準時に「うるう秒」を足す約束をやめる決議を採択しました。地球の回転は正確に24時間調度で自転するわけではないので、正確に時を刻む時計とは少しずつずれていきます。そのずれを、世界の時計に「1秒足す」ことで合わせてきたのが、うるう秒です。決議が有効になるのは、2027年5月20日です。

本記事では、決議の中身と、1秒を足さずに進む時刻の仕組みを解説します。あわせて、システムの記録の時刻を扱う企業にとっての意味を整理します。

【本記事の要点】

  • 国際度量衡総会は2026年10月の第28回総会で、世界標準時(UTC)にうるう秒を足さず連続して進める決議5を採択した
  • 1秒を足し引きせず進み続けるUTCは2027年5月20日に有効となり、地球の自転に基づく時刻とのずれは3,600秒(1時間)まで許される
  • 決議は、うるう秒の挿入が障害を招くリスクを高めており、1秒を引く調整は一度も実施されていないと述べている
  • 時刻の約束が変わる以上、自社のシステムが時刻をどこから受け取るかは、見直す対象になる

国際度量衡総会が決議:うるう秒をやめ、2027年5月20日から連続UTCへ

2027年5月20日から連続UTCへ移り、ずれの許容幅を3,600秒までとする決議の図

国際度量衡総会(CGPM)は、長さや重さ、時間といった測定の国際的な単位を、各国が集まって決める会議です。第28回総会は、2026年10月13日から15日まで、フランスのヴェルサイユで開かれました。決議の対象は、世界標準時のUTC(協定世界時)です。

UTCは、原子時計をもとに刻まれる世界共通の時刻で、各国の標準時はこのUTCを基準に決められています。これまでのUTCは、地球の自転とずれすぎないよう、必要に応じて1秒を足してきました。連続UTCとは、この1秒の足し引きをやめ、原子時計のとおり一定の刻みで進み続けるUTCのことです。

この総会が採択した決議5の中身は、次のとおりです。

項目決議の内容
決議の名称決議5『UTCの連続性を確保するために必要な技術的措置について』(仮訳)
連続UTCの有効日2027年5月20日
ずれの許容幅地球の自転に基づく時刻とUTCとの差を、3,600秒(1時間)まで許す

つまり、地球の自転とのずれがたまっても、1時間分までは許すという考え方に変わるのです。世界の時刻の約束が、2027年5月20日に変わることになります。

出典・参照:

うるう秒とは:地球の自転と時計のずれを、1秒の足し引きで合わせる約束

地球の自転に基づくUT1と原子時計で進むUTCを1秒の足し引きで合わせ、1972年から27回すべて足してきた関係図

うるう秒とは、そもそも何のための約束なのでしょうか。世界標準時には、性質の違う2つの時刻が関わっていて、この2つのずれを合わせる約束が、うるう秒です。

2つの時刻:地球の自転で決まる時刻と、原子時計で進む時刻

2つの時刻の違いは、次のとおりです。

時刻何に基づくか特徴
UT1地球の自転地球の回転で決まり、回転の速さが変わると進み方も変わる
UTC原子時計国際度量衡局(BIPM)が作成する世界標準時で、一定の刻みで進む

つまり、UT1は「地球が実際にどれだけ回ったか」を、UTCは「原子時計が刻んだ時間」を表す時刻なのです。地球の回転の速さは少しずつ変わるため、UT1とUTCは時間がたつと食い違っていきます。

これまでの合わせ方:1972年から27回、1秒を足してきた

2つの時刻が離れすぎないようUTCに1秒を足す調整が、うるう秒です。1972年に始まり、最後に実施されたのは2016年12月31日の終わりでした。これまでに27回あり、すべて1秒を足すものでした。

出典・参照:

連続UTCになると:ずれは足し引きされず、最大3,600秒まで広がる

必要に応じて1秒を足す従来のUTCと、1秒を足し引きせず最大3,600秒のずれを許す連続UTCの比較図

では、連続UTCになると、何が変わるのでしょうか。連続UTCでは、UTCは1秒を足し引きされず、そのまま進み続けます。変わる点は、次の比較のとおりです。

項目これまで連続UTC(2027年5月20日から)
UTCの進み方地球の自転とずれすぎないよう、必要に応じて1秒を足す1秒を足し引きせず、そのまま進み続ける
自転に基づく時刻とのずれ1秒の足し引きで合わせる3,600秒(1時間)まで許す

ずれを1時間まで許すと、数百年にわたって時刻を調整する必要がなくなる見通しだと、時事通信は伝えています。1秒を足したり引いたりする調整は、世界標準時に入らなくなります。2027年5月20日に時刻が1時間変わるのではなく、調整を入れないぶん、ずれが長い期間をかけて広がっていく仕組みです。

出典・参照:

なぜ今やめるのか:1秒を引く調整は一度も実施されず、重要インフラへの影響が懸念される

未実施の負のうるう秒、IoTと分散型システムの増加、重要インフラでの連続UTCの必要性から時刻不整合のリスクを示す図

なぜ今、うるう秒をやめることにしたのでしょうか。決議5は、前文で理由を挙げています。

これまでのうるう秒は、すべて1秒を足すものでした。地球の自転が遅くなり、原子時計で進むUTCが自転に基づく時刻より先に進んだ分を、1秒足して合わせてきたからです。

ただし、調整は足すだけとは限りません。反対に地球の自転が速まれば、UTCが自転に基づく時刻より遅れるため、UTCから1秒を引いて合わせることになります。この1秒を引く調整を「負のうるう秒」といいますが、これまで一度も実施されたことがありません。

1秒を引くと、ある1秒が時計から飛ぶことになります。時刻の記録を並べて処理するシステムが、この飛びに正しく対応できなければ、障害につながりかねません。しかも、実際に引いた前例がないため、各システムが想定どおりに動くのかを、本番の環境で確かめられた人がいないのです。

決議が負のうるう秒を重大なリスクとするのは、この確かめようのなさがあるからです。決議が挙げる理由は、次の3つです。

理由決議の記述
負のうるう秒のリスク一度も適用されたことがなく、重大なリスクとされている
システムの複雑化IoT(さまざまな機器がインターネットにつながる仕組み)や分散型システム(複数のコンピューターが連携して動く仕組み)が増え、うるう秒の挿入、とくに負のうるう秒が障害を招くリスクが高まっている
産業界の要請交通、電力、通信、宇宙の分野で、将来の調整なしにUTCが連続していることが求められている

事業者ごとにうるう秒を避ける方法が異なれば、システム間の時刻に食い違いが生じるおそれがあるとも、決議は述べています。つまり、システムが増えるほど、1秒の調整は時計だけの話ではなく、障害や食い違いにつながる問題になっていたのです。

この決議の下地は、2022年にありました。第27回総会の決議4が、ずれの上限(許される差の幅)を2035年までに広げ、UTCの連続性を少なくとも一世紀確保することを決め、第28回総会に決議案の起草を求めていました。決議5は、その求めに応えるものです。

出典・参照:

時刻を扱う企業の視点:自社のシステムが時刻をどこから受け取るかを問う

時刻の取得元、うるう秒への独自処理、記録の時刻を説明できるかを確認する企業向け点検図

時刻付きのログ(操作や処理の記録)や取引の記録を扱うシステムでは、記録に残る時刻が、世界の時刻の約束と結びついています。約束が変わると、その結びつきは見直す対象になります。自社の現場に引き寄せて考えられる問いは、次の3つです。

  • 自社のシステムは、時刻をどこから受け取っているか(時刻を配信するサービス、サーバーの設定、クラウドサービスなど)
  • うるう秒に備えた独自の処理を持つシステムがあるか(1秒が足される場面に備えて、時刻を自前で調整する仕組みなど)
  • 記録に残る時刻が、どの時刻の約束に合わせたものかを説明できるか

決議は、異なるうるう秒の緩和方法を使うシステム間では、時刻の不整合が生じうると述べています。2つ目の問いは、この指摘を自社のシステムに引き寄せたものです。

出典・参照:

まとめ:時刻は合意された約束で動いており、その約束が連続UTCに変わる

世界標準時のUTCは、これまで、地球の自転とずれすぎないよう、必要に応じて1秒を足す決まりで運用されてきました。しかし、国際度量衡総会は2026年10月の第28回総会で、この1秒の足し引きをやめ、UTCを連続させる決議5を採択しました。

連続UTCは2027年5月20日に有効となり、これにより地球の自転に基づく時刻とUTCとの差は、1時間まで許容されます。

私たちが普段使う時刻は、国際会議で合意された決まりのうえに成り立っています。その決まりが変わる2027年5月20日に向けて、自社のシステムが時刻をどこから受け取っているか、うるう秒に備えた独自の処理を持っていないかを、洗い出しておきたいところです。

取得元と独自の処理が分かっていれば、決まりが変わったときに、どのシステムの時刻に影響が及ぶかを早く見極められます。あわせて、記録に残る時刻がどの基準に合わせたものかを説明できる状態にしておくことも、後の確認を楽にしてくれるでしょう。

DXportal®編集部

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